オオアブノメ Gratiola japonica  Miq. ゴマノハグサ科 オオアブノメ属
湿生植物  環境省絶滅危惧U類(VU)・兵庫県RDB Aランク種
Fig.1 (大阪府・氾濫原 2013.5/1)

Fig.2 (大阪府・氾濫原 2013.5/15)

湿地、溜池畔、ハス田、氾濫原などに生育する1年草。
茎は直立し、高さ10〜20cm、肉質で、方形、無毛で柔らかい。
葉は対生し、やや肉質、披針状長楕円形で柄がなく、先はしだいに狭くなり鈍頭、鋸歯はなく、長さ1〜3cm、幅2.5〜7mm。
花は葉腋ごとに1花ずつつく。萼は5裂し、裂片は披針形で鈍頭。花冠は白色の筒状の唇形花で、長さ4〜5mm。
多くは花冠が開かず、閉鎖花となる。開放花、閉鎖花ともに稔る。
雄蕊は2個、花筒の上側につき、花筒の下側には小さな2個の仮雄蕊がある。
刮ハは球形で、長さ3〜4mm、熟すと4裂する。

カミガモソウG. luviatilis)は葉の長さ2〜5cmで粗く不規則な鋸歯があり、葉縁や茎、花柄には短毛がある。
近似種 : カミガモソウアブノメ

■分布:本州(宮城県以南)、九州 ・ 朝鮮半島、中国、ウスリー
■生育環境:湿地、溜池畔、ハス田、氾濫原など。
■花期:5〜6月
■西宮市内での分布:市内には生育していない。兵庫県では播磨地方にわずかに見られる。

Fig.3 茎。(大阪府・氾濫原 2013.5/15)
  茎は直立し、高さ10〜20cm、肉質で、方形、無毛で柔らかい。

Fig.4 葉。(大阪府・氾濫原 2013.5/15)
  葉は対生し、やや肉質、披針状長楕円形で柄がなく、先はしだいに狭くなり鈍頭、鋸歯はない。

Fig.5 閉鎖花と葉。(大阪府・氾濫原 2013.5/15)
  花は各葉腋に1個ずつ付き、開花初期と晩期はほとんど閉鎖花となる。葉は3脈が目立つ。

Fig.6 萼。(大阪府・氾濫原 2013.5/15)
  萼は5深裂し、裂片は披針形で鈍頭。萼の基部には長楕円形の小苞が2個つく。

Fig.7 沈水状態の個体は、閉鎖花のみをつけて結実する。(大阪府・氾濫原 2013.5/15)

Fig.8 花。(大阪府・氾濫原 2013.5/15)
  花冠は白色の筒状の唇形花で、長さ4〜5mm。上唇は小さく円形で、下唇は3裂し、中央裂片はやや大きい。

Fig.9 果実。(大阪府・氾濫原 2013.5/15)
  果実は刮ハで、球形、長さ3〜4mm、熟すと4裂する。

Fig.10 沈水状態で生育する生長途上の個体。(大阪府・氾濫原 2013.5/1)

生育環境と生態
Fig.11 氾濫原の水溜りに生育するオオアブノメ。(大阪府・氾濫原 2013.5/1)
撹乱による水溜りに、沈水状態で生育するオオアブノメが多数見られた。撹乱依存植物であるため高茎草本が増えると姿を消す。
オオアブノメは水中で閉鎖花を付けているものも見られた。水溜りはかなりの面積だが浅く、イグサ、ホソイ、コウガイゼキショウ、ヒロハノコウガイゼキショウ、
カンガレイ、フトイsp.、ハリイ、ナルコビエ、ヤガミスゲ、イヌビエsp.、スズメノテッポウ、ヤナギタデ幼苗、タネツケバナ、タコノアシ、ミズハコベ、
ムシクサ、ミゾコウジュ、ヒロハホウキギクなどが生育していた。

Fig.12 抽水状態で生育するオオアブノメ。(大阪府・氾濫原 2013.5/15)
Fig.11に隣接する別の水溜りに生育するもので、2週間経過して茎先は水面上に出て、泥濘地に陸生するものは開放花を開いていた。
同所的に生育している種はFig.11とほとんど同様であり、水際ではミコシガヤが出穂し、ミゾコウジュが開花していた。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
山崎敬, 1981. ゴマノハグサ科オオアブノメ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本3 合弁花類』 p.102. 平凡社
北村四郎・村田源, 2004 オオアブノメ. 『原色日本植物図鑑 草本編(T) 合弁花類』 p.147. 保育社
牧野富太郎, 1961 オオアブノメ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 555. 北隆館
角野康郎, 2014. オオアブノメ. 『日本の水草』 276. 文一統合出版
村田源. 2004. オオアブノメ. 『近畿地方植物誌』 39. 大阪自然史センター

最終更新日:10th.Dec.2016

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