カミガモソウ Gratiola fluviatilis  Koidz. ゴマノハグサ科 オオアブノメ属
湿生植物  環境省絶滅危惧TB類(EN)・兵庫県RDB Aランク種
Fig.1 (兵庫県・湿地 2016.8/25)

Fig.2 (兵庫県播磨地方・湿地 2016.8/25)

湿地、休耕田、溜池畔などに生育する1年草。
茎は基部近くで枝を分け、高さ10cm内外、方形で、短毛が生える。
葉は対生し、柔らかく、卵形、長さ2〜5cm、鈍頭、短柄があり、縁に粗い鋸歯があり、葉縁に短毛があり、葉裏には埋もれた腺点がある。
花は茎上部の葉腋に1花ずつつく。萼は萼筒基部近くまで5深裂し、裂片は線状長楕円形で鈍頭、萼筒基部には長楕円形の2個の小苞がある。
花冠は白色の唇形花で、萼の約2.5倍の長さがあり、上唇は小さく円形で、下唇は3裂し、中央裂片は大きく、口部に黄班があり短毛がある。
雄蕊は2個、花筒の上側につき、花筒の下側には小さな2個の仮雄蕊がある。
刮ハは広卵形、熟すと4裂する。種子は茶褐色、長さ1.0〜1.2mm。

オオアブノメG. japonica)は葉がやや多肉質で無毛、鋸歯はなく、披針状長楕円形となる。
近似種 : オオアブノメ

■分布:本州(三重、京都(絶滅)、兵庫)四国(高地)、九州(長崎、鹿児島)
■生育環境:湿地、休耕田、溜池畔など。
■花期:8〜10月
■西宮市内での分布:市内には生育していない。兵庫県では播磨地方にわずかに見られる。

Fig.3 茎。(兵庫県播磨地方・湿地 2016.8/25)
  茎は方形で、短毛が生える。

Fig.4 茎は基部から枝を分け、ときに紫色を帯びる。(兵庫県播磨地方・湿地 2016.8/25)

Fig.5 葉。(兵庫県播磨地方・湿地 2016.8/25)
  葉は柔らかく、卵形、長さ2〜5cm、鈍頭、短柄があり、縁に粗い鋸歯があり、葉縁に短毛がある。

Fig.6 葉裏。(兵庫県播磨地方・湿地 2016.8/25)
  葉裏は淡緑色で、葉肉に埋もれた腺点を散布する。

Fig.7 萼。(兵庫県播磨地方・湿地 2016.8/25)
  萼は萼筒基部近くまで5深裂し、裂片は線状長楕円形で鈍頭、萼筒基部には長楕円形の2個の小苞がある。
  花には短毛が生えた柄がある。

Fig.8 花。(兵庫県播磨地方・湿地 2016.8/25)
  花冠は白色の唇形花で、萼の約2.5倍の長さがある。
  上唇は小さく円形で、下唇は3裂し、中央裂片は大きく、口部に黄班があり短毛がある。

生育環境と生態
Fig.9 細流脇に生育するカミガモソウ。(兵庫県播磨地方・湿地 2016.8/25)
休耕後かなり経年したと思われる湿地化した休耕田の、半日陰の細流脇に点在している。
カミガモソウは日当たりよい場所にも見られたが、木陰になる半日陰地を好む傾向があるようで、このような場所でハイチゴザサとともに
生育している例が最も多く見られた。

Fig.10 湿地に生育するカミガモソウ。(兵庫県播磨地方・湿地 2016.8/25)
休耕田はもとは湿田だったようで、長靴がズブズブと沈み込む場所が多い。
周辺はシカの食害が激しいが、シカの忌避植物であるマツカゼソウ、ダンドボロギクなどは嫌気環境下の土壌では生育できず侵入が見られない。
シカの食害によって草丈の低い種ばかりで構成されたこのような湿地が、カミガモソウの生育条件に合っている可能性があり、数百〜千個体は見られた。
優占種はハイチゴザサで、ハイヌメリ、ハリイ、マツバイ、矮小化したタマガヤツリ、ヒデリコ、ヒメクグ、イトイヌノヒゲ、イヌノヒゲsp.、チドメグサ、
ノチドメ、コケオトギリ、サワオトギリ、ミズユキノシタ、ムラサキサギゴケ、コナスビなど小型の草本で占められている。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
山崎敬, 1981. ゴマノハグサ科オオアブノメ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本3 合弁花類』 p.102. 平凡社
北村四郎・村田源, 2004 カミガモソウ. 『原色日本植物図鑑 草本編(T) 合弁花類』 p.147. 保育社
福岡誠行・迫田 昌宏・三宅 慎也・永益 英敏, 1993. カミガモソウの新産地. 植物分類・地理44:210-211. 日本植物分類学会
中西弘樹・川内野善治, 1995. カミガモソウの新産地とその形態. 植物分類・地理45:169-171. 日本植物分類学会
黒崎史平・高野温子 2006. ゴマノハグサ科カミガモソウ. 兵庫県産維管束植物7. 人と自然16:104. 兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:10th.Dec.2016

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