アイダクグ Cyperus brevifolius  (Rottb.) Hassk. var. brevifolius. カヤツリグサ科 カヤツリグサ属
湿生植物
Fig.1 (西宮市・海浜の後背湿地 2011.7/26)

Fig.2 (西宮市・武庫川河川敷 2007.8/9)

水田の畦、農耕地周辺の湿った場所、河畔などに生える多年草。
横に長くのびる赤味を帯びた根茎を持つ。
草丈は裸地であれば10〜20cm程度だが、草叢の中であれば40cm近くの花茎をあげているのが見られる。
葉は柔らかく扁平で、幅2〜3mm。やや平滑。基部の鞘は褐色、または赤褐色を帯びる。
花序は球状で無柄、径5〜12mm、密に多数の小穂をつけ淡緑色。苞の葉身は2〜4枚つき、葉状で長い。
小穂は長さ3〜3.5mm、長楕円形、熟すと基部から脱落する。
鱗片は狭卵形で鋭頭、先端はわずかに反曲し、膜質、淡緑色で細脈があり、竜骨には数個の小刺がある。
痩果は広倒卵形で長さは鱗片の約1/2。花柱は痩果とほぼ同長。柱頭は2岐する。

ヒメクグK, brevifolia var. leiolepis)に似るが、花序は縦方向に長く、やや楕円形となり、小穂の竜骨に小刺があることにより区別できる。
苞葉は花序よりも上に伸びず、下方に反曲することが多い。
近似種 : ヒメクグ

■分布:本州(関東以西)、四国、九州、沖縄
■生育環境:水田の畦、河畔、溜池畔。
■花期:7〜10月
■西宮市内での分布:市内では武庫川河川敷、海浜の後背湿地、平野部の古くからある水田周辺などに生育する。

Fig.2 全草標本。(海浜の後背湿地 2011.7/26)
  横に長くのびる赤味を帯びた根茎を持つ。葉は花茎よりはるかに短く、花序の基部に2〜4個の葉状の苞がつく。

Fig.3 根茎と基部。(海浜の後背湿地 2011.7/26)
  根茎は横走し、赤褐色の鞘に覆われる。基部の鞘は褐色、または赤褐色を帯びる。

Fig.4 花序と苞葉。(海浜の後背湿地 2011.7/26)

Fig.5 アイダクグの花序。(西宮市・武庫川河川敷 2007.8/9)
  縦方向に長く、やや楕円形となる。小穂の先端はやや外曲している。

Fig.6 小穂。(海浜の後背湿地 2011.7/26)
  小穂の竜骨には白色で硬質の小刺があり、斜上する。

Fig.7 痩果。(海浜の後背湿地 2011.7/26)
  痩果はやや扁平で倒卵形。花柱は痩果とほぼ同長で、柱頭は3岐する。

西宮市内での生育環境と生態
Fig.8 海浜の後背湿地に生育するアイダクグ。(西宮市・後背湿地 2011.7/26)
海浜の砂質の後背湿地のヤマアワ群落中に低層の群落を形成している。
ヤマアワ群落の外周部ではシオクグが優勢となり、そこではまばらとなるが、その外側のシバ地では再び個体数が多くなる。
アイダクグは湿った場所を好むものの、さまざまな水分条件の場所に適応できるようである。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
大井次三郎, 1982. カヤツリグサ科カヤツリグサ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本T 単子葉類』 180〜184. 平凡社
小山鐡夫, 2004 ヒメクグ属. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.249. 保育社
北川淑子・堀内洋. 2001. ヒメクグ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 397〜398. 神奈川県立生命の星・地球博物館
星野卓二・正木智美, 2003. アイダクグ. 星野卓二・正木智美・西本眞理子『岡山県カヤツリグサ科植物図譜(U)』 100,101. 山陽新聞社
星野卓二・正木智美, 2011 アイダクグ. 星野卓二・正木智美・西本眞理子『日本カヤツリグサ科植物図譜』 694,695. 平凡社
谷城勝弘, 2007. ヒメクグ属. 『カヤツリグサ科入門図鑑』 172,173. 全国農村教育協会
村田源. 2004. アイダクグ. 『近畿地方植物誌』 165. 大阪自然史センター
黒崎史平・松岡成久・高橋晃・高野温子・山本伸子・芳澤俊之 2009. アイダクグ. 兵庫県産維管束植物11 カヤツリグサ科. 人と自然20:173.
       兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:5th.Sept.2011

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