アキカサスゲ | Carex nemostachys Steud. | カヤツリグサ科 スゲ属 ミヤマシラスゲ節 |
湿生植物 |
Fig.1 (長崎県・渓流畔 2009.10/20) 河畔、溜池畔などに生育し、秋期に開花結実する半常緑性の南方系の多年草。 基部から匍匐枝を伸ばし、群生する。基部の鞘は淡色で、糸網を生じる。 葉は硬く幅4〜7mmで、有花茎よりも長い。 有花茎は葉よりも低く、高さ30〜60cm、小穂は3〜7個、頂小穂は雄性、側小穂は雌性。 雄小穂は長さ4〜8cm。雌小穂は長さ4〜10cm、幅4〜5mm、多くはほとんど柄がない。 雌鱗片は淡緑色、長い芒がある。果胞は長さ3〜4mm、細毛があり光沢はなく、脈があり、先は急に細長い嘴状、口部は2小歯。 痩果は倒卵形で長さ約1.5mm。柱頭は3岐する。 近似種 : カサスゲ、 ミヤマシラスゲ ■分布:本州(近畿・中国地方)、四国、九州、沖縄 ・ 台湾、中国東部〜インド ■生育環境:渓流や河畔、溜池畔など。 ■果期:10〜11月 ■西宮市内での分布:兵庫県内からの記録はない。近畿では奈良県では絶滅したとされている。 |
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↑Fig.2 全草標本。(長崎県・溜池畔 2009.10/19) 基部から長い匍匐枝を出す。葉は有花茎よりもかなり長い。 画像のものは開花期のアキカサスゲで、果胞は充実しておらず、スゲ類の標本としてはあまり良いものとは言えない。 |
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↑Fig.3 基部と匍匐枝。(長崎県・溜池畔 2009.10/19) 基部の鞘は淡色で、糸網を生じる。基部に生じた長い匍匐枝が見える。 |
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↑Fig.4 花序。(長崎県・渓流畔 2009.10/20)
頂小穂は雄性。側小穂は雌性で、ほとんど柄がなく直立してつく。 |
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↑Fig.5 雌小穂の拡大。(長崎県・溜池畔 2009.10/19) 開花期の雌小穂。果胞は長さ約3mm、有毛で、細長い嘴があり、外向する。 鱗片は果胞とほぼ同長、芒がある。柱頭は3岐。 |
生育環境と生態 |
Fig.6 溜池畔に群生するアキカサスゲ。(長崎県・溜池畔 2009.10/19) 山間の溜池の流れ込み部分の、砂質の土壌が堆積した場所に群生していた。 同所的にミズヒキ、ヌマダイコン、ミゾソバ、キツネノボタンなどが見られたが、アキカサスゲの純群落が広範囲に広がっていた。 |
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Fig.7 渓流畔に生育するアキカサスゲ。(長崎県・渓流畔 2009.10/20) 渓流の小さな河原の水際に生育している。 河原の大部分をコバノウシノシッペイが占め、水際にイグサなどとともに生育している。 付近の渓流では一部の場所でアキカサスゲの大きな群落が発達している場所も見られる。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 大井次三郎, 1982. アキカサスゲ. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本1 単子葉類』 p.151. 平凡社 小山鐡夫, 2004 アキカサスゲ. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.287. pls.71. 保育社 牧野富太郎, 1961 アキカサスゲ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 804. 北隆館 勝山輝男, 2005 ミヤマシラスゲ節. 『日本のスゲ』 320〜330 文一総合出版 村田源. 2004. アキカサスゲ. 『近畿地方植物誌』 159. 大阪自然史センター 最終更新日:3rd.Nov.2009 |