アオテンツキ Fimbristylis verrucifera  (Maxim.) Makino カヤツリグサ科 テンツキ属
湿生植物
Fig.1 (兵庫県加西市・溜池畔 2008.10/12)

Fig.2 (兵庫県加西市・溜池畔 2010.9/28)

干上がった溜池畔、河畔などに生える小型の1年草。
やや叢生してロゼット状になることが多いが、ときに茎は斜上して高さ1〜15cmとなる。
基部の鞘は淡色〜淡褐色。葉は細く、長さ3〜5cm、幅0.1〜0.4mm。
花序は散形状で、2〜10個程度の花序枝があり、先に10数個の小穂をつける。
苞葉の葉身は葉状で、おおむね花序よりも短いが、2〜3本が花序よりも長いことが多い。
小穂はほぼ球状の広楕円形、長さ3〜5mm、淡緑色、密に隣片をつける。隣片は長楕円形で長さ約1mm、芒を持つ。
痩果は長楕円形で長さ約0.5mm、縁に根棒状または不定形の突起が多く、表面に格子紋がある。柱頭は2岐。

小穂の形はヒンジガヤツリLipocarpha microcephala)に似るが、ヒンジガヤツリでは花序枝を出さないことと、痩果を見れば区別は容易。
近似種 : ヒンジガヤツリ

■分布:本州、四国、九州 ・ 中国、朝鮮半島、アムール、インド、インドネシア、熱帯アフリカ
■生育環境:河畔、溜池畔、干上がった溜池など。
■花期:7〜10月
■西宮市内での分布:市内では今のところ確認できていない。


Fig.3,4 全草。(兵庫県加西市・溜池畔 2008.10/12)
  草体は小型で、やや叢生する。基部の鞘は淡色〜淡褐色。葉身は細い。

Fig.5 花序。(兵庫県加西市・溜池畔 2008.10/12)
  花序枝は2〜10本程度あり、先に小穂をつける。

Fig.6 小穂。(兵庫県加西市・溜池畔 2008.10/12)
  小穂は広楕円形で、芒のある隣片を密につける。

Fig.7 痩果。(兵庫県加西市・溜池畔 2008.10/12)
  痩果は長楕円形で長さ約0.5mm、表面には横長の格子紋があり、縁には根棒状または不定形の突起を多数つける。

生育環境と生態
Fig.8 溜池畔に生育するアオテンツキ。(兵庫県加西市・溜池畔 2008.10/12)
溜池畔では砂質〜粘土質の土壌に、小型のカヤツリグサ科植物とともに見られることが多い。
ここでは画像中に見られるニイガタガヤツリのほかに、オオシロガヤツリ、ヒメアオガヤツリ、メアゼテンツキなどとともに見られた。

Fig.9 干上がった溜池の底に群生するアオテンツキ。(兵庫県加西市・溜池畔 2008.11/2)
アオテンツキは低地の中栄養〜やや富栄養な溜池が干上がって、底が露出するようになると見られることが多い。
ここでは干上がった時期が遅いためか、非常に小さな草体で、花序枝もほとんど伸ばさず小穂が結実している。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
大井次三郎, 1982. カヤツリグサ科テンツキ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本1 単子葉類』 p.173〜175. pls.156〜158. 平凡社
小山鐡夫, 2004 カヤツリグサ科テンツキ属. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.231〜237. pls.58〜59. 保育社
牧野富太郎, 1961 アオテンツキ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 771. 北隆館
勝山輝夫・堀内洋. 2001. テンツキ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 415〜421. 神奈川県立生命の星・地球博物館
星野卓二・正木智美, 2003. アオテンツキ. 星野卓二・正木智美・西本眞理子『岡山県カヤツリグサ科植物図譜(U)』 138,139. 山陽新聞社
谷城勝弘, 2007. アオテンツキ. 『カヤツリグサ科入門図鑑』 124. 全国農村教育協会
村田源. 2004. アオテンツキ. 『近畿地方植物誌』 164. 大阪自然史センター
黒崎史平・松岡成久・高橋晃・高野温子・山本伸子・芳澤俊之 2009. アオテンツキ. 兵庫県産維管束植物11 カヤツリグサ科. 人と自然20:173.
       兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:2nd.Mar.2011

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