イチゴツナギ
(ザラツキイチゴツナギ)
Poa sphondylodes  Trin. イネ科 イチゴツナギ属
湿生植物
Fig.1 (西宮市山口町船坂・休耕田 2007.5/17)

草原や荒れ地から休耕田、水田の畦、溜池畔まで広範囲に生育する多年草。日当たりのよい場所を好む。
匐枝はなく草体は叢生し、ときに大株となる。全体硬く、高さ30〜70cm、茎(稈)は細く、深緑色で直立し、横断面は円形、上部はざらつく。
葉は斜上または直立し、長さ10〜15cm、幅3mm以下、少し柔らかく、縁は粗く、上面はざらつき、粉白色を帯び、先は次第に細まり鋭尖頭。
葉鞘はざらつき、無毛。下方の葉鞘はときに赤紫色を帯びる。葉舌は披針形で膜質、鋭頭、長さ3〜8mm。
円錐花序は直立し、密に小穂をつけ、狭長楕円形、長さ3〜6cm、幅1〜1.5cm(花時)。
花序枝は花序中軸の各節から3〜6本づつ出て、斜開し、繊細であるがざらついている。
小穂は狭長楕円形、長さ5〜6mm、淡緑色、4〜6個の小花がある。
苞頴は長楕円状披針形で、鋭尖頭、3脈あり、それぞれ1.5〜3.5mm、および2〜4mm、表面に微刺がある。
護頴は舟形の長楕円形、先は短くややとがり、上部は白膜状、中肋は隆起するが、背部はほとんど湾曲せず、圧毛を生じ、
基部には長いちぢれた毛があり、微粒のあることもある。

イネ科イチゴツナギ属には同定の難しい種が多く、外来種のナガハグサとは、匐枝はなく叢生する点や茎の上部や葉鞘が著しくざらつく点、
長く明瞭な葉舌を持つ点などで見分けられる。
ナガハグサP. pratensis)は細く長い根茎を地表近くに横走させ、横に広がり、大きな株をつくらない。
葉は2つ折れとなり、根生葉は非常に長く20〜40cmとなり、幅1〜2mm。葉舌は膜質、切形で長さ1〜2mm、無毛。葉先は比較的急にとがる。
ケンタッキーブルーグラスの別名でも知られ、牧草として栽培される。
ミスジナガハグサP. subcaerulea)はナガハグサに酷似するが、葉舌は円形で有毛。 第一苞頴は3脈まれに2脈があり、護頴の脈上には毛が多い。
コイチゴツナギP. compressa)は帰化種で、全体が濃緑色。茎の基部は倒伏して節から発根し、地下には長い根茎を横走する。
茎は扁平で2面あり、葉は先が急にとがる。葉舌は切形で1〜2mm。花序枝は短く、花序中軸の各節から1〜3個でて、少数の小穂をつける。
オオスズメノカタビラP. trivialis)は欧州原産の帰化種で、茎は一方に傾き、下部は倒伏して細長い根茎に連なる。
葉は幅2〜3mmで、先は急にとがる。葉鞘はざらつき、葉舌は長さ3〜4mm、半透明膜質で鋭頭。花序枝は花序中軸の各節から半輪生状に2〜5個つき、細い糸状で、
下向きの短剛毛を生じ、小穂をまばらにつける。小穂は長さ2.8〜3mm、2〜3小花からなる。護頴の先端は銅色に輝き、基部の中肋と側脈に白色の毛をまばらに生じる。
オオイチゴツナギP. nipponica)は路傍や原野に生育し、1年草でやや太く軟弱で、濃緑色。葉幅は3〜7mmで、先は比較的急にとがる。
葉舌は薄膜質切形で長さ1〜2mm。花序は卵形で、花序枝はざらつき、中軸の各節から1〜4個出る。小穂は長さ4〜5mmで3〜5小花からなり、苞頴は鋭頭でやや不同長。
護頴側面の脈間は無毛またはわずかに毛が生える。
近似種 : コイチゴツナギ、 ミゾイチゴツナギ

■分布:北海道、本州、四国、九州 朝鮮半島、中国、シベリア東部
■生育環境:日当たりの良い荒れ地、草地、水田の畦、休耕田、溜池畔。
■花期:5〜7月
■西宮市内での分布:さまざまな環境で見られ、きわめて普通。

Fig.2 全草標本。(西宮市・農道脇 2010.6/6)
  匐枝はなく、叢生する。草体は深緑色で、葉や葉鞘は粉白色を帯びる。茎はミゾイチゴツナギやオオイチゴツナギよりも硬い。

Fig.3 花序の一部拡大。(西宮市・休耕田 2007.5/17)

Fig.4 果実期の小穂。(西宮市・農道脇 2010.6/6)
  小穂は4〜6個の小花からなる。画像のものは5個の小花がある。
  苞頴は長楕円状披針形で、鋭尖頭、3脈あり、脈上に上向きの微刺がある。

Fig.5 小花。(西宮市・農道脇 2010.6/6)
  護頴は舟形の長楕円形、背面はほとんど湾曲せず、中部以下の脈上には圧毛を生じ、基部には長い縮れた毛(綴毛)がある。

Fig.6 花軸。(西宮市・農道脇 2010.6/6)
  花軸や花序枝には上向きの小刺が並び、上向きにざらつく。

Fig.7 花序や葉鞘はときに赤紫色を帯びることがある。(西宮市・休耕田 2007.5/17)

Fig.8 葉舌は膜質白色で長く鋭尖頭で目立つ。ナガハグサはこのように長い葉舌は持たない。(西宮市・休耕田 2007.5/17)

Fig.9 出穂したばかりのイチゴツナギ。この時期は赤味を帯びない。(西宮市・休耕田 2007.5/17)

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
大井次三郎, イネ科ナガハグサ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)『日本の野生植物 草本1 単子葉類』
       pp.110〜112. pls.94〜96. 平凡社
小山鐡夫, 2004 イネ科イチゴツナギ属. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.321〜325. pls.80〜81. 保育社
牧野富太郎, 1961 イチゴツナギ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 747. 北隆館
長田武正・長田喜美子, 1984 イチゴツナギ. 『野草図鑑 3 すすきの巻』 p.108. 保育社
藤本義昭. 1995. イネ科イチゴツナギ属. 『兵庫県イネ科植物誌』 194〜207. 藤本植物研究所
木場英久. 2001. イネ科イチゴツナギ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 272〜278. 神奈川県立生命の星・地球博物館
桑原義晴, 2008 イチゴツナギ属. 『日本イネ科植物図譜』 p.388〜412. pls.28〜29. 全国農村教育協会
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. イチゴツナギ. 『六甲山地の植物誌』 237. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. イチゴツナギ. 『近畿地方植物誌』 182. 大阪自然史センター
藤本義昭・布施静香・黒崎史平・高橋晃・高野温子 2008. イチゴツナギ. 兵庫県産維管束植物7 イネ科. 人と自然19:205. 兵庫県立・人と自然の博物館
西野雅満 2010. ミスジナガハグサ Poa subcaerulea(イネ科イチゴツナギ属)の謎2. 共生のひろば5:3〜6. 兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:19th.Jun.2010

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