オミナエシ | Patrinia scabiosaefolia Link. | オミナエシ科 オミナエシ属 |
湿生植物 |
Fig.1 (西宮市・棚田の畦 2006.9/21) |
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Fig.2 (兵庫県姫路市・湿原 2011.8/30) 里山の水田の畦、農耕地周辺の原野、湿地周辺部の攪乱を受けた裸地に生える多年草。秋の七草のひとつ。 基本的に日当たりの良い裸地や草丈の低い草本が生育する場所を好み、定期的に草刈りや野焼きの行われるような環境で見られるが、近年減少の著しい種。 河川や溜池の堤防の管理放棄、かつては草原であった萱場の遷移などが減少の一因とされている。 茎は直立し、高さ60〜100cm、下部にはやや粗い毛がある。根茎は横走し、株の側に新苗をつくり、栄養繁殖する。葉は対生し、頭大羽状に深裂する。 花茎は上部で盛んに分枝して、頂部に多数分枝して花をつける複集散花序となる。花序の上部はほぼ平らで、花序枝の一側に凸起状の白短毛がある。 花冠は黄色で5裂し、径3〜4mm、雄蕊4個、雌蕊は分岐せず1個。 果実は長さ3〜4mm、やや扁平で、腹面に1脈あり、翼は発達しない。 近似種 : オトコエシ、 キンレイカ ■分布:北海道、本州、四国、九州 ・ 朝鮮半島、中国、シベリア東部 ■生育環境:棚田の畦、湿地周辺の草地などの原野的環境を好む。 ■花期:8〜10月 ■西宮市内での分布:市内では北部の棚田の畦や、原野的環境で見られる。 |
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↑Fig.3 オミナエシの花茎。(西宮市・棚田の斜面 2008.11/23) 花茎は上部でよく分枝し、花序は複集散花序で上部はほぼ平らになる。 |
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↑Fig.4 オミナエシの花序。(西宮市・棚田の斜面 2008.9/22) 5裂した花が多数つく。雄蕊は4個。雌蕊は1個で、柱頭は丸い。 |
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↑Fig.5 結実期。(兵庫県加東市・溜池土堤 2011.11/14) 果実は長さ3〜4mm、やや扁平で、腹面に1脈あり、翼は発達しない。 |
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↑Fig.6 春先に見られるロゼット。(西宮市・原野 2007.4/13) 羽状裂葉で切れ込みは深く、茎や葉縁が紫色味を帯びていることが多い。 |
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↑Fig.7 成長期のオミナエシ。前の画像のロゼットが生長したもの。(西宮市・原野 2007.5/27) |
西宮市内での生育環境と生態 |
Fig.8 小湿地のイノシシによる攪乱の激しい裸地で発芽生長したオミナエシ。(西宮市・林道脇の小湿地 2007.5/27) 後方の水溜りは定期的に攪乱を受ける、いわゆる「ヌタ場」で、攪乱による裸地環境がオミナエシに幸いしたのか、多数の幼苗が見られた。 この小湿地周辺では湿生植物はヤマイやハナビゼキショウ程度で少なく、裸地を好むモエギスゲ、クサイ、スギナなどが多い。 |
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Fig.9 溜池土提に生育するオミナエシ。(西宮市・溜池土提 2007.8/30) 定期的に刈り込みと野焼きの行われる休耕中の棚田の溜池土提に生育している。 土提の上部では刈り込まれて背丈の低いハンノキ、ヤマハギ、ワラビ、キクバヤマボクチ、ススキが、中ほどではノギラン、矮小化したネザサが、 下部では溜池からの浸透水がにじみ出しサワヒヨドリ、コバギボウシ、ムカゴニンジン、アゼスゲなどが見られる。 オミナエシは中部から下部にかけての比較的湿潤な部分に生育している。 |
他地域での生育環境と生態 |
Fig.10 溜池畔の湿地に生育するオミナエシ。(兵庫県小野市・溜池畔 2010.11/25) ミカワシンジュガヤ、イヌノハナヒゲ、アゼスゲ、チゴザサなどが優占する湿地に生育している。 同所的にキセルアザミ、ホソバリンドウ、ヤマラッキョウ、スイラン、サワヒヨドリ、シラヤマギク、コガンピ、タヌキマメ、ノハナショウブ、 コマツカサアブラガヤ、コマツカサススキ、アブラガヤ、ヌマトラノオ、アキノキリンソウ、ツリガネニンジンなどが見られた。 |
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Fig.11 溜池土堤に群生するオミナエシ。(兵庫県姫路市・溜池土堤 2011.9/11) 草刈り管理された非常に2次的自然度の高い溜池土堤で、オミナエシがおびただしく群生していたほか、多くの草原性、湿生植物が生育していた。 草原性植物ではツリガネニンジン、キキョウ、リンドウ、フシグロ、コマツナギ、ユウスゲ、ワレモコウ、ヤマハッカ、アキノタムラソウが見られ、 土堤下部ではトキソウ、サギソウ、マネキシンジュガヤ、イトハナビテンツキ、イヌノハナヒゲ、イトイヌノハナヒゲ、ノテンツキ、コマツカサススキ、 イトイヌノヒゲ、シロイヌノヒゲ、ノギラン、ショウジョウバカマ、ヒナノカンザシ、コモウセンゴケ、モウセンゴケ、サワギキョウなどが見られた。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 北村四郎, 1982. オミナエシ科オミナエシ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本3 合弁花類』 p.146〜147. pls.118〜120. 平凡社 北村四郎・村田源, 2004 オミナエシ科オミナエシ属. 『原色日本植物図鑑 草本編(1) 合弁花類』 p.102〜103. pls.33〜34. 保育社 長田武正・長田喜美子, 1984 オミナエシ. 『野草図鑑 6 おきなぐさの巻』 p.52. pls.50,51. 保育社 中島稔. 2001. オミナエシ科オミナエシ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 1301〜1302. 神奈川県立生命の星・地球博物館 小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. オミナエシ. 『六甲山地の植物誌』 198. (財)神戸市公園緑化協会 村田源. 2004. オミナエシ. 『近畿地方植物誌』 31. 大阪自然史センター 黒崎史平・高橋晃 2006. オミナエシ. 兵庫県産維管束植物7 オミナエシ科. 人と自然16:124. 兵庫県立・人と自然の博物館 最終更新日:18th.Dec.2011 |