オオバナミズキンバイ | Ludwigia grandiflora (Michx.) Greuter & Burdet subsp. grandiflora |
アカバナ科 チョウジタデ属 |
湿生〜抽水植物・帰化植物 |
Fig.1 (兵庫県加西市・溜池畔 2010.9/28) 南米および北米南部原産の多年生の帰化植物。 茎は地表を這って分枝し、花期に茎は直立または斜上し、茎下部からは長い走出枝を水際に向って伸ばす。 水際に達した走出枝は水中から茎を分枝し水中では沈水葉をつけ、あるいは水面上に長く伸びる。 陸生状態の茎には開出した軟毛が密生し、葉を互生してつける。 気中葉は長披針形〜楕円形で、葉縁に細毛があり、脈状には軟毛があり、表面には軟毛が散生し、裏面には軟毛が多く、 先は鋭頭で先端には腺点があり、若い葉では腺体からの分泌液が多い。 葉身基部はくさび形で、茎上部の葉では柄はほとんどなく、その基部には楕円形の小さな托葉がつく。 水中茎は無毛、沈水葉も無毛で、葉身の先端に腺体は無く、円形〜倒卵形、鈍頭。 萼片はふつう5個で、長さ約8mm、鋭頭。花弁はふつう5個で鮮橙黄色、倒卵形で先はすこし凹み、長さ約13mm。 雄蕊はふつう10個、花粉は単体。花盤はやや発達し、屈毛が多く、花柱は無毛。柱頭はやや扁平な球状。 果実は円柱形で長い柄を持ち、堅く、内部に硬いコルク質の内果皮につつまれた種子が並ぶ。 【メモ】 本種は2007年に兵庫県で定着が確認された外来種で、絶滅危惧種のミズキンバイやケミズキンバイと交雑する恐れがあり注意が必要である。 また、生育力が旺盛で、定着している場所では生育環境が競合するミズユキノシタが駆逐されつつある。 在来のミズキンバイ(L. peploides subsp. stipulacea)は地上茎は無毛、葉は無毛で光沢があり、葉先に腺体はない。 近似種 : ミズキンバイ ■分布:本州(兵庫・和歌山)に帰化 ・ 南米および北米北部原産 ■生育環境:湿地、溜池畔など。 ■開花期:7〜10月 ■西宮市内での分布:市内では定着していない。 |
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↑Fig.2 地上茎。(兵庫県加西市・溜池畔 2010.9/28) 陸生する地上茎には開出する軟毛が多く、葉を互生してつける。 古い落葉した茎は地表に倒伏して這う。 |
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↑Fig.3 花期の茎。(兵庫県加西市・溜池畔 2010.9/28) 花期の茎は上部または主茎(地上茎)から分枝して伸びた茎が直立する傾向が強い。 |
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↑Fig.4 オオバナミズキンバイの葉。(兵庫県加西市・溜池畔 2010.9/28) 葉は長披針形〜楕円形、先には腺点があり、鋭頭、縁は全縁で細毛が生える。 表面はまばらに軟毛があり、脈状に長い軟毛が並ぶ。裏面には軟毛が多く生える。 |
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↑Fig.5 葉腋に見られる展開した新芽。(兵庫県加西市・溜池畔 2010.9/28) 若い葉の先端の腺体は分泌液が多く、新聞紙に挟むと精油がにじむ。 |
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↑Fig.6 水中に走出枝を盛んに伸ばす。(兵庫県加西市・溜池畔 2010.9/28) 走出枝には節間が長く、沈水葉がつく。水面上に浮葉状に浮かんだ葉は無毛で光沢があり、ミズユキノシタに似る。 |
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↑Fig.7 水面上に出た走出枝先端の葉。(兵庫県加西市・溜池畔 2010.9/28) 葉先は円頭で微突端があるが、腺体はない。 |
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↑Fig.8 開花したオオバナミズキンバイ。(兵庫県加西市・溜池畔 2010.9/28) 花は鮮橙黄色、大型でよく目立ち、葉腋に単生し、長い柄がある。 |
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↑Fig.8 花冠。(兵庫県加西市・溜池畔 2010.9/28) 花弁はふつう5個まれに6個、倒卵形で、長さ約13mm、先が少し凹む。 |
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↑Fig.9 花の中心部。(兵庫県加西市・溜池畔 2010.9/28) 雄蕊はふつう10個。柱頭はやや扁平な球状。 |
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↑Fig.10 熟した果実。(兵庫県加西市・溜池畔 2010.9/28) 花後、萼片は宿存するが、果実が成熟すると萼片は脱落する。 果実は円柱形で、先は5角形となり、全体に開出した長軟毛が多く、黒い大きな腺体が側面下部に2個ある。 画像では側面下部に腺体がひとつ見えており、もうひとつは反対側にある。 |
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↑Fig.11 果実の内部。(兵庫県加西市・溜池畔 2010.9/28) 上は縦断面、下は横断面。果実は硬い。内部には硬い白色コルク質の内果皮に包まれた種子が並んでいた。 コルク質を取り除いた種子は不定形だった。 |
生育環境と生態 |
Fig.12 溜池の水際にマット状に広がるオオバナミズキンバイ。(兵庫県加西市・溜池畔 2010.9/28) 本種は生育力が旺盛で、走出枝で広がり、地表を覆ってしまうため、他種が生育できない。 |
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Fig.13 メリケンムグラの生育地を侵略しつつあるオオバナミズキンバイ。(兵庫県加西市・溜池畔 2010.9/28) 後方に広がる赤紫色に色づいて小型の白い花をつけているのがメリケンムグラ。 旺盛な繁殖力で短期間のうちに各地に広がったメリケンムグラだが、生育環境が競合するオオナバミズキンバイの生育力と草体の大きさで負けつつある。 地表に広がったメリケンムグラの上に走出枝をのばし、分枝した茎が覆い被さってマット状の群落を形成して、メリケンムグラを駆逐する。 同様に在来のミズユキノシタもほぼ駆逐されてしまっている。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 須山知香・佐藤杏子・植田邦彦, 2008. 侵略的水草 Ludwigia grandiflora subsp. grandiflora (新称:オオバナミズキンバイ、アカバナ科) の野外生育確認 およびその染色体数. 水草研究会誌 89:1〜8. 水草研究会. 角野康郎. 2009. オオバナミズキンバイの6弁花. 水草研究会誌 92:32. 水草研究会. 最終更新日:30th.Sep.2010 |