ヒメモエギスゲ Carex pocilliformis  Boott カヤツリグサ科 スゲ属 ヌカスゲ
湿生植物
Fig.1 (西宮市・棚田の畦 2007.6/10)

水田の畦、雑木林の林縁、アカマツ林の疎林内などに生育するやや小型の多年草。
叢生し、匍匐枝はなく、基部の鞘は褐色の繊維質に分解する。
葉幅1.5〜4mm。花茎は高さ10〜40cm。
雄小穂はきわめて細く、幅0.5〜0.7mm。雄鱗片は基部が合着してコップ状になる。
果胞は長さ2.5〜3mm、多数の脈が見られ、有毛。

モエギスゲC. tristachya)に似るが、ヒメモエギスゲは側小穂(雌小穂)がやや離れてつき、果胞が短いことなどで見分けられる。
これまで、ヒメモエギスゲの雄鱗片の縁が合着してコップ状になる点が区別点として強調されてきたが、最近の報告では、
モエギスゲでも雄鱗片の縁が合着してコップ状となる個体がしばしばあるという。
近似種 : モエギスゲ

■分布:北海道、本州、九州 ・ 中国
■生育環境:水田の畦、雑木林の林縁、アカマツ林の疎林内、草地など。
■果実期:4〜5月
■西宮市内での分布:市内では北部の棚田の畦で確認できたのみで稀。

Fig.2 花序。(兵庫県三田市・溜池の土堤 2007.5/10)
  近縁種のモエギスゲに比べると、雄小穂は細く、雌小穂は短い印象を与える。

Fig.3 花序の拡大。(西宮市・棚田の畦 2007.6/10)
  中央に見えるのが雄小穂で、非常に細く、上から3段目、6段目の雄鱗片がコップ状に癒合しているのが解る。
  雌小穂の果胞先端はやや外曲する。

Fig.4 雌鱗片をつけた果胞(左)、果胞単体(中)および痩果(右)。(西宮市・林道脇 2007.5/27)
  雌鱗片の上部はほとんど切り形で、中肋の先端部が少し突き出る。
  果胞は約2.5mmで、有毛、脈が見られる。
  痩果は3稜ある卵形で、赤褐色、長さ2mm前後。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
小山鐡夫, 2004 ヒメモエギスゲ. 北村四郎・村田源・小山鐡夫『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.276. 保育社
勝山輝男. 2001. スゲ属ヌカスゲ節. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 459〜472. 神奈川県立生命の星・地球博物館
勝山輝男, 2005. ヌカスゲ節. 『日本のスゲ』 170〜251. 文一総合出版
谷城勝弘, 2007. スゲ属ヌカスゲ節. 『カヤツリグサ科入門図鑑』 72〜94. 全国農村教育協会
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ヒメモエギスゲ. 『六甲山地の植物誌』 248. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. ヒメモエギスゲ. 『近畿地方植物誌』 161. 大阪自然史センター
山口純一, 2008. モエギスゲの雄鱗片の合着. 莎草研究 13:29〜34.

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