ヒメジソ Mosla dianthera  (Hamilt.) Maxim. シソ科 イヌコウジュ属
湿生植物
Fig.1 (西宮市・休耕田 2010.9/20)

Fig.2 (兵庫県小野市・休耕田 2013.9/24)

休耕田や湿地、溜池畔、用水路脇、湿った道端などに生える1年草。
茎は直立し、4稜形、稜上に下向きの毛があり、節に白毛があり、盛んに分枝して、高さ20〜60cmとなる。
葉は1〜3cmの葉柄があり、卵形〜広卵形、4〜6対の粗い鋸歯があり、鋭頭で、長さ2〜4cm、幅1〜2.5cm、無毛または圧毛を散生する。
萼は長さ2〜3mm、果時には約5mmとなり、まばらに毛があって、上唇の歯は広く鈍頭。
花は長さ約4mm、花冠は白色でわずかに淡紅色を帯びる。分果は卵円形で長さ約1.2mm。

イヌコウジュM. punctulata)は葉の鋸歯が6〜13対で微細毛があり、上萼裂は鋭頭。
シラゲヒメジソM. hirta)は葉に6〜10個の鋸歯があり、茎、萼、葉面に長い白毛があり、半日陰に生える。
近似種 : イヌコウジュ、 シラゲヒメジソ

■分布:北海道、本州、四国、九州、沖縄 ・ 朝鮮半島、中国、台湾
■生育環境:休耕田、湿地、溜池畔、用水路脇、湿った道端など。
■花期:9〜10月
■西宮市内での分布:市内では中〜北部でふつうに見られる。

Fig.3 ヒメジソの茎。右は茎拡大。(西宮市・溜池畔 2010.9/13)
  茎は4稜ある方形。稜上には下向きの毛があり、節には白毛がある。葉は茎に対生する。

Fig.4 葉。(西宮市・溜池畔 2010.9/13)
  葉は卵形〜広卵形、4〜6対の鋸歯あある。葉表には毛が見られなかった。
  葉身基部はくさび形で、最後は葉縁に向かって流れ、やや翼状となる。

Fig.5 葉裏の拡大。(西宮市・溜池畔 2010.9/13)
  裏面には腺点を散布する。中央脈上には上向きの毛が見られた。また、鋸歯の先は白点となっていた。

Fig.6 花序。(西宮市・溜池畔 2010.9/13)
  花序は茎頂につき、2花からなる仮輪をまばらに総状につける。花序は長いが、だいたい2〜4花程度が下方から順に開花してゆく。

Fig.7 花序の拡大。(西宮市・溜池畔 2010.9/13)
  花は花序中軸の節に2個ずつつき、柄があり、柄の基部には長卵形の苞葉がある。
  花冠は唇形、淡紅色を帯びた白色。上唇は小さく、浅3裂する。下唇は3裂し、中央裂片は大きく、開出または前方に張り出す。
  花序中軸は毛が少ない。萼筒はほとんど無毛だが、基部近くに毛が生えるものもある。萼裂片は鈍頭。

西宮市内での生育環境と生態
Fig.8 休耕田に群生するヒメジソ。(西宮市・休耕田 2010.9/20)
イノシシの害によって一時的に耕作放棄された休耕田の一画に、ヒメジソ群落が出現していた。
休耕田内は高茎草本の侵入も見られるが、多湿な場所ではイヌシカクイ、ハリイ、コウガイゼキショウ、アオコウガイゼキショウ、ヤマイ、
イヌホタルイ、タイワンヤマイ、イボクサ、アゼナ、ヘビイチゴ、ヌマトラノオ、ミズギボウシなどの生育が見られた。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
村田源, 1981. シソ科イヌコウジュ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本3 合弁花類』 p.81〜82. pl.68. 平凡社
北村四郎・村田源, 2004 シソ科イヌコウジュ属. 『原色日本植物図鑑 草本編(T) 合弁花類』 p.169〜170. pl.52. 保育社
牧野富太郎, 1961 ヒメジソ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 538. 北隆館
支倉千賀子. 2001. イヌコウジュ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 1217〜1218. 神奈川県立生命の星・地球博物館
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ヒメジソ. 『六甲山地の植物誌』 186. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. ヒメジソ. 『近畿地方植物誌』 44. 大阪自然史センター
黒崎史平 2004. ヒメジソ. 兵庫県産維管束植物6 シソ科. 人と自然15:138. 兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:26th.July.2014

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