ヒメナエ Mitrasacme indica  Wight マチン科 アイナエ属
湿生植物  環境省絶滅危惧U類(VU) ・ 兵庫県RDB Aランク種
Fig.1 (兵庫県播磨地方・溜池畔の湿原 2012.10/15)

Fig.2 (兵庫県播磨地方・溜池畔 2014.9/23)

日当たり良い暖地の低湿地に生育する小型の1年草。
茎は軟弱で高さ5〜10cm、下部はときに分枝し、葉とともにほとんど無毛。
葉は対生して、茎全体にまばらにつき、披針形または線形で、長さ3〜8mm、幅1〜2mm、先は尖り、1本の中脈のみが目立つ。
夏〜秋、白色の花を茎の上部の葉腋に1個ずつ開く。
花柄は細く、粒状突起が散生し、長さ7〜20mm。萼は鐘形で、1/3ほどまで4裂する。
花冠は鐘形で、先は4裂し、径約2.5mm。刮ハは径2.5mmほどの球形で、先端に花柱が残り、その基部が2裂する。

アイナエM. pigmaea)は葉が花茎下部の短い茎に2〜4対が固まってつく。
近似種 : アイナエ

■分布:本州、四国、九州、沖縄 ・ インド、マレーシア、オーストラリア
■生育環境:溜池畔、湿地、湿原など。
■花期:8〜10月
■西宮市内での分布:市内では確認できていない。兵庫県下でも自生地は数ヶ所しかない。

Fig.3 対生してつく葉。(兵庫県播磨地方・溜池畔の湿原 2012.10/15)
  葉は茎全体にまばらにつき、披針形または線形。長さ3〜8mm、幅1〜2mm、鋭頭。中脈は確認しがたい。

Fig.4 横から見た花。(兵庫県播磨地方・溜池畔の湿原 2012.10/15)
  花柄には粒状突起がある。萼は鐘形。花冠は4裂し、喉部に白色の毛がある。

Fig.5 花と刮ハ。(兵庫県播磨地方・溜池畔の湿原 2012.10/15)
  雄蕊は4個で花筒につき、先は筒部から出ない。花柱は1本。
  刮ハは萼に包まれ、球形。花柱基部は2裂する。

Fig.6 種子。(兵庫県播磨地方・溜池畔の湿原 2012.10/15)
  種子は楕円形、黒褐色、長さ0.4〜0.5mm、表面に格子模様がある。

生育環境と生態
Fig.7 湿原に生育するヒメナエ。(兵庫県播磨地方・溜池畔の湿原 2012.10/15)
溜池畔の流れ込み部に広がった湿原のイヌノハナヒゲ群落中の株元に生育していた。
湿原はイヌノハナヒゲが優占し、ヌマガヤ、カモノハシ、イヌシカクイ、チゴザサ、コマツカサススキ、アブラガヤなど中型の草本が混生し、
ヒメナエはホザキノミミカキグサ、イトイヌノヒゲ、シロイヌノヒゲ、サギソウなどとともに中型草本の株元に点在している。
湿原の自然度は高く、他にゴマクサ、タヌキマメ、オミナエシ、ワレモコウ、ホソバリンドウ、ヤマラッキョウ、コシンジュガヤ、ミズトンボなどが、
流れ込みの水中にはミクリが抽水状態で生育していた。

Fig.8 溜池畔に生育するヒメナエ。(兵庫県播磨地方・溜池畔 2014.9/23)
水抜きされた溜池畔の満水時には喫水線直下だっただろう場所にヒメナエが点在していた。
ヒメナエが生育する場所より上にはメリケンムグラ、ツクシスズメノヒエ、ミズトラノオ、ヌマトラノオ、ミソハギなどが生育し、
下にはテンツキ、クグテンツキ、クロテンツキ、ヒメヒラテンツキ、メアゼテンツキ、コアゼガヤツリ、ツルナシコアゼガヤツリ、
アオガヤツリ、オオシロガヤツリ、クロタマガヤツリ、エゾハリイ、マツバイ、スズメノコビエ、ヌマカゼクサ、ウキシバ、ヌカキビ、
ツクシクロイヌノヒゲ、ニッポンイヌノヒゲ、オオホシクサ、ホシクサ、ショウブ、ヤナギタデ、コケオトギリ、陸生形のタチモ、ミミカキグサ、
陸生形のミズユキノシタ、ヒレタゴボウ、サワトウガラシ、アゼトウガラシ、アゼナ、ミゾカクシなどが見られた。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
山崎敬, 1981. マチン科アイナエ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本3 合弁花類』 p.27. pl.22. 平凡社
北村四郎・村田源, 2004 フジウツギ科アイナエ属. 『原色日本植物図鑑 草本編(T) 合弁花類』 p.222〜223. pl.66. 保育社
長谷川義人. 2001. マチン科アイナエ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 1126〜1127. 神奈川県立生命の星・地球博物館
村田源. 2004. ヒメナエ. 『近畿地方植物誌』 51. 大阪自然史センター
福岡誠行・布施静香・黒崎史平 2005. ヒメナエ. 兵庫県産維管束植物6 マチン科. 人と自然15:109. 兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:7th.Nov.2014

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