ヒレタゴボウ (アメリカミズキンバイ) |
Ludwigia decurrens Walt. | アカバナ科 チョウジタデ属 |
湿生植物・帰化植物 |
Fig.1 (西宮市・休耕田 2015.9/22) |
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Fig.2 (滋賀県・湖岸 2011.8/18) 水田、休耕田、中栄養な湿地や溜池畔に生育する1年草。北アメリカ〜熱帯アメリカ原産の帰化植物。 茎はよく分枝して、高さ100〜150cm、無毛で、ふつう4稜ときに3稜あり、稜は翼状に張り出す。 葉は互生し、ふつう柄がなく、披針形〜狭楕円形、長さ5〜12cm、幅1.5〜3cm、ほぼ全縁で鋭頭、柔らかく光沢がある。 葉の基部はくさび形で、茎の稜に沿って流れる。 花は葉腋にまばらに単性。花柄はごく短い。萼片は狭卵形、長さ7〜10mm。花弁4個、倒卵形で長さ8〜12mm、黄色で大きい。雄蕊8個。 刮ハは明瞭な4稜があり、四角柱状、長さ1〜2cm、無毛または微毛がある。4個の萼片は刮ハが熟すまで宿存する。 種子は長さ約0.4mmで褐色。 在来種のチョウジタデ(L. epilobioides)は花径は8mmと小さく、茎の翼は顕著でなく、刮ハは細長い円柱状で萼片は宿存しない。 チョウジタデに酷似する外来種タゴボウモドキ(L. hyssopifolia)は雄蕊は8個、刮ハは四角柱状。 近似種 : チョウジタデ、 タゴボウモドキ ■分布:本州、四国に帰化。北アメリカ〜熱帯アメリカ原産 ■生育環境:水田、休耕田、中栄養な湿地や溜池畔など。 ■果期:8〜9月 ■市内での分布:全域の水田や休耕田に見られるが、チョウジタデと比較するとあまり多くない。 |
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↑Fig.3 茎は直立または斜上して、下部〜中部では葉腋から盛んに分枝する。(兵庫県明石市・埋め立てた水田跡 2008.8/31) |
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↑Fig.4 茎の拡大。(兵庫県明石市・埋め立てた水田跡 2008.8/31) 柄のない葉の両縁が茎へと流れて稜となり、ヒレ(翼)状に張り出す。チョウジタデも同様な稜があるが、顕著な張り出しはない。 |
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↑Fig.5 花はまばらに葉腋につく。(兵庫県明石市・埋め立てた水田跡 2008.8/31) 花弁は倒卵形で4個、葉脈状の脈があり、チョウジタデよりも大きく、花径は2.5cmほどでよく目立つ。 |
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↑Fig.6 刮ハ。(兵庫県明石市・埋め立てた水田跡 2008.8/31) 成熟するまで萼片が宿存する。 |
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↑Fig.7 成熟して褐色となった果実。(西宮市山口町・休耕田 2008.11/16) それまで残っていた萼片は脱落し、刮ハの壁面が破れ始めている。 |
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↑Fig.8 刮ハの内部には微細な種子が多数入っている。(西宮市山口町・休耕田 2008.11/16) ピンセットで側壁を取り除く際に、沢山の種子が飛び散った。 |
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↑Fig.9,10 痩果(上)とのそ拡大(下)。(西宮市山口町・休耕田 2008.11/16) 痩果は長楕円形で長さ約0.4mm、縦に1個隆条があり、表面は横長の非常に微細な網目状の隆起がある。 |
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↑Fig.11 紅葉期にも盛んに開花するヒレタゴボウ。(西宮市・ハス田の畦 2009.11/10) 同属のチョウジタデは枯れて種子を散らす中、ヒレタゴボウは耐寒性がより強いのか草体が紅葉しても盛んに開花していた。 |
市内での生育環境と生態 |
Fig.12 ハス田の畦に群生するヒレタゴボウ。(西宮市・ハス田 2009.11/10) 水田が広がる一画が小規模なハス田となっており、その畦にヒレタゴボウが群生していた。 ハス田内には枯れかかったチョウジタデやアゼナがみられ、ヒレタゴボウは畦や周囲の湛水しない部分に多く見られる。 チョウジタデとヒレタゴボウは同属であるが、好む環境は微妙に異なるようである。 畦に同所的に見られるのはスカシタゴボウ(アブラナ科)。同じゴボウでも姿は全く異なる。 |
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Fig.13 休耕田に群生するヒレタゴボウ。(西宮市・休耕田 2015.9/22) 休耕1年目で群生していた。この休耕田では耕作されていた当時は耕起前にコオニタビラコが、耕作中はキカシグサが見られた場所。 ところが、休耕1年目ではコオニタビラコやキカシグサは見られず、ヒレタゴボウやウシクグ、ミズガヤツリなどが目立った。 休耕1年目の草本は類型化しにくく、水分条件や周辺の植生が影響を与えることが多い。 ヒレタゴボウやウシクグは1年生草本の中でも草丈が高いから目立つのだろうし、ミズガヤツリは土中の塊茎からでたのだろう。 |
生育環境と生態 |
Fig.14 用水路脇に生育するヒレタゴボウ。(兵庫県明石市・用水路脇 2008.8/31) |
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Fig.15 湖岸に群生するヒレタゴボウ。(滋賀県高島市・湖岸 2008.9/8) |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑や一般図書を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 北川政夫, 1982. アカバナ科チョウジタデ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本2 離弁花類』 p.266〜267. pls.243. 平凡社 北村四郎・村田源, 2004 アカバナ科チョウジタデ属. 『原色日本植物図鑑 草本編(2) 離弁花編』 p.43〜44. pls.12. 村上司郎. 2001. アカバナ科チョウジタデ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 1037〜1040. 神奈川県立生命の星・地球博物館 角野康郎, 1994 アカバナ科チョウジタデ属. 『日本水草図鑑』 132. 文一統合出版 清水矩宏・森田弘彦・廣田伸七. 2001. ヒレタゴボウ、タゴボウモドキ. 『日本帰化植物写真図鑑』 206,207. 全国農村教育協会 大場秀章. 2001. アカバナ科チョウジタデ属. 清水建美(編)『日本の帰化植物』 p.143〜144. pls.64. 平凡社 小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ヒレタゴボウ. 『六甲山地の植物誌』 163. (財)神戸市公園緑化協会 最終更新日:5th.Aug.2016 |