ヒロハスズメノトウガラシ Lindernia antipoda  (L.) Alston var. verbenifolia  (Colsm.) Ohba. ゴマノハグサ科 アゼトウガラシ属
湿生植物
Fig.1 (三重県熊野市・刈り取り後の水田 2014.10/26)

Fig.2 (長崎県・水田の畦 2009.9/29)

水田や休耕田、溜池畔などに生える1年草。
全草無毛。茎は下部で分枝し、倒伏気味に地表を這って横に広がり、高さ5〜20cm。
葉は広倒披針形〜楕円形で鋸歯があり、鋭頭。
花柄は開出気味で、苞葉よりも長い。萼は5裂。
花冠は白味またはわずかに淡青色を帯び、2唇形、下唇は横に広がり3裂し、中央の裂片は幅広く短い。
刮ハは細長く、長さ1〜1.5cmのトウガラシ状。

以前、ひと括りにヒロハスズメノトウガラシとともにスズメノトウガラシとされていたエダウチスズメノトウガラシ(var. grandiflora)と酷似する。
以下に区別点を列挙した表を附す。
花冠 花冠の下唇 苞葉と花柄(果柄) 葉の形
(変異があり目安程度)
ヒロハスズメノトウガラシ 大きくラッパ状に開き、ほぼ白色(ただし秋期は淡紅色を帯びる) 横に広がり、中央裂片は幅広く、短い 苞葉は披針形で、花柄は苞葉よりも長い 楕円形であることが多く、先はやや鈍い
エダウチスズメノトウガラシ 小さく、下唇には淡紅紫色を帯びた部分がある 中央裂片の幅は狭く、長い 苞葉は葉状で、花柄は苞葉よりも短い 広倒披針形であることが多く、先は鋭い
近似種 : エダウチスズメノトウガラシ

■分布:本州、四国、九州、沖縄 ・ 国外分布は不明
■生育環境:水田、休耕田、溜池畔など。
■花期:8〜10月
■西宮市内での分布:市内では未見。兵庫県内では淡路島に多い。

Fig.3 花冠。(兵庫県洲本市・水田の畦 2009.9/6)
  花冠はエダウチスズメノトウガラシと較べて大きく、急にラッパ形に広がり、白味が強い。
  2唇形で下唇の幅は広く、エダウチ〜と較べると中央の裂片は幅が広く、短い。
  画像右側には萎れた花冠が見える。萎れると淡紅紫色を帯びるので、萎れた花冠ではエダウチ〜と区別できなくなる。

Fig.4 花序。(長崎県・用水路脇 2009.9/29)
  よく生長した花序では、花柄基部につく苞葉は披針形で小さく、花柄よりも短い。
  エダウチスズメノトウガラシでは苞葉は葉状で、花柄よりも長い。

Fig.5 秋に開花した個体。(長崎県・刈り取り後の水田 2009.10/25)
  秋に入り草体も色づきはじめる頃に開花する花は淡紅色を帯びる。
  秋期は花の色でエダウチスズメノトウガラシと区別するのは困難なため注意が必要である。

Fig.6 秋期の花冠。(長崎県・刈り取り後の水田 2009.10/25)
  花冠の色よりも、下唇の幅や長さに注意すべきだろう。

Fig.7 痩果。(兵庫県加西市・溜池畔 2009.10/30)
  痩果は長さ0.4mm、方形または不整な卵形で、光沢のある茶褐色、表面には格子紋がある。

Fig.8 ヒロハスズメノトウガラシの葉。(長崎県・水田 2009.10/3)
  葉は広倒披針形〜楕円形、鋸歯は明瞭。葉先はエダウチ〜よりもやや鈍い傾向がある。

生育環境と生態
Fig.9 刈り取り後の水田に生育するヒロハスズメノトウガラシ。(長崎県・棚田の水田 2009.9/30)
比較的自然度の高い水田で、ヒメミソハギ、シソクサ、アゼトウガラシ、アゼナ、チョウジタデなどとともに生育していた。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
城川四郎. 2001. ゴマノハグサ科アゼトウガラシ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 1262〜1266. 神奈川県立生命の星・地球博物館


最終更新日:7th.Nov.2014

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