エダウチスズメノトウガラシ | Lindernia antipoda (L.) Alston var. grandiflora (Hook.f.) Tuyama |
ゴマノハグサ科 アゼトウガラシ属 |
湿生植物 |
Fig.1 (滋賀県・水田 2008.9/8) |
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Fig.2 (兵庫県篠山市・休耕田 2008.9/14) |
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水田や休耕田などの湿地に生える1年草。 近年までヒロハスズメノトウガラシとともに、スズメノトウガラシとして扱われてきたが、形態的に異なる2型があり分離された。 茎は下部で分枝し高さ8〜20cm。葉は広倒披針形で鋸歯があり、先は鋭くとがり、中央脈を軸としてやや2つ折れになる。 花柄は斜上し、葉状の苞葉よりも短く、ときに苞葉腋より無花枝を出す。萼は長さ5〜6mmで5深裂する。 花冠は2唇形で、下唇は3裂し、中央裂片はヒロハスズメノトウガラシよりも長い。 刮ハは細長く、名のとおりトウガラシを思わせる。 同属の似たものに以下の2種がある。 ヒロハスズメノトウガラシ(var. verbenifolia)は葉腋に無花枝をつくらず、花柄は苞葉よりも長い。また下唇の中央裂片は短い。 アゼトウガラシ(L. angustifolia)は葉の鋸歯は目立たず、先は鈍頭。花冠の下唇基部には黄橙色の斑紋がある。 以下は酷似するヒロハスズメノトウガラシとの区別点を列挙した表である。 |
花冠 | 花冠の下唇 | 苞葉と花柄(果柄) | 葉の形 (変異があり目安程度) |
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ヒロハスズメノトウガラシ | 大きくラッパ状に開き、ほぼ白色(ただし秋遅くは淡紅紫色帯びる) | 横に広がり、中央裂片は幅広く、短い | 苞葉は披針形で、花柄は苞葉よりも長い | 楕円形であることが多く、先はやや鈍い |
エダウチスズメノトウガラシ | 小さく、下唇には淡紅紫色を帯びた部分がある | 中央裂片の幅は狭く、長い | 苞葉は葉状で、花柄は苞葉よりも短い | 広倒披針形であることが多く、先は鋭い |
↑Fig.3 開花しはじめた草体。(滋賀県・水田 2008.9/8) 稲刈り後の水田では刈り後から茎を立ち上げるとすぐに花芽をつくり開花する。 |
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↑Fig.4 花冠。(滋賀県・水田 2008.9/8) 花冠は唇形で下唇は淡紅紫色を帯びる。下唇は3裂し、中央裂片はヒロハスズメノトウガラシのものよりも長い。 雄蕊は4個あるが、うち2個は退化して花粉をつくらない仮雄蕊となる。 |
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↑Fig.5 葉身。(滋賀県・水田 2008.9/8) 鋸歯の切れ込みはアゼトウガラシよりも深く明瞭。葉先は鋭くとがる。 葉身は中央脈を軸としてやや2つ折り状となる。 |
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↑Fig.6 刮ハと苞葉。(兵庫県篠山市・休耕田 2009.9/14) 刮ハは長披針形で名の由来となったようにトウガラシのような形状をしている。 果柄(花柄)は苞葉よりも短く、茎に斜開してつくのがヒロハスズメノトウガラシとの区別点となる。 ヒロハスズメノトウガラシでは果柄は苞葉より長く、茎に開出気味につく。 |
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↑Fig.7 種子。(兵庫県篠山市・刈り取り後の水田 2009.10/18) 種子は淡褐色、不整な稜を持った卵形で、長さ0.4mm、表面には隆起した網状紋がある。 |
生育環境と生態 |
Fig.8 刈り取り後の水田に生育するエダウチスズメノトウガラシ。(滋賀県・水田 2008.9/8) 画像中にはアゼナ、アゼトウガラシ、チョウジタデ、タカサブロウ、フタバムグラ、トキンソウ、コハタケゴケが見えるが、 他には同属のヒロハスズメノトウガラシ、シソクサ、ホシクサなどが生育していた。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 城川四郎. 2001. アゼトウガラシ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 1262〜1265. 神奈川県立生命の星・地球博物館 小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. スズメノトウガラシ. 『六甲山地の植物誌』 191. (財)神戸市公園緑化協会 村田源. 2004. スズメノトウガラシ. 『近畿地方植物誌』 40. 大阪自然史センター 最終更新日:20th.Nov.2009 |