フクド Artemisia fukudo  Makino キク科 ヨモギ属
塩性湿生植物  環境省準絶滅危惧(NT)・兵庫県RDB Bランク種
Fig.1 (西播磨・河口 2011.11/10)

河口部の塩性湿地などに生育する多年草で、花が咲くと枯れる。メロンに似た香りがある。
根生葉は短い主茎の先にあってロゼット状で長さ14〜21cm、うち3〜13cmは葉柄。
葉身は扇状で2〜3回掌状に深裂し、裂片は線形で円頭、幅2mm、はじめくも毛があるが、のちに無毛となり、厚い。
主軸には花をつけず、側枝が高さ30〜50cmに伸びて、紫色を帯びて、円錐花序に多数の花をつける。
茎葉は長柄があり、葉身は羽状深裂し、上部の葉は小さく、3中裂するかまたは線形。
頭花は短い倒円錐形で長さ3〜5mm、幅5〜7mm、花柄は5〜10mm。
総苞片は3〜4列、外片は卵形、長さ1.5〜2mm、縁は狭く透明膜質。
雄花の花冠は長さ1.5〜2mm、下部はやや平たくなって緑色。両性花の花冠は長さ1.5〜2.5mm、下部は狭まらない。
花柱の枝は切形。痩果は長さ1.2〜2mm。
近似種 : カワラヨモギ、 カワラニンジン、クソニンジン

■分布:本州(愛知県以西)、四国、九州 ・ 朝鮮半島
■生育環境:河口部の塩性湿地など。
■果実期:9〜11月
■西宮市内での分布:市内では見られない。兵庫県下でも自生地は限られる。

Fig.2 干潮帯に生育する若い個体。(西播磨・河口 2011.6/5)
  ときに満潮時に水没する場所に生育する。主茎の節間は詰まってこんもりとした繁みとなる。

Fig.3 根生葉。(西播磨・河口 2011.11/10)
  根生葉は短い主茎の先につきロゼット状に広がり、明瞭な柄があり、開花時には枯れる。
  葉身は扇状で2〜3回掌状に深裂し、裂片は線形で円頭、若い葉にはくも毛があるが、のちに無毛となり、厚い。

Fig.4 初夏に伸び始めた側枝。(西播磨・河口 2011.6/5)
  側枝は主茎の根際から生じ、茎は紫色を帯び、秋に花をつける。

Fig.5 側枝と分枝した花序。(西播磨・河口 2011.11/10)
  側枝の葉は長柄があり、葉身は羽状深裂し、上部の葉は小さく、3中裂するかまたは線形。
  花序は側枝の上部と、葉腋から出る。

Fig.6 開花期のフクド。(西播磨・河口 2011.11/10)
  開花期には主茎の根生葉や側枝下部の葉は枯れる。側枝の花序は円錐花序で多数の花がつく。

Fig.7 花序の拡大。(西播磨・河口 2011.11/10)
  頭花はほとんどが下向きにつき、短い倒円錐形で長さ3〜5mm、幅5〜7mm、花柄は5〜10mm。

Fig.8 頭花。(西播磨・河口 2011.11/10)
  総苞片は3〜4列、外片は卵形、長さ1.5〜2mm、透明膜質の狭い縁取りがある。
  画像のものは小花の花冠が褐色を呈し、すでに開花が終わっている頭花である。

Fig.9 幼苗。(西播磨・河口 2011.6/5)
  初夏に、前年の枯れた草体の周辺に、多数の幼苗が見られた。

他地域での生育環境と生態
Fig.10 河口部の塩性湿地に生育するフクド。(西播磨・河口 2011.11/10)
河川河口部の砂泥地の塩性湿地にフクドの大きな群落が広がっていた。
塩性湿地ではアシやアイアシもパッチ状に群落をつくり、地表にはアシハラガニの巣穴やイボウミニナが見られる。
フクド群落の周縁部ではシオクグ、ナガミノオニシバ、ハマサジ、ホソバハマアカザ、イソヤマテンツキが生育する。

Fig.11 河口部の中州に群生するフクド。(岡山県備前市・河口 2013.8/8)
小河川の河口部にある中州で、ハマサジとともに塩性植物群落を形成している。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
北村四郎, 1981. キク科ヨモギ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本3 合弁花類』 p.168〜174. pls.138〜144. 平凡社
北村四郎・村田源・堀勝, 2004 キク科ヨモギ属. 『原色日本植物図鑑 草本編(1) 合弁花編』 p.51〜57. pls.17〜18. 
村田源. 2004. フクド. 『近畿地方植物誌』 17. 大阪自然史センター
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ハマサジ. 『六甲山地の植物誌』 174. (財)神戸市公園緑化協会
兵庫県. 2010. フクド. 『兵庫の貴重な自然 兵庫県版レッドデータブック2010(植物・植物群落)』 89. (財)ひょうご環境創造協会
小山博滋・黒崎史平・高橋晃 2007. フクド. 兵庫県産維管束植物8 キク科ヨモギ属. 人と自然17:146. 兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:21st.Mar.2014

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