カモノハシ Ischaemum aristatum  L. var. glaucum  (Honda) T. Koyama イネ科 カモノハシ属
湿生植物
Fig.1 (西宮市・溜池畔 2006.8/14)

中栄養な湿地、やや貧栄養な溜池畔に生育する多年草。
自生地では群生することが多いが、分布は局所的なように思える。
カモノハシの名は花序が鴨の嘴に似て、2本の花序が密着していることによる。
茎は高さ30〜70cm、葉は無毛で、初夏〜夏に4〜7cmの花序を出し、小花から淡紅色の柱頭が出る。
小穂は長さ5〜6mmで、芒はないか、あっても小穂から少し出る程度。

タイワンカモノハシ(var. aristaum)は苞頴(第1頴)に翼があって幅広く、第4頴に芒がある。紀伊半島以南の暖地に生育する。
ケカモノハシ(I. anthephoroides)は全体にやや太くて圧毛があり、節には毛が生え、苞頴の背には毛が生え、第4頴には明瞭な長い芒がある。
近似種 : ケカモノハシ、 タイワンカモノハシ

■分布:本州、九州
■生育環境:溜池畔や湿地、砂浜など。
■花期:7〜10月
■西宮市内での分布:市内では1ヶ所の溜池畔と、中部の湿地に見られる。

Fig.2 株は叢生して大型化する。(西宮市・溜池畔の湿地 2007.5/31)

Fig.3 出穂したばかりの花序。(西宮市・溜池畔の湿地 2007.5/31)
  花茎につく葉鞘の外縁には長い毛があるのが見える。

Fig.4 雌蕊の柱頭を出した開花期のカモノハシ。(西宮市・溜池畔の湿地 2007.5/31)
  雌蕊柱頭は2岐し、淡紅色。

Fig.5 花序の拡大。(兵庫県加東市・小湿地 2008.10/19)
  花序の総には柄のある小穂とほとんど無柄の小穂が対になってつく。

Fig.6 花序は2本の扁平な総が接してひとつの花序にみえる。(兵庫県加東市・小湿地 2008.10/19)
  少し乾くと、画像のようにまとまっていた総が開いて、2本あることがわかる。
  小穂の一部が茶色く変色しているのは、カメムシ類による食害によるもの。

Fig.7 小穂。(兵庫県加東市・小湿地 2008.10/19)
  苞頴と小穂はほぼ同長。護頴には芒があって、小穂から少し出ているが、ケカモノハシのように長く出ない。
  苞頴の背や縁には毛がほとんど見られず、あってもごく微小な短毛である。


Fig.8,9 葉鞘と葉舌。(兵庫県加東市・小湿地 2008.10/19)
  葉鞘の縁には白長毛があるが、表面や葉、節などには毛がほとんど見られない。
  葉舌の先は切り形で、明瞭。

Fig.10 立ち枯れた花序。(長崎県市・砂浜 2009.10/24)
  海岸で潮をかぶったのだろうか、花序が立ち枯れて2つに別れ、乾燥したためか苞頴は開いている。

西宮市内での生育環境と生態
現在、画像はありません 

他地域での生育環境と生態
Fig.11 溜池畔に生育するカモノハシ。(兵庫県姫路市・溜池畔 2011.7/18)
満水状態の溜池の水際にカモノハシが生育していた。
比較的最近に改修が行われたようで、それほど植生は豊富ではなく、同所的にイヌノハナヒゲ、ミミカキグサ、ノギランなどが見られる程度であった。

Fig.12 大河川下流域の原野状の中洲に生育するカモノハシ。(兵庫県豊岡市・中洲 2011.7/27)
ヨシ群落が安定して生育する下流域の中洲の、ヨシ群落の外周に群生している。
ヨシ群落の縁にはこの他シロバナサクラタデ、ウシノシッペイ、タチコウガイゼキショウ、ヒメコウガイゼキショウなどが生育している。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
大井次三郎, 1982 イネ科カモノハシ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)『日本の野生植物 草本T 単子葉類』
       pp.91. pls.71. 平凡社
小山鐡夫, 2004 カモノハシ属. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.377〜378. pls.99. 保育社
長田武正・長田喜美子, 1984 カモノハシ. 『野草図鑑 3 すすきの巻』 p.157. 保育社
藤本義昭. 1995. イネ科カモノハシ属. 『兵庫県イネ科植物誌』 137〜139. 藤本植物研究所
古川冷實. 2001. イネ科ヌカボ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 354. 神奈川県立生命の星・地球博物館
桑原義晴, 2008 カモノハシ属. 『日本イネ科植物図譜』 p.282〜288. pls.22. 全国農村教育協会
近藤浩文, 1982 甲山周辺の湿地植物. 『六甲の自然』 85〜87. 神戸新聞出版センター
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. カモノハシ. 『六甲山地の植物誌』 232. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. カモノハシ. 『近畿地方植物誌』 177. 大阪自然史センター
矢野悟道・竹中則夫. 1978. 甲山湿原(仁川地区)の植生調査並びに保全に関する報告書. 西宮市自然保護課

最終更新日:5th.Sept.2011

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