カワラスガナ Cyperus sanguinolentus  Vahl.
 f. nipponicus  (Ohwi)T.Koyama
カヤツリグサ科 カヤツリグサ属
湿生植物
Fig.1 (西宮市・砂防ダム内湿地 2007.8/31)

Fig.2 (滋賀県・休耕田 2012.10/1)

河川敷や河原、砂質の湿地、休耕田、水田の畦などに生える1年草。
根茎は短く、多数の茎を叢生するが、基部は倒れ込んで横に這い節から発根する。
草丈は裸地であれば20cm〜30cmだが、他種との競合のある場所では40cmを超える。
葉は茎の基部にあり、幅2〜3mm、茎より短い。鞘は汚緑色で、基部のものは褐色を帯びる。
花序は頭状で、3〜10個の小穂をつけ、径1.5〜3.5cm、淡緑色〜暗紫色と色の幅が広く、淡緑色の個体と暗紫色の個体とではかなり印象が異なる。
苞葉は2〜3個、平開し、花序よりも長い。小穂は扁平な長楕円形または披針形を帯び、長さ1〜2cm、幅2.5〜3.5mm、先は短くとがり、15〜30花を2列につける。
鱗片は広卵形、長さ2〜2.5mm、鈍頭で、両側に溝がある。痩果は長さ1mm前後で、広倒卵形、左右から扁平、表面は平滑だが、ルーペで細点が見える。
花柱は痩果の3倍長、柱頭は2岐する。

カワラスガナはここではカヤツリグサ科カヤツリグサ属イガガヤツリ亜属として扱い、カヤツリグサ属として一括したが、
イガガヤツリやアゼガヤツリとともにカワラスガナ属(Pycreus Beauv.)とすることもある。

ナンゴクカワラスガナ(f. sanguinolentus)は花序枝を生じるものをいう。
母種のシデガヤツリ(var. spectabilis)は小穂が卵状楕円形で、長さ約3cm、幅4mm以上あるものをいう。
タチガヤツリC. diasphsnus)はカワラスガナと酷似するが、痩果には明瞭な横じわがある。
国外ではアムールから中央アジアまで広く分布するが、国内では青森と小笠原で稀に見られる。
ムギガラガヤツリC. unioloides)は四国、九州に分布し、花序枝を1〜4個生じ、小穂は扁平な長楕円状披針形で、わら色、
長さ1〜2.5cm、幅4〜5mmで、頭状に集まって花序をつくる。
アゼガヤツリC. flavidus)はカワラスガナと同所的に生育することも多く、小穂は著しく扁平で、鋭頭、鈍い金属様の光沢があり、長さ1〜2.5cm、幅2〜2.5mm。
アゼガヤツリとの種間雑種にカズサガヤツリC. ×kadzusensis)があり、全体カワラスガナに似るが茎は直立して長く横に這わず、
穂はアゼガヤツリのように濃い紫褐色となる。
近似種 : アゼガヤツリコアゼガヤツリクグガヤツリ、 チャガヤツリ、ツルナシコアゼガヤツリ、ヒメガヤツリ

■分布:北海道、本州、四国、九州、沖縄
■生育環境:河川敷、河原、湿地、水田の畦。
■花期:8〜10月
■西宮市内での分布:市内では中・北部の河川敷、休耕田、やや中栄養な湿地で比較的普通に見られる。

Fig.3 苞葉はふつう2〜3枚。小穂は中軸に開出して付き、扁平で長楕円形。(西宮市・砂防ダム内湿地 2007.8/31)

Fig.4 小穂が暗紫色の個体。(西宮市・砂防ダム内湿地 2007.8/31)
  鱗片の間からは2岐した雌蕊柱頭がのぞいている。

Fig.5 小穂。(西宮市・砂防ダム内湿地 2007.8/31)
  小穂は扁平な長楕円形〜広披針形で、花は2列に並ぶ。鱗片は広卵形で、両側に浅い溝があり、鈍頭。中肋は緑色。

Fig.6 痩果。(西宮市・砂防ダム内湿地 2007.8/31)
  広倒卵形で、長さ1.3mm程度、暗褐色。光沢があり扁平なレンズ状。

西宮市内での生育環境と生態
Fig.7 砂防ダム内の湿地に自生するカワラスガナ。(西宮市 2007.8/31)
表面をごく浅い水が流れるような場所に多かった。
画像ではツルヨシとヤマイ、ツボスミレが見えている。

Fig.8 休耕田で生育するカワラスガナ。(西宮市 2007.10/11)
葉、花茎ともに大きく放射状に広げて、太陽光を効率よく浴びるような形態をとっている。
アゼガヤが優占する中、イヌホタルイ、タマガヤツリ、ヒメクグ、クサネムなどとともに生育していた。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
大井次三郎, 1982. カヤツリグサ科カヤツリグサ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本1 単子葉類』 p.180〜184. pls.164〜168. 平凡社
小山鐡夫, 2004 カヤツリグサ科カワラスガナ属. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.246〜248. pl.62. 保育社
牧野富太郎, 1961 カワラスガナ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 759. 北隆館
星野卓二・正木智美, 2003. カヤツリグサ属. 星野卓二・正木智美・西本眞理子『岡山県カヤツリグサ科植物図譜(U)』 50〜99. 山陽新聞社
谷城勝弘, 2007. カヤツリグサ属. 『カヤツリグサ科入門図鑑』 174〜197. 全国農村教育協会
北川淑子・堀内洋. 2001. カヤツリグサ属イガガヤツリ亜属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 413〜414. 神奈川県立生命の星・地球博物館
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. カワラスガナ. 『六甲山地の植物誌』 250. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. カワラスガナ. 『近畿地方植物誌』 163. 大阪自然史センター
黒崎史平・松岡成久・高橋晃・高野温子・山本伸子・芳澤俊之 2009. カワラスガナ. 兵庫県産維管束植物11 カヤツリグサ科. 人と自然20:167.
       兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:3rd.Mar.2014

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