コゴメイ Juncus sp.
湿生〜抽水植物・帰化植物 今後注意すべき種
Fig.1 (西宮市・武庫川河川敷 2007.6/4)

近年、各地で発見されて増加傾向にある、原産地不明で大型化する多年草の帰化植物。
当地では武庫川河川敷でかなりの個体数が見られ、すでに在来種であるイグサはほぼ見られなくなってしまった。
茎は密に叢生して大株となり、基部は褐色で光沢がある。下部に数枚の葉身のない葉鞘を付け、葉耳は未発達。
茎には微細な条線があるが、ホソイのような目だった肋はなく、内部の髄は未発達で空隙が多い。
花序枝には長短があるが、長いものはやや捩れて、長さ4cm以上にもなる。
刮ハは球形に近い楕円形で、花被片は刮ハのおよそ1/2、卵形で先は尖る。
痩果は半透明さび色で、表面に横長の格子紋があり、長さ約0.3mm、上端は嘴状となってとがる。

【メモ】 兵庫県内では南部の溜池や河川敷に分布域が広がっており、今後注意すべき外来種であると考えられる。
     定着がみられる生育地では、溜池の一画を埋め尽くすほどの群落が見られる。
     イグサの仲間は種子表面に粘液があることから、車のタイヤによる種子の拡散が分布拡大の主要な要因と考えられる。
     侵入定着した場所は、いずれも交通量の多い道路に面しているか、車両の解体工場に面した溜池である。
近似種 : イグサホソイ

■分布:本州
■生育環境:河川敷などの水辺。
■花期:5〜6月
■西宮市内での分布:武庫川河川敷に多い。兵庫県内でも河川敷や道路に近い溜池など、各所で見かける。

Fig.2 花序枝には長短があり、長いものはやや扁平で、ねじれる。(西宮市・武庫川河川敷 2007.6/4)

Fig.3 刮ハは楕円形で、微凸または円頭。(西宮市・武庫川河川敷 2007.6/4)
  花被片は外花被片が内花被片よりも少し長く、刮ハのおよそ1/2長、卵形で鋭頭。

Fig.4 熟した花序。(兵庫県三田市・溜池畔 2008.7/21)
  熟した刮ハは藁色、長さ2mm前後。雨が降ると裂開した隙間から内部の粘性の物質に浸透し、膨張して弾け、多数の種子を出す。


Fig.5,6 痩果。(兵庫県三田市・溜池畔 2008.7/21)
  黄褐色、長卵状楕円形〜卵形、長さ0.3mm前後で、表面には横長の格子模様があり、先端が嘴状となる。

Fig.7 茎には細かい条線があるが、肋はない。(西宮市・武庫川河川敷 2007.8/94)
  茎内部の髄は未発達で、海綿状の組織がはしご状に並び、空隙が多い。

Fig.8 抽水状態で生育するコゴメイ。(兵庫県三田市・溜池畔 2008.6/17)
  イグサ同様、抽水状態で生育することも多く、在来のイグサと生育環境は競合する。

Fig.9 冬期のコゴメイ。(兵庫県三田市・溜池畔 2009.1/24)
  イグサやホソイと同様、常緑〜半常緑越冬する。

西宮市内での生育環境と生態

Fig.10 武庫川河川敷の水際で大株となったコゴメイ。(西宮市・武庫川河川敷 2007.8/9)
武庫川下流域の河川敷ではすでにイグサは見られず、コゴメイばかりが目立つようになってしまった。
画像手前のカヤツリグサ科植物は帰化植物のメリケンガヤツリで、この河川敷での優占種のひとつである。

他地域での生育環境と生態
Fig.11 溜池の一画を占有するコゴメイ群落。(兵庫県三田市・溜池畔 2008.6/17)
馴染みのフィールドでこのような光景を目にするのはつらいものがある。
この溜池畔で見られた単子葉植物はゴウソとイボクサのみで、あとはコゴメイに占拠されていた。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
勝山輝男. 2001. イグサ科イグサ属. 清水建美(編)『日本の帰化植物』 p.240〜241. pls.128. 平凡社
関口克己. 2001. イグサ科イグサ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 240〜246. 神奈川県立生命の星・地球博物館

最終更新日:9th.Jan.2011

<<<戻る TOPページ