クサスゲ Carex rugata  Ohwi カヤツリグサ科 スゲ属 ヌカスゲ節
湿生植物
Fig.1 (西宮市・林縁の小湿地 2007.4/29)

Fig.2 (兵庫県篠山市・雑木林の細流脇 2012.5/5)

落葉樹林内の湿った場所、林縁の小湿地などに自生する多年草。やや半日陰から日陰になるような場所を好む。
根茎は斜上気味に短く伸び、ときに分枝し、まばらに叢生する。基部の鞘は淡色。葉は幅2〜3mm。
花茎は高さ25〜30cm。雄小穂は長さ5〜10mmで、ほとんど柄がない。
雌小穂は上部のものは接近し、下方のものは離れてつき、長さ5〜10mm。
果胞は長さ2.5〜3mm、中部に顕著は凹部がある。痩果は長さ2〜2.5mm、面の中部が浅く凹む。
近似種 : イトアオスゲ

■分布:北海道、本州、九州 ・ 中国
■生育環境:主に落葉樹林内の細流の脇や林縁部の地下水が滲みだした小湿地などに見られる。
■果実期:5〜6月
■西宮市内での分布:市内の丘陵部から山間まで広く分布し、特に六甲山麓周辺の明るい雑木林の細流の脇には必ずといっていいほど見かける。
              兵庫県下の湿地環境でも普通に見られる。

Fig.3 花序の様子。頂小穂は雄性。側小穂は雌性。(西宮市・林縁の小湿地 2007.4/290)
  最上部の雌小穂は雄小穂に接し、2番目以下の雌小穂はかなり下方に離れて付く。

Fig.4 小穂の拡大。(西宮市・林縁の小湿地 2007.4/29)
  雌蕊の柱頭は3岐する。鱗片は果胞よりかなり短く、その先端は尖る。

Fig.5 果胞。(西宮市・林縁の小湿地 2007.4/29)
  左:鱗片をつけた果胞を横から見る。
  右:果胞中部は凹み、短い嘴がある。


西宮市内での生育環境と生態
Fig.6 寺院参道の脇を流れる細流を囲むようにして生育するクサスゲ。(西宮市・林縁の細流脇 2007.5/5)

Fig.7 湧水がしみ出す農道脇に生育するクサスゲ。(西宮市・農道脇 2013.5/23)
湧水がしみ出してぬかるんだ山際の農道脇に帯状に群生していた。
農道上のぬかるんだ場所ではハナビゼキショウ、ドジョウツナギ、ジュズスゲ、カワラスゲ、コジュズスゲ、ヤブヘビイチゴ、
キツネノボタン、トキワハゼなどが生育している。画像のクサスゲの上に生えているスゲはタガネソウ。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
大井次三郎, 1982. クサスゲ. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本T 単子葉類』 p.160. 平凡社
小山鐡夫, 2004 クサスゲ. 北村四郎・村田源・小山鐡夫『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.275. pl.69. 保育社
牧野富太郎, 1961 クサスゲ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 794. 北隆館
勝山輝男. 2001. スゲ属ヌカスゲ節. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 459〜472. 神奈川県立生命の星・地球博物館
勝山輝男, 2005. ヌカスゲ節. 『日本のスゲ』 170〜251. 文一総合出版
谷城勝弘, 2007. スゲ属ヌカスゲ節. 『カヤツリグサ科入門図鑑』 72〜94. 全国農村教育協会
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. クサスゲ. 『六甲山地の植物誌』 247. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. クサスゲ. 『近畿地方植物誌』 160. 大阪自然史センター
黒崎史平・松岡成久・高橋晃・高野温子・山本伸子・芳澤俊之 2009. クサスゲ. 兵庫県産維管束植物11 カヤツリグサ科. 人と自然20:158.
       兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:12th.Mar.2014

 
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