ナガエツルノゲイトウ Alternanthera philoxeroides  (Mart.) Griseb. ヒユ科 ツルノゲイトウ属
湿生〜抽水植物・帰化植物  特定外来生物指定種
Fig.1 (西宮市・武庫川河川敷 2007.5/27)

南米原産の湿地、河川敷、荒れ地などに生育する繁殖力旺盛な多年草。
1989年、尼崎市昆陽町の水田で発見されて以来、各地に広がり猛威をふるっている。
茎は盛んに分枝して地表を長く這い、節から発根して、長さ1mを越す。茎上部ではやや斜上する。無毛。
葉は対生し、楕円形〜倒卵状披針形で長さ2.5〜5cm、幅0.7〜2cm、鋭頭または鈍頭、基部はくさび形でごく短い葉柄があり、葉柄基部は茎を抱く。
花期には頭状に多数の花が集合し、花序には短毛のある長い柄があり、茎上部付近の葉腋から単生する。

河畔で生育する場合、茎の下部は水中にあって抽水状態であることが多く、節からの発根が多く、水中では葉を落とす。
この節のある茎は、ちぎれてもすぐに節から新芽を出し、発根して再生する能力があり、強害草として在来種を脅かしている。
冬期には茎の葉は枯れるが、茎はそのまま越冬し、翌春、各節から側芽を生じて再生する。

似たものに同じく外来種のツルノゲイトウホソバツルノゲイトウがあり水湿地に生えるが、花序には柄がなく、葉腋に直につく。
ツルノゲイトウ(A. sessilis)は1年生草本で、盛んに分枝して匍匐し、上部の節間に2列の毛が生える。花は葉腋に球形に束生する。
葉は倒披針形〜長楕円形で、葉幅は5〜15mm。
ホソバツルノゲイトウ(A. nodiflora)は1年生草本で、花は葉腋に球状に直につく。葉は広線形〜線状披針形で、葉幅は3〜6mm。
近似種 : ホソバツルノゲイトウ、 ツルノゲイトウ

■分布:本州関西以西、四国、九州 ・ 世界各地に帰化
■生育環境:湿地、水田の畦、河川敷、湿った荒れ地などの人為の影響の強い場所に多い。
■花期:5〜11月
■西宮市内での分布:武庫川河川敷で大群生し、在来種の生育場所を奪っている。

Fig.2 花序。(西宮市・武庫川河川敷 2007.5/27)
  対生する葉の葉腋から花茎を上げ、先端に球状の総状花序をつける。
  花柄には短毛を密生する。

Fig.3 ナガエツルノゲイトウの花。(西宮市・武庫川河川敷 2007.8/9)
  花は径1.5cm程度の頭状花序につく。花弁は5個で白色。雄蕊は5個、花糸の基部が広がって合着し、雌蕊を取り囲む。

Fig.4 茎と葉。(西宮市・武庫川河川敷 2008.6/10)
  茎は無毛、平滑で光沢がある。
  葉は対生してつき、ごく短い葉柄を持ち、葉柄基部は横に広がって茎を抱く。

Fig.5 葉身。(西宮市・武庫川河川敷 2008.6/10)
  葉身は楕円形〜倒卵状披針形で鋭頭または鈍頭。低い細鋸歯の先には短毛が生える。

Fig.6 出芽。(西宮市・武庫川河川敷 2010.5/5)
  流水によって運ばれた砂中に深く埋もれた茎から、多数の新芽が発芽していた。
  多少埋もれても、ほとんど影響はないようである。

西宮市内での生育環境と生態
Fig.7 河岸を覆いつくすナガエツルノゲイトウ群落。(西宮市・武庫川河川敷 2007.8/9)
匍匐する茎が旺盛に伸びて発根し、繁殖する。このため本来生育していた在来種は、瞬く間に覆いつくされて消滅する。
水際のほとんどの部分がこのようにナガエツルノゲイトウやキシュウウスズメノヒエ、チクゴスズメノヒエに覆われており、
在来種では裸地にヤナギタデやスカシタゴボウ、イヌビエが見られる程度である。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
米倉浩司. 2001. ヒユ科ツルノゲイトウ属. 清水建美(編)『日本の帰化植物』 pp.68〜70. pls.20. 平凡社
清水矩宏・森田弘彦・廣田伸七. 2001. ナガエツルノゲイトウ. 『日本帰化植物写真図鑑』 62. 全国農村教育協会
橋本佳延・赤松弘治・丹羽英之, 2007 兵庫県の主要水系における外来植物の分布. 人と自然 17:117〜135. 兵庫県立人と自然の博物館

最終更新日:21st.Feb.2011

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