サクラタデ | Persicaria conspicua (Nakai) Nakaiex Ohki. | タデ科 イヌタデ属 |
湿生植物 |
Fig.1 (岡山県真庭市・河川脇の休耕田 2006.9/27) |
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Fig.2 (兵庫県丹波市・休耕田の畦 2010.11/1) 水田の畦、休耕田、用水路脇、農耕地周辺の湿地、溜池畔、河川敷などに生える多年草。 茎は直立し高さ50〜100cm、無毛。分枝する加減は地域や個体によって変異がある。 葉は披針形で長さ7〜13cm、やや厚味があり、両面に短毛が生え、先はとがる。 托葉鞘は筒形で、筒部の長さの1/2〜2/3長の縁毛があるほかは、無毛。 花序は穂状で長く、先は下垂し、花はシロバナサクラタデよりもややまばらにつく。 花被は5中裂する萼片からなり、淡紅色で腺点があり、長さ約5mm。雄蕊は通常8個、雌蕊は1個で柱頭は3岐。 花には長花柱花と短花柱花との2型があり、長花柱花では花柱が長く、雌蕊柱頭は花被の外に出る。 短花柱花では、花柱は雄蕊の花糸よりも短い。 果実は花被に包まれた痩果で、3稜形、長さ3〜3.5mm。黒色で光沢はない。 メモ : 従来、長花柱花と短花柱花はそれぞれ単一集団では受粉しないとされていたが、受粉するものも存在する。 サクラタデの白花のものをシロバナハナサクラタデ(P. conspicua f. albiflora )といい、シロバナサクラタデとは区別される。 近似種 : シロバナサクラタデ ■分布:本州、四国、九州 ・ 朝鮮半島 ■生育環境:水田とその周辺の湿地、溜池畔、河川敷など。 ■花期:9〜10月 ■西宮市内での分布:自生していそうなものだが、市内では確認できていない。 |
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↑Fig.3 サクラタデの穂状花序。(岡山県真庭市・棚田最奥の休耕田 2006.9/27) 花弁に見えるものは萼が花弁状に裂開したもの。 花被は5中裂し、淡いピンク味を帯びて美しい。雄蕊8本、雌蕊柱頭は3岐する。 花には、雌蕊柱頭の長い「長花柱花」と、雌蕊柱頭の短い「短花柱花」の2型があり 雌蕊は自分とは別のタイプの花の花粉を受粉しないと、結実しないとされていたが、結実しているものもある。 画像の花のタイプは短花柱花。 |
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↑Fig.4 長花柱花の個体。(兵庫県三田市・水田の畦 2007.10/7) 雄蕊よりも3本の柱頭が長く伸び、花被の外に出る。 |
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↑Fig.5 花序の拡大。(岡山県真庭市・河川脇の休耕田 2007.9/23) 小花柄は基部で苞に包まれ、苞の先端には、苞の約2/3長の縁毛を付ける。 苞の先からは、次に咲く蕾の先端が見えている。 |
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↑Fig.6 托葉鞘は筒状で、先端に托葉鞘のおよそ1/2〜2/3長の剛毛が生える。(岡山県真庭市・河川脇の休耕田 2007.9/23) シロバナサクラタデに見られるような伏せ毛はない。 |
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↑Fig.7 節と托葉鞘が赤い個体。(滋賀県高島市・内湖畔 2007.11/8) シロバナサクラタデのように、節が赤く染まるものもあり、節の色で区別することはできない。 |
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↑Fig.8 サクラタデはやや密な群生をつくることが多い。(岡山県真庭市・河川脇の休耕田 2007.9/23) 画像のものは、大河川の堤防に仕切られた、かつては後背湿地だったであろう放棄水田で群生したもの。 |
生育環境と生態 |
Fig.9 ほぼ純群落に近いサクラタデの群生。(岡山県真庭市・棚田最奥の休耕田 2006.9/27) |
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Fig.10 水の枯れた水路跡に群生するサクラタデ。(兵庫県神戸市・用水路 2010.10/20) 溜池跡から続く水路跡が湿地となり、サクラタデが埋め尽くして開花していた。 水路内にはマコモ、ヒメガマ、キシュウスズメノヒエ、カンガレイ、ヤノネグサ、ホソバノウナギツカミが生育し、水路脇ではオギノツメが 群生している。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 北川政夫, 1982. タデ科イヌタデ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本2 離弁花類』 p.19〜24. pl.16〜22. 平凡社 北村四郎, 2004 タデ科タデ属. 北村四郎・村田源『原色日本植物図鑑 草本編(U) 離弁花類』 p.299〜316. pl.65. 保育社 牧野富太郎, 1961 サクラタデ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 118. 北隆館 長田武正・長田喜美子, 1984 タデ科. 『野草図鑑 8 はこべの巻』 154〜160. 保育社 林辰雄. 2001. タデ科イヌタデ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 600〜616. 神奈川県立生命の星・地球博物館 小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. サクラタデ. 『六甲山地の植物誌』 109. (財)神戸市公園緑化協会 村田源. 2004. サクラタデ. 『近畿地方植物誌』 117. 大阪自然史センター 矢内正弘. 2009. サクラタデの雌雄性についての疑問. 兵庫植物誌研究会会報 79:2〜3 最終更新日:4th.Oct.2014 |