シロバナサクラタデ | Persicaria japonica (Meisn.) H. Gross | タデ科 イヌタデ属 |
湿生植物 |
Fig.1 (西宮市・河川敷 2007.10/18) |
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Fig.2 (西宮市・河川敷 2010.10/14) 水田の畦、休耕田、用水路脇、農耕地周辺の湿地、河川敷などの湿地や水辺に生える多年草。 根茎は地中に長く伸びて枝を分け、茎は直立して高さ30〜100cmになり、よく分枝する。 葉は披針形で長さ7〜16cm、やや厚味があり両面に短毛が生え、先はとがる。基部はくさび形で葉柄は短い。 托葉鞘は筒状で、長さ1〜2.5cm、筒部の長さの約1/2の縁毛があり、粗い伏せ毛が生える。節はやや膨らむ。 花序は穂状で長く、先は下垂する。花被は5深裂する萼片からなり、ほぼ白色で腺点があり、長さ3〜4mm。 雄蕊は通常8個、雌蕊は1個で柱頭は普通3岐、ときに2岐する。 花には長花柱花と短花柱花との2型があり、長花柱花では花柱が長く、雌蕊柱頭は花被の外に出る。 短花柱花では、花柱は雄蕊の花糸よりも短い。 果実は花被に包まれた痩果で、柱頭が3岐するものは3稜形となり、2岐するものはレンズ形となり、長さ2.5mm。黒色で光沢がある。 近似種 : サクラタデ ■分布:北海道、本州、四国、九州、沖縄 ・ 台湾、中国、朝鮮半島南部 ■生育環境:水田周辺の湿地や河川敷など。 ■花期:8〜11月 ■西宮市内での分布:北部の河川敷などで見られるが、あまり多くはない。 |
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↑Fig.3 開花したシロバナサクラタデ。(西宮市・河川敷 2007.10/14) 画像のものは3個ある花柱が、雄蕊よりも短いタイプで、短花柱花とされるもの。 短花柱花の場合、長花柱花の花粉を受粉しないと結実しないといわれているが、同じ花柱花同志でも結実することがある。 |
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↑Fig.4 花被の基部と花茎の拡大。(西宮市・河川敷 2007.10/14) 花被の基部は緑色を帯び、その上部にわずかに淡紅色を帯びる部分があって、花被上部ではほぼ白色。 花茎につく小花柄の苞の基部にはやや長い毛があって、苞のおよそ1/3長。 花期が終わっても小花柄は残り、大抵は3個程度見られるので、1つの苞からは時期をずらしておよそ3個の花がつくようだ。 苞の端からは、次に咲く花被の蕾の先が顔を出している。 |
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↑Fig.5 シロバナサクラタデの托葉鞘。(西宮市・河川敷 2007.10/18) 節は赤味を帯び、葉の柄の基部は托葉鞘となり茎を包む。托葉鞘の長さ1〜2.5cm、粗い伏せ毛があり縁には筒部の約1/2長の長毛が生える。 よく似たサクラタデの托葉鞘の表面には、粗い伏せ毛は見られない。 |
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↑Fig.6 シロバナサクラタデの葉。(西宮市・河川敷 2007.10/18) 長さ7〜16cmで、披針形。先端は鋭頭で、基部はくさび形。葉柄は短い。 |
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↑Fig.7 シロバナサクラタデの葉表(左)と葉裏(右)。(西宮市・河川敷 2007.10/18) 葉表面の中央脈には短い伏せ毛が1列に並ぶほか、表面にも葉縁付近に伏せ毛がまばらに散布する。 葉裏では中央脈上にやや長い伏せ毛を2列生じ、側脈上にもまばらに伏せ毛が生える。 葉縁にも毛が生える。 |
西宮市内での生育環境と生態 |
Fig.8 河川敷で小規模な群落をつくるシロバナサクラタデ。(西宮市・河川敷 2007.10/18) ススキやツルヨシが繁る河川敷に点々と小規模な群落をつくっていた。 どの群落も短花柱花で結実は見られないことから、もとは1つの個体であったものが、 氾濫によって根茎が各所に流れ着いて定着したものかもしれない。 |
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Fig.9 河川敷で見つかった大規模な群落。(西宮市・河川敷 2010.10/14) Fig.8より下流部に比較的規模の大きな群落があった。 ここでは隣接してシロネとサデクサのまとまった群落もある。周辺はキシュウスズメノヒエも多いが、ウシノシッペイなども見られた。 |
他地域での生育環境と生態 |
Fig.10 海岸に面した休耕田に群生するシロバナサクラタデ。(長崎県・休耕田 2009.10/24) 防波堤とその内側にある道に隔てられているが、台風が来れば海水を被りそうな場所にある休耕田に生育している。 実際そういうことが起こったのか隣りの水田は耕作半ばで放棄されており、稲穂は充実せず花序は垂れずに直立して、ほとんどの小穂はシイナであった。 同所的に生育しているのはイガガヤツリ、コバノウシノシッペイ、イヌビエ、カモノハシであり、これらの草本も多少海水を被っても平気のようで、 シロバナサクラタデもちゃんと結実していた。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 北川政夫, 1982. タデ科イヌタデ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本2 離弁花類』 p.19〜24. pl.16〜22. 平凡社 北村四郎, 2004 タデ科タデ属. 北村四郎・村田源『原色日本植物図鑑 草本編(U) 離弁花類』 p.299〜316. pl.65. 保育社 牧野富太郎, 1961 シロバナサクラタデ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 119. 北隆館 長田武正・長田喜美子, 1984 タデ科. 『野草図鑑 8 はこべの巻』 154〜160. 保育社 林辰雄. 2001. タデ科イヌタデ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 600〜616. 神奈川県立生命の星・地球博物館 小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. シロバナサクラタデ. 『六甲山地の植物誌』 110. (財)神戸市公園緑化協会 村田源. 2004. シロバナサクラタデ. 『近畿地方植物誌』 118. 大阪自然史センター 矢内正弘. 2009. サクラタデの雌雄性についての疑問. 兵庫植物誌研究会会報 79:2〜3 黒崎史平・高野温子・土屋和三 2001. シロバナサクラタデ. 兵庫県産維管束植物3 タデ科. 人と自然12:108. 兵庫県立・人と自然の博物館 最終更新日:4th.Oct.2014 |