セキショウ Acorus gramineus  Soland サトイモ科 ショウブ属
湿生植物
Fig.1 (兵庫県三田市・小河川 2008.5/13)

低地〜山地の渓流畔、小河川、水路、湧水地、山間の溜池畔に生育する多年草。セキショウ群集の標徴種。
根茎ははぼ円柱状、径5〜10mm、丈夫で硬く、香気を持ち多節、分枝して横走し群生をつくる。
葉は根茎の先端から2列に十数個はかま状に剣状葉を根生し、長さ20〜60cm、幅5〜10mm、特有の香気がある。
葉身基部は淡紅紫色を帯び、上方は両面ともに中央脈がなく平滑、光沢があり濃緑色、全縁、鋭尖頭である。
花期になると葉間から扁3稜形の花茎を出し、上方に肉穂花序をつける。苞葉は剣状で葉と同形、花序の基部から斜出する。
肉穂花序は狭円柱形、淡黄色で、長さ7〜11cm、径4〜8mm、表面に小花を密生し、下方から順次開花する。
小花は両性花で小さく、径約2mm。花被片6個、外花被片は扁円形、内花被片はやや方形、長さ約1mm、円頭。
雄蕊6個、葯は黄色。雌蕊1個、子房は六角扁円形で、高さ葯.2mm。結実は国内産のものでは稀。

セキショウにはアリスガワセキショウ(中国原産)、マサムネセキショウ(斑入り)など古来から園芸品種がある。
また、根茎は鎮静、健胃、腹痛、婦人病の薬用として利用される。
古くは「しょうぶ湯」はセキショウの葉を使ったが、ショウブの栽培が普及したためショウブにとって変わられた。
近似種 : ショウブ

■分布:本州、四国、九州 ・ 済州島、中国、インド、ベトナム
■生育環境:低地〜山地の渓流畔、小河川、水路、山間の溜池畔など。
■果実期:3〜5月
■西宮市内での分布:中・北部に普通。

Fig.2 開花中の群生。(西宮市・農道の溝 2009.4/5)
  春に目立たない淡黄緑色の 肉穂花序を多数つける。

Fig.3 セキショウの肉穂花序。(西宮市・細流脇 2009.4/5)
  花茎は扁3稜形で、葉と同形の剣状の苞葉がある。

Fig.4 花序の拡大。(西宮市・細流脇 2009.4/5)
  菱形の花が密に並ぶ。飛び出ている扁平な突起は雄蕊の花糸で、先には淡黄色の葯がついている。
  花被片は内外あわせて6個あるが、個別には見極めがたい。
  雄蕊は最初、外花被片の内側の3個が出たのち、内花被片内側の3個が出る。

Fig.5 花後の花序。(兵庫県三田市・小河川 2008.5/13)
  未熟な刮ハが形成されている。

Fig.6 露出した根茎。(西宮市・用水路脇 2009.3/7)
  根茎は長く伸びて分岐し、葉痕が沢山並んでいる。

Fig.7 植栽された斑入りのセキショウ。(西宮市・庭先 2008.4/6)
  古くから園芸種として栽培されてきた。

西宮市内での生育環境と生態
Fig.8 棚田の細流脇に生育するセキショウ。(西宮市・棚田 2010.4/13)
西宮市内の棚田の細流脇には必ず出現する常在種。自然度は高いが比較的人くさい環境に生育する印象がある。
細流脇にはセキショウとともにコバギボウシ、ヨシノアザミ、アキノタムラソウ、ヤブカンゾウ、キツネノボタン、ドクダミなどが見られた。

Fig.9 渓流畔に生育するセキショウ。(西宮市・渓流畔 2003.7/22)
安定した水量のある渓流畔に見られることが多い。
画像からはヤブマオ、イノコズチなどが見える。他にキショウブ、コアカソ、ヤマキツネノボタン、ツユクサなどが見られた。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
大橋広好, 1982. サトイモ科ショウブ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本T 単子葉類』 p.139. pls.122. 平凡社
北村四郎, 2004 サトイモ科ショウブ属. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.189〜190. pls.60. 保育社
牧野富太郎, 1961 セキショウ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 809. 北隆館
大滝末男, 1980 セキショウ. 大滝末男・石戸忠 『日本水生植物図鑑』 142〜143. 北隆館
角野康郎, 1994 サトイモ科. 『日本水草図鑑』 pp.69. pls.71. 文一統合出版
大場達之. 2001. ショウブ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 380〜382. 神奈川県立生命の星・地球博物館
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. セキショウ. 『六甲山地の植物誌』 239. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. セキショウ. 『近畿地方植物誌』 151. 大阪自然史センター
小林禧樹 2008. セキショウ. 兵庫県産維管束植物10 サトイモ科. 人と自然19:218. 兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:29th.July.2010

<<<戻る TOPページ