セトガヤ | Alopecurus japonicus Steud, | イネ科 スズメノテッポウ属 |
湿生植物 |
Fig.1 (西宮市・耕起前の水田 2011.5/16) |
||
Fig.2 (兵庫県三田市・休耕田 2008.5/22) 湿った草原や休耕田、水田の畦などに生育する1年草。 茎は直立し、高さ20〜60cm。葉は線形、扁平、粉緑色で、幅5〜8mm。 花序は小花を多数密生して円柱形となり、長さ3〜7cm、幅3〜8mm。 小穂は長さ5〜6mmの狭卵形で少し光沢があり、淡黄緑色で扁平、芒は少し太くて膝折れし、小穂よりも長く、長さ1〜1.2cm。 小花の葯は長さ約1mmで、淡黄色または白色。穎果が熟すと、小花ごと落ちる。 近年、外来種で近似種が増えている。それぞれの特徴はスズメノテッポウの項を参照。 近似種 : スズメノテッポウ、 オオスズメノテッポウ ■分布:本州、四国、九州 ・ 中国 ■生育環境:湿った草原、休耕田、水田の畦など。 ■果実期:5月 ■西宮市内での分布:市内では北部の水田で耕起前に生育している。 |
||
↑Fig.3 地上部標本。(西宮市・耕起前の水田 2011.5/16) ふつうスズメノテッポウよりも草丈は高くなる。基部付近はふつう赤紫色を帯びない。 |
||
↑Fig.4 セトガヤの花序。(兵庫県三田市・休耕田 2008.5/22) スズメノテッポウと比較するとかなり長く、太い。長いものでは7cmちかくなる。 |
||
↑Fig.5 花序の拡大。(兵庫県三田市・休耕田 2008.5/22) 芒のある小花が密集して柱状になっている。葯は白い。 |
||
↑Fig.6 小花。右は苞穎を開いたところ。(兵庫県三田市・休耕田 2008.5/22) 苞穎は膜質、同形、背面の竜骨には長白毛が生える。右画像では芒が膝折れしているのが、左の苞穎(第1苞穎)を通して透けてみえる。 芒は小花から5〜7mm飛び出し、芒全体の長さは1〜1.2cm。 小花の柄は短く2mm前後。 |
||
↑Fig.7 肥厚した茎下部の節。(兵庫県三田市・休耕田 2008.5/22) |
||
↑Fig.8 葉舌は長さ4mm前後。(兵庫県三田市・休耕田 2008.5/22) |
||
↑Fig.9 葉面には短毛が並び、少しざらつく。(兵庫県三田市・休耕田 2008.5/22) |
西宮市内での生育環境と生態 |
Fig.10 耕起前の水田に群生するセトガヤ。(西宮市・水田 2011.5/17) 田植え前、耕起前の短い期間でスズメノテッポウ、スズメノカタビラ、カズノコグサ、ムシクサなどとともに開花・結実する。 早稲の導入によって、セトガヤはあまり見られなくなっている。 |
||
Fig.11 休耕田に生育するするセトガヤ。(西宮市・休耕田 2011.5/17) 休耕田ではそこに生える種組成が多くなるため、競合種が増え、耕起前の水田に生育するものに比べて草丈が高くなる傾向があるようだ。 ここではアシやガマが繁る古い休耕田の畦近くで、帯状に背丈の高い群落をつくっていた。 同所的にスギナ、ヒメシダ、イグサ、ホソイ、アゼナルコ、カンガレイ、イヌホタルイ、カモジグサ、セリ、キツネノボタン、ゲンゲ、シロツメクサ、 オランダミミナグサ、ツユクサ、イボクサ、オオイヌノフグリなどが見られた。 |
他地域での生育環境と生態 |
Fig.12 休耕田に純群落をつくるセトガヤ。(兵庫県三田市・休耕田 2008.5/22) 休耕田の一画に密な群落をつくっていた。野生動物が通った跡が線状に残っていた。 |
||
【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 大井次三郎, 1982. イネ科スズメノテッポウ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本1 単子葉類』 p.126. pls.110. 平凡社 小山鐡夫, 2004 イネ科スズメノテッポウ属. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.354. pls.92. 保育社 牧野富太郎, 1961 セトガヤ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 734. 北隆館 長田武正・長田喜美子, 1984 セトガヤ・スズメノテッポウ. 『野草図鑑 3 すすきの巻』 pls.142. p.144. 保育社 藤本義昭. 1995. イネ科スズメノテッポウ属. 『兵庫県イネ科植物誌』 36〜40. 藤本植物研究所 佐藤恭子. 2001. スズメノテッポウ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 300〜301. 神奈川県立生命の星・地球博物館 桑原義晴, 2008 スズメノテッポウ属. 『日本イネ科植物図譜』 p.57〜60. pls.11. 全国農村教育協会 小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. セトガヤ. 『六甲山地の植物誌』 224. (財)神戸市公園緑化協会 村田源. 2004. セトガヤ. 『近畿地方植物誌』 169. 大阪自然史センター 藤本義昭・布施静香・黒崎史平・高橋晃・高野温子 2008. セトガヤ. 兵庫県産維管束植物10 イネ科. 人と自然19:164. 兵庫県立・人と自然の博物館 最終更新日:25th.May.2011 |