タニソバ Persicaria nepalensis  (Meisn) H.Gross タデ科 イヌタデ属
湿生植物
Fig.1 (兵庫県宍粟市・休耕田 2009.9/26)

山地の湿った林縁、湿地、谷間、休耕田、水田の畦、畑地などに生育する1年草。
茎は赤味を帯びることが多く、基部は倒伏し、よく分枝し、無毛、高さ10〜30cm。
葉には広い翼のある葉柄があって、葉柄の基部は茎を抱く。
葉は長さ1〜9cmで卵形、鋭尖頭、基部はくさび形で葉柄に沿って流れ、裏面のは腺点と毛がある。
総状花序は頭状に集合し、頂生または腋生する。萼は広い筒状で4裂し、緑色〜白色または紅色、長さ2.5〜3mm。
雄蕊は6〜7個。花柱は2裂。痩果はレンズ形で、両面が膨れ、小さな瘤状突起があり、光沢はなく、長さ1.5mm前後。


近似種 : ヤノネグサ

■分布:北海道、本州、四国、九州 ・ 朝鮮半島、中国〜北アフリカ
■生育環境:山地の湿った林縁、湿地、谷間、休耕田、畑地など。
■花期:7〜10月
■西宮市内での分布:市内では未見。

Fig.2 地上部の標本。(兵庫県宍粟市・休耕田 2009.9/26)
  茎は赤味を帯び、下部は地表を這うように伏せ、各葉腋から側枝を分けて斜上する。

Fig.3 総状花序は頭状に集まる。(兵庫県宍粟市・休耕田 2009.9/26)
  花序は茎に頂生するか、葉腋から出る。

Fig.4 萼筒は4裂する。(兵庫県宍粟市・休耕田 2009.9/26)
  萼筒は基部が緑色〜白色、先端部が紅色を帯びることが多く、光沢がある。
  雄蕊は6〜7個、花柱は2裂するが、ともに萼裂片(花被片)よりも短い。

Fig.5 痩果。(兵庫県宍粟市・休耕田 2009.9/26)
  痩果は熟しても宿存する花被片に包まれたまま落果する(左)。
  取り出した痩果(右)はレンズ状、両凸形。長さは1.8mmであった。

Fig.6 痩果表面。(兵庫県宍粟市・休耕田 2009.9/26)
  痩果の表面には細かな網目状の紋様がある。このため、肉眼やルーペだと光沢がないように見える。

Fig.7 裏面から見たタニソバの葉。(兵庫県宍粟市・休耕田 2009.9/26)
  葉は卵形で鋭尖頭。葉柄があり、その周りには広い翼があって、基部は茎を抱く。葉裏には腺点と毛がある。

Fig.8 茎上部につく葉。(兵庫県宍粟市・休耕田 2009.9/26)
  ふつう茎上部に向かうほど葉柄は短くなり、葉の基部が茎を抱いているように見えるようになる。
  葉の表面には腺点も毛もない。

Fig.9 葉裏の腺点と毛の様子。(兵庫県宍粟市・休耕田 2009.9/26)
  腺点は葉裏脈間にまばらに散布し、毛は脈上にまばらに生える。

Fig.10 タニソバの茎と托葉鞘。(兵庫県宍粟市・休耕田 2009.9/26)
  茎は無毛で平滑。托葉鞘の口部には毛がなく、筒部も無毛、薄膜質で欠損しやすい。
  基部に下向きの毛が見えるが、これは腺体の機能を失った腺毛である。

Fig.11 茎上部の托葉鞘の腺毛。(兵庫県宍粟市・休耕田 2009.9/26)
  花序に近い茎上部の托葉鞘の基部には、腺体が機能している腺毛がある。

生育環境と生態
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
牧野富太郎, 1961 タニソバ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 119. 北隆館
北川政夫, 1982. タデ科イヌタデ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本2 離弁花類』 p.19〜24. pls.16〜23. 平凡社
北村四郎, 2004 タニソバ. 北村四郎・村田源『原色日本植物図鑑 草本編(2) 離弁花類』 p.307. pls.66. 保育社
林辰雄. 2001. タデ科イヌタデ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 600〜617. 神奈川県立生命の星・地球博物館
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. タニソバ. 『六甲山地の植物誌』 110. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. タニソバ. 『近畿地方植物誌』 118. 大阪自然史センター
松岡成久・丸岡道行. 2010. 千種町山間部の水田に見られた水田雑草. 兵庫県植物誌研究会会報 82:4

最終更新日:4th.Mar.2010

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