ワレモコウ Sanguisorba officinalis  L. バラ科 ワレモコウ属
湿生植物
Fig.1 (西宮市・休耕田 2006.9/21)

Fig.2 (兵庫県姫路市・湿原 2012.10/15)

水田の畦や休耕田、耕作地周辺の湿った草原、溜池畔などに生育する多年草。
地下には太い根茎があり、茎は直立して上部はまばらに分枝し、高さ30〜100cm。
全体に毛は無く、根生葉は小葉5〜11個からなる奇数羽状複葉で、小葉の長さ2〜6cm、幅1〜2.5cm、小葉柄は6〜30mmでしばしば基部に小葉片をつける。
花序は穂状で長さ1〜2cmで直立し、花は暗紫色の萼片4個、雄蕊4個、雌蕊1個からなり、花弁はなく、花序の先から開く。
雄蕊4個は萼片よりも短い。

変種にウラゲワレモコウ(var. pilosella)があり、葉裏に開出する短毛があり、ワレモコウよりも稀に産する。
湿地に生育する同属のもにナガボノワレモコウS. tenuifolia)があり、花序は細長く、淡緑白色〜紅紫色で、小葉も細長い。
近似種 : ウラゲワレモコウ、ナガボノワレモコウ

■分布:北海道、本州、四国、九州 ・ 朝鮮半島、中国、満州、シベリア、ヨーロッパ
■生育環境:水田の畦や休耕田、耕作地周辺の湿った草原、湿地、溜池畔など。
■花期:7〜10月
■西宮市内での分布:中・北部の棚田周辺や山野に普通に見られる。

Fig.3 花茎。(神戸市北区・水田の畦 2008.11/11)
  花茎は直立し、まばらに分枝して枝先に総状花序を1個つける。

Fig.4 花序。(西宮市町・水田の畦 2006.9/22)
  総穂花序だが、花序の先から開花しはじめる遠心性(有限)花序である。
  ふつう、総穂花序は下から咲き上がる求心性(無限)花序で、ワレモコウやカライトソウは例外的である。

Fig.5 春先に出芽した個体。(西宮市塩瀬町名塩・棚田の畦 2007.4/8)

Fig.6 成長期のワレモコウ。(西宮市・崩壊地の湿地脇 2007.5/27)

Fig.7 根生葉。(自宅植栽 2008.7/20)
  奇数羽状複葉。頂小葉と側小葉は同形同大、側小葉は2〜5対付く。無毛。

Fig.8 複葉につく小葉。長楕円形で三角状の鋸歯が明瞭。(自宅植栽 2008.7/20)

Fig.9 根生葉の小葉柄基部についた小葉片。(自宅植栽 2008.7/20)
  根生葉にはこのような小葉片が付くことが多い。

西宮市内での生育環境と生態
Fig.10 棚田の斜面に群生するワレモコウ。(西宮市 2008.11/23)
花序は開花後も濃紅色をとどめ、リンドウやヤマラッキョウとともに秋遅くまで棚田を彩る。

Fig.11 棚田の斜面下部から萌芽した群落。(西宮市 2010.4/5)
棚田の斜面に生育するチガヤ、トダシバ、ススキなどのイネ科草本やネザサよりもいち早く萌芽して長い柄を持った葉を伸ばす。

他地域での生育環境と生態
Fig.12 溜池土堤の水際近くに生育するワレモコウ。(兵庫県丹波市 2009.9/10)
カキラン、リンドウなどとともに土堤下部に群生していた。溜池そばのワレモコウはアキアカネの良い休み場となっているようだ。

Fig.13 溜池土堤に生育するワレモコウ。(兵庫県姫路市 2011.10/2)
ヤマハッカが優占する溜池土堤でワレモコウが多数混生していた。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑や一般書籍を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
籾山泰一, 1982. バラ科ワレモコウ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本2 離弁花類』 p.183〜184. pls.175〜177. 平凡社
村田源, 2004 バラ科ワレモコウ属. 北村四郎・村田源『原色日本植物図鑑 草本編(2) 離弁花編』 p.124〜126. pl.30. 
牧野富太郎, 1961 ワレモコウ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 278. 北隆館
長田武正・長田喜美子, 1984 ワレモコウほか. 『野草図鑑 8 はこべの巻』 p.44〜45. pls.42〜43. 保育社
堀内洋. 2001. バラ科ワレモコウ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 840〜841. 神奈川県立生命の星・地球博物館
近藤浩文, 1982 甲山周辺の湿地植物. 『六甲の自然』 85〜87. 神戸新聞出版センター
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ワレモコウ. 『六甲山地の植物誌』 140. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. ワレモコウ. 『近畿地方植物誌』 93. 大阪自然史センター
福岡誠行・池田博・川崎哲也・黒崎史平・高野温子・鳴橋直弘 2002. ワレモコウ. 兵庫県産維管束植物4 バラ科. 人と自然13:155. 兵庫県立・人と自然の博物館
矢野悟道・竹中則夫. 1978. 甲山湿原(仁川地区)の植生調査並びに保全に関する報告書. 西宮市自然保護課

最終更新日:3rd.Mar.2014

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