ワサビ Wasabia japonica  (Miq.) Matsum. アブラナ科 ワサビ属
湿生〜抽水植物
Fig.1 (兵庫県篠山市・溜池跡湿地 2009.4/3)

Fig.2 (兵庫県丹波市・用水路脇 2009.4/29)

山地寄りの半日陰の渓流畔や湿地などに生育する多年草。細かい礫の多い土質を好み、抽水状態で生育することも多い。
根茎は太く、円柱形で節が近接し、葉痕が目立ち、多数の根がある。
葉は根生葉で、根茎の上部から多数叢生し、葉柄は長さ20〜50cm、葉身は軟質で薄く、表面は光沢があり、両面とも無毛、
心形で径8〜20cm、葉脈は明瞭、縁はやや波状、葉脈の末端には微小突起がある。
花茎は円筒形で直立し、高さ30〜50cm、上方に数個の互生葉をもち、総状花序をつける。
花は下方から順次開き、花柄は長さ約1cm、その先に花径約8mmの白色または淡黄白色の花をつける。
花弁は4個で長卵形、長さ5〜7mm、幅約2.5mm。雄蕊6個。雌蕊1個、長さ約6mm。
花後、花柄は約3cmにのび、やや湾曲した円柱状の長角果を下向きにつけ、長さ1〜2cm。
種子は長角果内に2列に並び、ふつう8個できる。種子は無胚乳で長楕円形、長さ約3.5mm。

ワサビは古くから半自然状態で栽培されており、多くの栽培品種がある。
近似種:ユリワサビ、 オオユリワサビ
■分布:本州、四国、九州 ・ 樺太
■生育環境:山地寄りの渓流畔、湧水のみられる山間の半日陰の湿地。
■果実期:4〜5月
■西宮市内での分布:市内では確認できていない。ときに六甲山系の渓流に見られることがあるが、逸出の可能性が高い。

Fig.3 開花したワサビ。(兵庫県香美町・用水路脇 2008.4/27)
  花径はおよそ8mmで白色または淡黄白色。受粉の終わった花の花柱は褐色を帯び、蜜の抽出も終わり生殖活動はしていない。
  しかし、生殖活動が終わっても、後続の花のために花弁はすぐには落とさず、花弁は訪花昆虫を導くためのガイドとなる。

Fig.4 果実。(兵庫県篠山市・湿地細流脇 2008.5/16)
  状態のよいものでは種子が8個入った長角果をつけるが、日陰の湿地のものは種子数は少なく、長角果も短い。
  長角果は下向きにやや湾曲する。

Fig.5 種子。(兵庫県篠山市・湿地細流脇 2008.5/16)
  Fig.3 の長角果内につくられた種子。ふつう種子の長さは3.5mmとされるが、それよりも小さい。
  周辺には実生苗も見られるので、このような種子でも発芽するのだろう。

Fig.6 葉身。(兵庫県篠山市・林内の湧水付近 2008.4/13)
  葉身は光沢があって薄く、心形で、葉脈は凹んで目立つ。
  近年はスーパーなどで「葉ワサビ」として、ワサビの葉が販売され、この姿も馴染み深くなった。

生育環境と生態
Fig.7 細流脇に生育するワサビ。(兵庫県篠山市 2008.3/25)
湿地化した溜池跡の流れ込み部分の細流脇に生育していた。

Fig.8 用水路脇に生育するワサビ。(兵庫県丹波市 2011.4/29)
谷間の最深部にある棚田の用水路脇に群生していた。
用水路脇にはニリンソウも群生し、シシウド、キクザキイチゲ、カテンソウ、ラショウモンカズラが生育し、
棚田の土手にはアマナやキバナノアマナも見られた。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
清水建美, 1982. アブラナ科ワサビ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本2 離弁花類』 p.132〜133. pl.129. 平凡社
北村四郎・村田源, 2004. アブラナ科ワサビ属. 『原色日本植物図鑑 草本編(2) 離弁花類』 p.176〜177. pl.42. 保育社
大滝末男, 1980. ワサビ. 大滝末男・石戸忠 『日本水生植物図鑑』 76〜77. 北隆館
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ワサビ. 『六甲山地の植物誌』 130. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. ワサビ. 『近畿地方植物誌』 103. 大阪自然史センター
黒崎史平 2001. ワサビ. 兵庫県産維管束植物3 アブラナ科. 人と自然12:161. 兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:11th.Jan.2012

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