ユリワサビ Wasabia tenuis  (Miq.) Matsum.
  山地・渓流畔・林床の植物 アブラナ科 ワサビ属
Fig.1 (兵庫県丹波市・社寺の林縁 2011.3/29)

Fig.2 (兵庫県丹波市・社寺の林縁 2014.4/3)

低山〜山地の渓流畔や湿った林床に生育する多年草。
根茎は細くて短く、葉を根生する。茎は細く、無毛、後に倒伏する。葉はワサビより小さく、卵形〜円形で、基部は心形で、有柄。
花序はまばらな総状花序で、花は白色。各小花柄の基部には葉の変化した苞があり、縁はやや深く切れ込む。
長角果は円柱形で、開出するか下を向き、長さ10〜15mm。種子は1列に並ぶ。
冬期は常緑越冬し、葉柄が枯れ残ってユリの鱗茎状とはならない。

オオユリワサビW. okinosimense)は長くユリワサビと混同されていた種で、ユリワサビよりも草体は大きく、冬期には地上部は枯れて、
葉柄基部がユリの鱗茎に似た形となって残る。北海道〜九州の主に日本海側に生育する。
近縁種 : オオユリワサビ、 ワサビ

■分布:本州、四国、九州
■生育環境:低山〜山地の渓流畔や湿った林床など。
■花期:3〜5月

Fig.3 根生葉。(兵庫県篠山市・谷筋の林床 2011.2/6)
  根生葉は越冬し、翌春の花時にも残る。大きなものはほぼ円形で、基部は心形となる。
  縁には波状に近い低い鈍鋸歯が並び、長い柄をもつ。

Fig.4 花茎。(兵庫県丹波市・社寺の林縁 2011.3/29)
  花茎は開花当初は直立するが、後に倒伏する。花序はまばらな総状花序。

Fig.5 倒伏する花茎と花序。(兵庫県丹波市・社寺の林縁 2011.3/29)
  花序の小花柄の基部には葉が変化した苞がつき、鋸歯の切れ込みは深くなる。

Fig.6 花。(兵庫県丹波市・社寺の林縁 2011.3/29)
  花は白色で、ワサビよりも小さく、アブラナ科に共通する十字花。子房や萼片などは無毛。

Fig.7 果実期。(兵庫県丹波市・社寺の林縁 2011.4/29)
  花後、花茎は伸びて倒伏し、紫褐色を帯びた角果を開出または下向きにつける。

Fig.8 常緑越冬するユリワサビ。(兵庫県篠山市・谷筋の林床 2011.2/6)
  ユリワサビはオオユリワサビとは異なり、冬期の常緑越冬する。

生育環境と生態
Fig.9 岩壁の岩棚に生育するユリワサビ。(兵庫県丹波市・岩上の岩棚 2011.3/29)
社寺裏手にある半日陰〜日陰となる岩壁の腐植質の堆積した岩棚に、ユリワサビが点々と生育していた。
周辺にはタチツボスミレ、イチリンソウ、ユキワリイチゲ、ジュウモンジシダなどが生育している。

Fig.10 渓流畔の植林地林下に生育するユリワサビ。(兵庫県篠山市・渓流畔の林床 2009.3/26)
ユリワサビは腐植質に富んだ湿った場所を好む傾向があるようで、腐植土の少ない場所ではあまり見かけない。
渓流畔にはタチネコノメソウ、ニッコウネコノメ、ヤマネコノメソウ、ヒメレンゲ、ミズタビラコなどが生育している。


最終更新日:12th.Aug.2014

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