イヌショウマ | Cimicifuga japonica (Thunb.) Sprengel | ||
山地・林床・林縁の植物 |
キンポウゲ科 サラシナショウマ属 |
Fig.1 (兵庫県篠山市・植林地の林床 2015.9/14) |
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Fig.2 (兵庫県篠山市・クリ園跡 2015.9/22) 山地のやや湿った林縁、林内などに生育する多年草。 根生葉はふつう2回3出、ときに1回3出複葉で、小葉はやや硬くて洋紙質、円心形で長さ6〜10cm、3〜5中〜浅裂する。 裂片は鈍頭〜鋭尖頭、不ぞろいな鋭い鋸歯がある。両面の脈上には短い毛がある。 花茎状に伸びた茎は高さ60〜90cmになり、単一または下部で分枝した穂状花序をつける。 茎葉は退化して苞状になり、花序には短毛を密生する。 花は白色。萼片は広楕円形で、長さ4〜5mm。花弁は長楕円形、基部は細く、先はしばしば2浅裂し、長さ4〜5mm。 雄蕊は白色、葯は円形または広楕円形で、花糸の先は少し広がり、長さ7〜8mm。雌蕊は1個、ときに2個。 袋果は長さ5〜6mm、ごく短い柄があり、無毛、花柱は約1.5mm。種子には鱗片状のひだがある。 サラシナショウマ(C. simplex)は花に花柄があり、雌蕊は2〜8個で有柄。本州〜九州。 オオバショウマ(C. acerina)は葉の表面は辺縁部に短い毛があるほか無毛。小葉は長さ7〜20cm。本州〜九州。 近縁種 : サラシナショウマ、 オオバショウマ、 ルイヨウショウマ ■分布:本州(関東地方〜近畿地方) ■生育環境:山地のやや湿った林縁、林内など。 ■花期:8〜9月 |
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↑Fig.3 7月初旬の草体。(兵庫県篠山市・雑木林の林床 2011.7/9) |
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↑Fig.4 根生葉。(兵庫県篠山市・雑木林の林床 2011.7/9) 根生葉はふつう2回3出、ときに1回3出複葉で、小葉はやや硬くて洋紙質、円心形で長さ6〜10cm、3〜5中〜浅裂する。 裂片は鈍頭〜鋭尖頭、不ぞろいな鋭い鋸歯がある。 |
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↑Fig.5 表面脈上には短毛が生える。(兵庫県篠山市・雑木林の林床 2011.7/9) |
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↑Fig.6 裏面脈上にも短毛がややまばらに生える。(兵庫県篠山市・雑木林の林床 2011.7/9) |
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↑Fig.7 花序を上げはじめた個体。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2014.7/31) 茎上部につく葉は3出複葉となり、小葉は裂けない。 |
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↑Fig.8 開花期のイヌショウマ。(兵庫県篠山市・林縁 2015.9/14) 花茎状に伸びた茎は高さ60〜90cmになり、単一または下部で分枝した穂状花序をつける。 |
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↑Fig.9 花序。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2015.9/14) 成熟した大型個体は多くの花茎を分枝し、円錐状に長く発達する。 |
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↑Fig.10 花序中軸。(兵庫県篠山市・クリ園跡 2015.9/14) 中軸には斜上する短毛が密生し、白味を帯びて見える。 |
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↑Fig.11 花序には白色の花がやや密につき、花柄はほとんどない。(兵庫県篠山市・クリ園跡 2015.9/22) |
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↑Fig.12 開き始めたつぼみと萼片。(兵庫県篠山市・クリ園跡 2015.9/22) 開き始めたつぼみの紅色を帯びた部分が萼片で、開花間もなくして脱落する。萼片は広楕円形で、長さ4〜5mm。 |
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↑Fig.13 花の拡大。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2015.9/14) 花は多数の雄蕊がよく目立つ。花弁は雄蕊より短く、長さ4〜5mm、長楕円形、基部は細く、先はしばしば2浅裂し、早落性。 雄蕊は白色、葯は円形または広楕円形で、花糸の先は少し広がり、長さ7〜8mm。雌蕊は1個、ときに2個。 |
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↑Fig.14 訪花したメスグロヒョウモン。(兵庫県篠山市・クリ園跡 2015.9/14) |
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↑Fig.15 訪花したキイロスズメバチ。(兵庫県篠山市・クリ園跡 2015.9/14) |
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↑Fig.16 果実期のイヌショウマ。(兵庫県篠山市・クリ園跡 2015.11/20) |
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↑Fig.17 果実。(兵庫県篠山市・クリ園跡 2015.11/20) 果実は袋果、ごく短い柄があり、長楕円状の円柱形、表面には横の隆条があり、熟すと先端から2裂する。 |
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↑Fig.18 種子。(兵庫県篠山市・クリ園跡 2015.11/20) 種子は稜のある半月形〜卵形、茶褐色、長さ約2mm。 |
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↑Fig.19 種子の拡大。(兵庫県篠山市・クリ園跡 2015.11/20) 種子表面には断続する鱗片状のひだがある。 |
生育環境と生態 |
Fig.20 クリ園跡に群生するイヌショウマ。(兵庫県篠山市・クリ園跡 2015.9/14) 老齢化して立ち枯れたクリの木が立ち並ぶ林床の一画に、密な群生が見られた。 山麓北面で適度な湿り気があり、同所的にヤマカモジグサ、キツネガヤ、トボシガラ、アシボソ、ヌカボシソウ、ショウジョウバカマ、ウバユリ、 ヤマジノホトトギス、カテンソウ、ナガバノヤノネグサ、ヤマネコノメソウ、ナガバノタチツボスミレ、ニョイスミレ、オオタチツボスミレ、ミヤマハコベ、 ミヤマキケマン、ドクダミ、マツカゼソウ、クサノオウ、ミヤマカタバミ、ヤブニンジン、ウマノミツバ、オトギリソウ、クサイチゴ、アカショウマ、ダイコンソウ、 ヤマルリソウ、ツルカノコソウ、カキドオシ、オカタツナミソウ、ツルニガクサ、アキノタムラソウ、アキチョウジ、キクバヤマボクチ、ヨシノアザミ、シシガシラ ワラビなどが生育している。 |
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Fig.21 植林地の林床に点在するイヌショウマ。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2015.9/22) 2年前はほとんど日射の届かない林床だったが、下枝が枝打ちされて林床が明るくなり、個体数が大幅に増加した。 ここでは同所的にチャノキ低木、フジ低木、ミヤマカンスゲ、ニシノホンモンジスゲ、チヂミザサ、ササクサ、ヌカボシソウ、ウバユリ、ヤマジノホトトギス、 ムロウテンナンショウ、コアカソ、カテンソウ、サンショウソウ、ヤマミズ、ムカゴイラクサ、ミズヒキ、セリバオウレン、ヤマネコノメソウ、チャルメルソウ、 ナガバノタチツボスミレ、シハイスミレ、ミヤマハコベ、ミヤマキケマン、タケニグサ、ミヤマカタバミ、マツカゼソウ、ヤマアイ、ヤブニンジン、ミヤマチドメ、 ツリフネソウ、ミヤマフユイチゴ、クサイチゴ、サワオトギリ、イノコヅチ、ヤマルリソウ、ツルカノコソウ、ミヤマタゴボウ、ハダカホオズキ、ヤマホロシ、ヘクソカズラ、 ナガバハエドクソウ、ヤマトウバナ、オカタツナミソウ、ツルニガクサ、アキチョウジ、ムラサキニガナ、シュウブンソウ、ベニシダ、トウゴクシダ、ジュウモンジシダ、 アイノコクマワラビ、オニヒカゲワラビ、ミゾシダ、ヤマイヌワラビ、ヒロハイヌワラビ、ホソバイヌワラビなどが生育している。 |