オオヒナノウスツボ Scrophularia kakudensis  Franch.
  草地・林縁の植物 ゴマノハグサ科 ゴマノハグサ属
Fig.1 (兵庫県篠山市・荒野状の草地 2016.8/6)

日当たりよい草地や林縁に生育する多年草。数本の根が肥大して紡錘状となる。
茎は角ばった4稜があり、直立して高さ1mほどとなる。
葉は対生し、やや厚く、長卵形〜卵形で、鋭頭、多数の先のとがった鋸歯があり、長さ6〜10cm、幅3〜5cm。
花は茎頂のよく分枝する円錐花序につき、まばらに多くの花を開く。小花柄は太く腺毛が生え、長さ7〜11mm。
萼は5片に深裂し、裂片は卵形でとがる。花冠は暗紅紫色、長さ8〜9mm。
仮雄蕊は扇状に横に広がる。刮ハは卵形で長さ6〜9mm。

ヒナノウスツボS. duplicatoserrata)は茎や葉が軟弱。花は円錐花序にまばらにつき、長さ7〜9mm。花序軸に腺毛が多い。山中の半日陰〜日陰に生育する。
サツキヒナノウスツボS. musashiensis)は4〜5月に開花し、花序は葉腋から出て1〜3個の花をつける。花冠の長さ7〜9mm。
ゴマノハグサS. buergeriana)は花序が穂状に見え、花は黄緑色で、長さ5〜6mm。刮ハは長さ約5mmで、卵形。
近縁種 : ヒナノウスツボ、 サツキヒナノウスツボ、 ゴマノハグサ

■分布:北海道南部、本州、四国、九州 ・ 朝鮮半島
■生育環境:日当たりよい草地や林縁など。
■花期:8〜9月

Fig.2 茎。(兵庫県篠山市・荒野状の草地 2016.8/6)
  茎は強壮で、4稜があり、まばらに毛が生えていた。葉は対生する。

Fig.3 葉。(兵庫県篠山市・荒野状の草地 2016.8/6)
  葉はやや厚い洋紙質、長卵形〜卵形で、鋭頭、多数の先のとがった鋸歯があり、長さ6〜10cm、幅3〜5cm。

Fig.4 葉の拡大。(兵庫県篠山市・荒野状の草地 2016.8/6)
  左は葉表、右は葉裏。葉表は無毛。葉裏は脈上にまばらに毛が見られた。

Fig.5 花序。(兵庫県篠山市・荒野状の草地 2016.8/6)
  円錐花序で、花序枝の分枝が多く、花はやや混みあってつく。

Fig.6 花序枝や花柄には腺毛が多いが、花序軸はほぼ無毛。(兵庫県篠山市・荒野状の草地 2016.8/6)

Fig.7 萼は5片に深裂し、裂片は卵形でとがる。(兵庫県篠山市・荒野状の草地 2016.8/6)

Fig.8 花冠。(兵庫県篠山市・荒野状の草地 2016.8/6)
  花冠は唇形、暗紅紫色、長さ8〜9mm、上唇は2裂、下唇は3裂し中央裂片は開出〜反曲する。
  雄蕊4個で葯は横に広い楕円形。上唇基部に仮雄蕊が1個つき、扇状に横に広がる。

Fig.9 花冠の断面。(兵庫県篠山市・荒野状の草地 2016.8/6)
  花糸には腺毛が生えていた。

Fig.10 果実形成期。(兵庫県篠山市・荒野状の草地 2016.8/24)

Fig.11 刮ハ。(兵庫県篠山市・荒野状の草地 2015.9/14)
  刮ハは卵形で長さ6〜9mm。

Fig.12 種子。(兵庫県篠山市・荒野状の草地 2015.9/14)
  種子は楕円形、黒色、長さ0.8〜1mm、背面(背軸側)には数本の太い隆条がある。

Fig.13 種子の拡大。(兵庫県篠山市・荒野状の草地 2015.9/14)
  種子表面には太い隆条とは別に、6角状の細かい格子模様が見られた。

生育環境と生態
Fig.14 荒地状の草地に群生するオオヒナノウスツボ。(兵庫県篠山市・荒野状の草地 2016.8/6)
3年前の豪雨で土砂が流出して溜池の1/5が埋まって荒地状となり、2年前からオオヒナノウスツボが群生しはじめた。
シカの被害の多い地域だが、オオヒナノウスツボはシカの忌避植物らしく旺盛に茂っている。
シカの被植によってコントロールされた植生が見られ、ワラビ、ニシノホンモンジスゲ、イグサ、カラスザンショウとジャケツイバラの幼木、マツカゼソウ、
ヨウシュヤマゴボウ、タケニグサ、ニガクサ、ダンドボロギク、ベニバナボロギクなどが生育していた。


最終更新日:5th.Sep.2016

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