オオバノハチジョウシダ Pteris terminalis  Wall. ex J.Agardh
  山地・林縁・林床のシダ イノモトソウ科 イノモトソウ属
Fig.1 (兵庫県篠山市・渓流畔 2014.7/25)

Fig.2 (岡山県真庭市・林床 2013.8/3)

山地の林縁、林床などに生育する常緑性シダ。
根茎は太く、短く、匍匐するか斜上し、塊状となり、線形の鱗片をまばらにつける。
葉柄は太く、長さ40〜100cm、暗紫色〜わら色で、基部は暗色。
葉身はやや2型で、大型となり、2回羽状全裂、葉柄とほぼ同長、幅も1mに達し、長楕円状卵形、厚めの紙質。
羽片は羽状に全裂し、幅は15cmに達することがあり、ソーラスのつかない葉縁には鋸歯がある。
小羽片は線状三角形、鎌状となり、先は鋭頭〜鋭尖頭。小羽軸の基部表面に突起がある。
ソーラスは葉縁にそってつき、葉縁が反転してソーラスを包む。染色体数はn=29,2n=58の2倍体。

オオバノアマクサシダ(var. simplicior)は少し小型。側羽片の内側には小羽片をつけないか、不規則に少数がつく。関東南部〜九州。
最近の研究ではオオバノアマクサシダはオオバノハチジョウシダの3倍型無融合生殖型の幼形成熟個体だと考えられている。
ヒカゲアマクサシダP. tokioi)は葉柄が暗紫色〜赤褐色で光沢があり、羽片は羽状深裂し、薄い草質。三重、九州南部。
近縁種 : オオバノアマクサシダ、 ヒカゲアマクサシダ、 アイノコハチジョウシダ、 ハチジョウシダ、 アマクサシダ

■分布:本州、四国、九州 ・ 朝鮮半島、中国中南部以南の東アジア、オセアニア
■生育環境:山地の林床や林縁など。

Fig.3 葉身上部。(兵庫県丹波市・植林地の林床 2013.5/31)
  葉身の最上部は頂羽片となる。

Fig.4 最下羽片。(兵庫県丹波市・渓流畔 2013.1/24)
  最下羽片の下向き第1小羽片は羽状となる。

Fig.5 羽片表面の拡大。(兵庫県丹波市・渓流畔 2013.1/24)
  小羽軸の基部表面に突起(黄矢印)がある。

Fig.6 羽片裏面の拡大。(兵庫県丹波市・渓流畔 2013.1/24)
  ソーラスは葉縁にそってつき、葉縁が反転してソーラスを包む。ソーラスのつかない葉縁には鋸歯がある。

Fig.7 フィドルヘッド。(兵庫県丹波市・林道脇 2013.4/3)
  緑色で、線形の鱗片がまばらにつく。食用となり、アクやクセは全くない。

Fig.8 展葉したての葉。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2014.5/27)

生育環境と生態
Fig.9 渓流畔の斜面に生育するオオバノハチジョウシダ。(兵庫県篠山市・渓流畔 2014.7/25)
オオバノハチジョウシダは渓流畔の林床など、湿った場所でよく見られる。
ここでは半日陰〜日陰の渓流畔でイワガネソウ、ジュウモンジシダ、ベニシダ、ヤブソテツ、イノデ、イノデモドキ、サイゴクイノデ、
キヨスミヒメワラビ、コバノイシカグマ、ヌリワラビ、ミゾシダ、ヤマイヌワラビ、ホソバイヌワラビなどのシダ類、マツカゼソウ、
ミズタビラコ、アキチョウジ、ニシノホンモンジスゲ、ミヤマカンスゲ、ナキリスゲ、チャノキ、ヤマアジサイなどとともに生育していた。

Fig.10 植林地内の細流脇に生育するオオバノハチジョウシダ。(岡山県真庭市・植林地の林床 2013.8/3)
植林地林床の細流が流れる多湿な場所で多くのシダ類とともに混生している。
ここでは同所的にリョウメンシダ、ジュウモンジシダ、イワガネゼンマイ、イノデ、イノデモドキ、サカゲイノデ、クサソテツ、ミゾシダ、シケシダ、
シケチシダ、ゲジゲジシダ、ハリガネワラビ、ヒロハイヌワラビ、キヨタキシダなどが生育していた。

Fig.11 クリ園の多湿地に生育するオオバノハチジョウ。(兵庫県丹波市・クリ園 2013.1/24)
植林地に接したクリ園の多湿な場所に生育している。画像のクリの木は多湿なあまり枯死している。
同所的にセントウソウ、チドメグサ、サワハコベ、ネコノメソウ、ヤマネコノメソウ、キツネノボタン、ミズタビラコ、ニョイスミレ、オオバタネツケバナ、
コジュズスゲ、ニシノホンモンジスゲ、ヤブタビラコ、ミヤマフユイチゴ、チャノキ、ヤマヤブソテツ、イノデ、リョウメンシダなどが生育していた。


最終更新日:3rd.Aug.2014

<<<戻る TOPページ