オサシダ Blechnum amabile  Makino
  里山・着生シダ シシガシラ科 ヒリュウシダ属
Fig.1 (西宮市・岩壁 2011.3/5)
山地の日陰〜半日陰の湿った岩上などに着生する常緑性シダ。
根茎は匍匐し、岩の隙間などに沿って多少長く伸びて葉をまばらにつけるか、節間が短くなって叢生するものもあり、鱗片をつける。
鱗片は褐色で膜質、卵状披針形〜広披針形、全縁、長さ2〜7mm。葉は2形。
栄養葉の葉柄は短く、長さ2〜10cm、基部近くまで耳状に小さくなった羽片をつける。
胞子葉の葉柄は長さ3〜12cm、淡褐色でふつう紅紫色を帯びる。
葉身は栄養葉で披針形、胞子葉ではやや幅が狭くて長く、狭披針形、ともに先端はやや急に狭くなり、尾状に伸び長さ約20cm。
幅は栄養葉で約5cm、胞子葉では約3cmとなることが多い。
羽片表面の中肋には溝がなく、裏面も隆起せず、両面ともに目立たない。
葉質はやや厚いが、よく似たシシガシラよりも薄い。

近縁種 : シシガシラ、 ミヤマシシガシラ

■分布:本州、四国(高知県)、九州
■生育環境:山地の日陰〜半日陰の湿った岩上や岩壁など。

Fig.2 全草標本。(西宮市・岩壁 2011.3/5)
  根茎は匍匐し、岩の隙間などに沿って多少長く伸びる。葉柄は短いが明瞭である。葉身は単羽状。

Fig.3 根茎。(西宮市・岩壁 2011.3/5)
  根茎は岩の割れ目や岩脈に沿って匍匐し、まばらに葉を叢生する。

Fig.4 オヴァーハングした岩壁に生育するオサシダの根茎。(西宮市・岩壁 2011.3/5)
  根茎は重力の影響から岩肌から離れつつも、前方に伸び、根茎から短い間隔を置いて葉を出している。

Fig.5 葉柄と基部の鱗片。(西宮市・岩壁 2011.3/5)
  葉柄は赤褐色を帯び、大部分無毛平滑で、基部付近に鱗片が密集してつく。

Fig.6 鱗片。(西宮市・岩壁 2011.3/5)
  鱗片は褐色で膜質、卵状披針形〜広披針形、全縁、長さ2〜7mm。
  シシガシラの鱗片は黒褐色の線形〜線状披針形で明瞭な区別点となる。

Fig.7 鱗片の比較。(西宮市・岩壁 2011.3/5)
  左はシシガシラ、右はオサシダ。
  シシガシラの鱗片は黒褐色の線形〜線状披針形で、細く長い。
  オサシダの鱗片基部は幅広く、卵状披針形〜広披針形で、短い。

Fig.8 羽片。(西宮市・岩壁 2011.3/5)
  羽片の中肋は溝状とならず、先は鈍形。葉質はやや厚い。

Fig.9 羽片裏面。(西宮市・岩壁 2011.3/5)
  羽片裏面でも中肋は隆起せず不明瞭である。

Fig.10 胞子葉をつけた個体。(西宮市・岩壁 2011.3/5)
  胞子葉は秋から冬にかけて成熟し、冬から春にかけて胞子を飛散させる。
  このような胞子散布は葉が2形あるものにしばしば見られる。

Fig.11 早春の胞子葉。(西宮市・岩壁 2011.3/5)
  胞子葉は枯れ切っているが、胞子散布の全盛期で、触れると大量の胞子を散布する。
  よく似たシシガシラの胞子葉よりもかなり幅が狭く、細長い印象を受ける。

生育環境と生態
Fig.12 岩壁に群生するオサシダ。(西宮市・岩壁 2011.3/5)
やや標高の高い風化があまり進んでいない堅牢な花崗岩の岩壁にオサシダがほぼ純群落にちかい群落を形成していた。
西宮市内では日陰でひんやりとした湿った岩壁で群生していることが多い。

Fig.13 渓流の岩壁に生育するオサシダ。(西宮市・岩壁 2011.3/5)
オサシダは混生する場合、この谷間ではシダ類ではヤマイタチシダ、イヌシダ、ベニシダの仲間と混生することが多い。
ここではヤマイタチシダ、コチョウ(シロバナ)ショウジョウバカマ、シロバナウンゼンなどとともに生育していた。


最終更新日:6th.Mar.2011

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