シシガシラ | Blechnum niponicum (Kunze) Makino | ||
里山・路傍斜面のシダ | シシガシラ科 ヒリュウシダ属 |
Fig.1 (西宮市・落葉樹林下 2011.2/2) |
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Fig.1 (兵庫県三田市・農道脇石垣 2011.7/23) 丘陵〜山地の道端斜面、切り通し、落葉紅葉樹林下などに生育する普通な常緑性シダ。 根茎は塊状で斜上する。葉は束生し、放射状に開出し、長さ30〜40cm、胞子葉と栄養葉の2型がある。 葉柄基部には褐色〜黒褐色、線形で、先が細くとがった鱗片を密生し、中軸上にまばらにつく。 栄養葉は倒披針形で先はとがり、下部はしだいに狭くなり、葉柄はごく短い。 葉身は1回(単)羽状複葉、羽片は線形で全縁、無柄、鋭頭、多数の羽片が相接して開出し、基部は前側で多少広くなって中軸に合着する。 羽片の中脈は表面に浅い溝があり、裏面ではかるく隆起し、全体が緑色の革質であるが、ややもろい。 胞子葉は栄養葉よりも高く立ち、羽片はずっと狭く、まばらにつく。 胞子嚢群は胞子葉羽片の裏面につき、羽片の両縁が巻き込んでそれを包む。 似たものにオサシダ(B. amabile)があるが、根茎は横走し、羽片は鈍頭で中脈には溝がなく、鱗片は披針形〜卵状披針形で淡褐色〜褐色。 兵庫県下ではシシガシラよりも生育場所が限られ、やや標高の高い渓流畔の岩壁や、樹林下に出現する。 また日本海側の高標高地では、ミヤマシシガシラ(B. castameum)があり、葉柄や中軸は暗紫褐色〜赤褐色、鱗片は暗紫褐色、線形〜披針形で細くとがる。 近縁種 : オサシダ、 ミヤマシシガシラ ■分布:日本全土 ■生育環境:丘陵〜山地の道端斜面、切り通し、落葉紅葉樹林下など。 |
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↑Fig.2 地上部標本。(西宮市・落葉樹林下 2011.2/2) 栄養葉(左)は倒披針形で、鋭頭。胞子葉(右)の羽片は短く、羽片の間に隙間が開く。 |
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↑Fig.3 葉柄基部の鱗片。(西宮市・落葉樹林下 2011.2/2) 鱗片は褐色〜黒褐色、線形、先は細くとがる。 |
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↑Fig.4 羽片。(西宮市・落葉樹林下 2011.2/2) 羽片は相接してつき、線形、全縁、鋭頭、羽片の中脈には溝がある。 |
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↑Fig.5 羽片裏面。(西宮市・落葉樹林下 2011.2/2) 中脈は裏面では、かるく隆起する。葉身中軸や中脈上には線形の鱗片がごくまばらにつく。 |
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↑Fig.6 胞子葉の羽片。(西宮市・落葉樹林下 2011.2/2) 胞子葉の羽片は両縁が裏側に巻き、胞子嚢群を包み込む。下側の隙間から、胞子放出後の胞子嚢が多数見える。 |
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↑Fig.7 展葉しつつある若い葉。(兵庫県篠山市・林縁斜面 2013.5/13) 日当たり良い場所に生育するものは、ときに展葉時に強く赤味を帯びることがある。 中心からあがっている2本の細いフィドルヘッドは胞子葉のもの。 |
生育環境と生態 |
Fig.8 雑木林の林縁斜面に生育するシシガシラ。(西宮市・林縁斜面 2011.2/2) 西宮市内の丘陵部や低山の明るい林縁では、必ずといってよいほどシシガシラが生育している。 ここは谷間の林縁で、生育環境がよいためか、かなり大きな個体が点在している場所である。 シシガシラは湿った場所にも、乾いた場所にも沢山見られ、ベニシダ、ホラシノブ、タチシノブ、フモトシダ、ヒメカナワラビ、ジュウモンジシダ、 イノデ、オクマワラビ、コモチシダ、ミツデウラボシ、トキワトラノオ、オオバノイノモトソウなど多くのシダ類が見られる場所である。 |
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Fig.9 溜池土堤に生育するシシガシラ。(兵庫県篠山市・溜池土堤 2010.5/29) シシガシラは谷池の草刈りの行き届いた溜池土堤に生育していることも多い。 ここでは刈り込まれたネザサ群落中に、ヤマツツジ、モチツツジ、イヌツゲ、ケアクシバ、ナツハゼなどの短く刈り込まれた低木が点在し、 シシガシラとともにタチシオデ、ノギラン、ノアザミ、アキノキリンソウ、ツリガネニンジン、リンドウ、ススキ、シケシダなどが見られた。 |
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Fig.10 農道脇の人家の石垣に生育するシシガシラ。(兵庫県三田市・農道脇石垣 2011.7/23) シシガシラは適応範囲が広く、乾いた土崖、照葉樹林の林床、湿地周辺の多湿の草地など、あらゆる環境に出現する。 ここでは、里山山麓の農道脇のやや乾いた石垣の間にゼンマイ、シケシダ、ノキシノブ、ヒカゲスゲ、メアオスゲ、タチツボスミレ、セリバオウレン、ミツバアケビ、 コアカソ、シシウド、ニガナ、ツリガネニンジン、アキノタムラソウ、ヤブコウジ、テイカカズラ、イヌツゲなどとともに、好ましい里山の景観を作り出していた。 |