オチフジ Meehania montis-koyae  Ohwi
  山地・林床・林縁の植物
  環境省絶滅危惧U類(VU)・兵庫県RDB Aランク種
シソ科 ラショウモンカズラ属
Fig.1 (兵庫県播磨地方・谷筋の林縁 2015.5/3)

山地の林縁や林床の崖地や岩屑地斜面に生育する多年草。
茎は斜上し、高さ10〜20cm、地下に細い地下茎があり、カメムシを潰したような異臭がある。
葉は3角状心形で長さ幅ともに2〜4cm、両面に微細毛があり、鈍頭、鈍鋸歯があり、基部は心形。葉柄は葉身より長い。
葉の表面にはしばしば褐色の模様が出ることがある。
萼は筒状の鐘形で長さ約10mm、まばらに軟毛がある。花冠は淡紫色で、長さ4cm、喉部には開出毛はない。

近縁種 : ラショウモンカズラ

■分布:本州(近畿地方)
■生育環境:山地の林縁や林床の崖地や岩屑地斜面など。
■花期:4〜5月

Fig.2 草体。(兵庫県播磨地方・谷筋の林縁 2015.5/3)
  茎は斜上し、高さ10〜20cmで、草丈はラショウモンカズラよりも低く、茎につく花の数も少ない。

Fig.3 茎。(兵庫県播磨地方・谷筋の林縁 2015.5/3)
  茎は赤紫色を帯び、葉柄とともに表面には肉眼では分かりにくい微細な毛がある。

Fig.4 葉。(兵庫県播磨地方・谷筋の林縁 2014.5/8)
  葉は3角状心形で長さ幅ともに2〜4cm、両面に微細毛があり、ビロードのような感触がある。
  葉先は鈍頭、鈍鋸歯があり、基部は心形。葉柄は葉身より長い。

Fig.5 葉の表面にはしばしば褐色の模様が出ることがある。(兵庫県播磨地方・谷筋の岩屑地斜面 2014.5/8)

Fig.6 葉裏。(兵庫県播磨地方・谷筋の岩屑地斜面 2015.5/3)
  葉裏は強く紫色を帯び、腺点を散布し、微細毛が生える。

Fig.7 開花したオチフジ。(兵庫県播磨地方・谷筋の岩屑地斜面 2015.5/3)
  急斜面に大きな淡紫色の花を咲かせる姿は、オチフジという名にふさわしい。
  花は葉腋に1花ずつ付き、1本の茎に2〜8花が付いて、下方から開花する。

Fig.8 花冠。(兵庫県播磨地方・谷筋の岩屑地斜面 2015.5/3)
  上唇は短く、2裂する。下唇は3裂し、中央裂片は大きく、前方に突き出してやや下垂して、先は2浅裂する。
  花は開花終盤で痛んでいたが、ハネカクシの仲間が訪花していた。5月に入ると気温が上がるためか、訪花昆虫が増えるという。

Fig.9 下から見た花冠。(兵庫県播磨地方・谷筋の岩屑地斜面 2015.5/3)
  花冠喉部にはラショウモンカズラに見られるような開出毛はない。完全雄蕊4個は、斜上して上唇の下側に並ぶ。花柱は2裂して上下に反る。

Fig.10 横から見た花。(兵庫県播磨地方・谷筋の林縁 2015.5/3)
  花冠の筒部上半の背面はいちじるしくふくらみ、毛が生えている。
  萼は筒状鐘形、15脈があり、まばらに軟毛が生え、先は斜めに5浅裂する。

Fig.11 岩礫地に生育する若い集団。(兵庫県播磨地方・岩礫地 2015.5/3)

Fig.12 オチフジ(左)とラショウモンカズラ(右)。(兵庫県播磨地方 2015.5/3 ・ 兵庫県養父市 2015.4/29)
  オチフジとラショウモンカズラは花の付き方が見かけ上異なり、オチフジには花冠下唇に濃紫色の斑紋はない。
  細かな点ではラショウモンカズラの花冠喉部には開出毛があるが、オチフジにはない。オチフジの葉はビロード様の感触がある。

生育環境と生態
Fig.13 谷筋の急斜面に生育するオチフジ。(兵庫県播磨地方・谷筋の岩屑地斜面 2015.5/3)
岩屑が折り重なった斜面下部の腐植土と砂礫が混じったような場所にオチフジの成熟した集団が開花していた。
この集団より下では小さな個体が散在しており、おそらくこの集団の種子から広がっているものだろう。
この集団は、この谷間でも最も遅く開花する集団で、他の集団はほとんど開花し終わっていた。開花が遅いため受粉の機会が増えているのかもしれない。
周辺は半裸地状で被植は少なく、ジュウモンジシダ、イノデモドキ、ヒロハイヌワラビ、チヂミザサ、ユリワサビ、ナガバノタチツボスミレ、イヌツゲの幼木、
ウリハダカエデの幼木などが見られる程度だった。

Fig.14 岩上に生育する集団。(兵庫県播磨地方・谷筋の岩上 2014.5/8)
すでに開花の終わった集団で、谷筋斜面に緑色岩の基岩が露出して岩崖状となった上の腐植土に群生している。
ここでは樹木が被る日陰地になっており、岩の壁面にはツルデンダやダイモンジソウが見られ、同様な条件の岩上でスズシロソウが生育していた。


最終更新日:6th.May.2015

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