ウンヌケ Eulalia speciosa  (Debeaux) O.Kuntze
  里山・草地・はげ山の植物 
  環境省準絶滅危惧(NT)・兵庫県RDB Bランク種
イネ科 ウンヌケ属
Fig.1 (兵庫県播磨・溜池土堤 2012.10/15)

Fig.2 (兵庫県播磨・溜池土堤 2013.9/24)

Fig.3 (兵庫県播磨・棚田の土手 2011.12/1)

丘陵〜低山、里山の草地、はげ山、溜池土堤に生育する多年草。
高さ1m内外で、茎の基部は黄褐色の毛が密生する葉鞘に包まれるためやや太く見える。
葉は線形で、基部をのぞきほとんど毛はなく、両面ともにざらつく。
花序の総は10本以下で、直立して長さ12〜15cm、密に毛があって黄褐色を帯び、ときに紫色を帯びる。
総は熟してもあまり展開せず、もろくて折れやすい。
小穂は披針形で長さ約5mm、第4頴には長さ約2cmの芒がある。

近縁種にウンヌケモドキE. quadrinervis)があり、ウンヌケとよく似た環境に生育する。
基部の葉鞘に毛はなく赤褐色を帯び、葉面には軟毛が生える。
【メモ】 兵庫県下では非常に限られた地域に偏って生育しおり、近縁種のウンヌケモドキよりも自生地は少ない。
近縁種 : ウンヌケモドキ

■分布:本州(東海、近畿地方)、四国、九州 ・ 中国・インド
■生育環境:丘陵〜低山、里山の草地、はげ山、溜池土堤など。
■花期:9〜10月

Fig.4 地上部標本。(兵庫県播磨・はげ山 2011.11/28)

Fig.5 基部の葉鞘。(兵庫県播磨・溜池土堤 2011.12/1)
  基部の葉鞘には軟毛が密生する。
  軟毛はウンヌケモドキとの区別点となるが、小穂が結実する頃には脱落しているものも多いので注意を要する。

Fig.6 葉。(兵庫県播磨・はげ山 2011.11/28)
  葉の縁は少し内側に巻くため、ススキの葉よりも幅狭く見え、ススキの葉よりも短く、直立する花茎が目立つ。

Fig.7 葉表。(兵庫県播磨・溜池土堤 2011.12/1)
  縁は少し内側に巻き、裏面よりも色が薄い。表面には小刺が並びざらつく。

Fig.8 葉裏。(兵庫県播磨・溜池土堤 2011.12/1)
  中央脈が膨出し、表面には小刺が並びざらつく。

Fig.9 花序。(兵庫県播磨・はげ山 2011.11/28)
  花序の総はあまり展開せず、直立し、もろく折れやすい。

Fig.10 総の拡大。(兵庫県播磨・はげ山 2011.11/28)
  総には有柄と無柄の小穂が1組になって多数つく。

Fig.11 組になった小穂。(兵庫県播磨・はげ山 2011.11/28)
  左が無柄小穂、右が有柄小穂。無柄小穂は雄花で、有柄小穂は両性花。ともに屈曲する長い芒を持つ。

Fig.12 小穂の拡大。(兵庫県播磨・はげ山 2011.11/28)
  苞頴は革質で硬く、長い毛が生える。

Fig.13 開花期の花序。(兵庫県播磨・溜池土堤 2013.9/24)
  開花中の花序は開く。

Fig.14 開花中の花序枝。(兵庫県播磨・里山の草地 2011.11/28)
  葯はふつう3個、茶褐色。柱頭は紅色を帯びる。

生育環境と生態
Fig.15 里山の草地に生育するウンヌケ。(兵庫県播磨・里山の草地 2013.9/24)
里山の棚田にある草地でウンヌケが多数生育していた。開花中で開いている花序が多い。
同所的にノイバラ、ヤマハギ、ツクシハギ、チガヤ、ススキ、ウンウケモドキ、ユウスゲ、カモノハシ、ノギラン、ネコハギ、メドハギ、オミナエシ、
ワレモコウ、サワヒヨドリ、セイタカアワダチソウなどが生育している。
ここではウンヌケに比べて、ススキやウンヌケモドキの個体数は少ない。

Fig.16 はげ山の草地に生育するウンヌケ。(兵庫県播磨・はげ山 2011.11/28)
解りづらい画像だが、はげ山の山足にある草地でウンヌケが多数生育していた。
流紋岩質凝灰岩からなるはげ山で土壌も少ないため貧栄養な環境となり、周辺は灌木をともなった草原が保たれている。
コナラ、アカマツ、リョウブ、サワグルミ、ヤマナラシ、イブキシモツケ、テリハノイバラ、ナツハゼ、イヌツゲ、ガンピ、サルトリイバラ、ツクシハギ、
ヤマウルシ、ツツジ類の灌木や小低木が生育し、矮小化したネザサの優占する草地や小湿地ではコシダ、ヤマラッキョウ、ツルボ、ノギラン、ソクシンラン、
ノグサ、イガクサ、イトハナビテンツキ、ヒカゲスゲ、ススキ、チガヤ、トダシバ、オガルカヤ、ワレモコウ、コマツナギ、イシモチソウ、トウカイコモウセンゴケ、
コガンピ、ツリガネニンジン、リンドウ、オオヤマジソ、アキノキリンソウ、リュウノウギクなどが生育し、はげ山特有の景観を形成している。

Fig.17 溜池土堤に群生するウンヌケ。(兵庫県播磨・溜池土堤 2011.12/1)
年に2度程度草刈りされる溜池土堤の上部にウンヌケの群生が見られた。
花序が白く開いて目立つのはススキで、花茎を多数直立させ、花序が開いていないものは全てウンヌケである。
溜池土堤ではこのようにススキと混生する例が多く、ススキと間違えやすいが、ススキよりもより草体が貧相に見えるのが特徴である。
ここでは他にネザサが優占する草原環境に、ワラビ、ユウスゲ、トダシバ、メリケンカルカヤ、メガルカヤ、オガルカヤ、ノイバラ、ワレモコウ、
ヘクソカズラ、ツクシハギ、メドハギ、コガンピ、キキョウ、ツリガネニンジン、リンドウ、アキノタムラソウ、オケラ、セイタカアワダチソウ、
アキノキリンソウ、ノアザミ、キセルアザミ、オミナエシ、ヤマハッカなどが生育している。


最終更新日:26th.July.2014

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