ウスゲタマブキ | Parasenecio farfarifolius (Siebold et Zucc.) H.Koyama var. farfarifolius |
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山地・林床の植物 | キク科 コウモリソウ属 |
Fig.1 (兵庫県香美町・社寺林 2015.10/30) |
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Fig.2 (神戸市・細流脇の岩上 2015.10/8) 山地の適湿の木陰に生育する多年草。茎は高さ50〜140cm、若いときにはくも毛がある。 葉は長柄ががあり、葉身はやや薄く3角状心形、幅13〜21cm、表面に粗い毛を散生し、裏面に薄くくも毛がある。 葉腋にはムカゴをつくる。頭花は狭い円錐花序に多数つく。 総苞は長さ9〜10mm、総苞片は5個で白色。小花は5〜6個、花冠ははじめ黄色で、まもなく褐色となり、長さ8mm。 痩果は無毛、長さ4〜5mm。冠毛は白色、長さ約5mm。 変種タマブキ(var. bulbifera)は葉裏に密にくも毛がある。北海道〜本州(東北・関東地方)。 変種ミヤマコウモリソウ(var. acerina)は茎が細く、葉は掌状に切れ込む。本州(中部・近畿地方)〜九州。 コモチミミコウモリ(C. auriculatus var. bulbifer)は葉が腎形で、葉柄に翼があり、基部は耳状となって茎を抱く。北海道。 近縁種 : ミヤマコウモリソウ、 タマブキ、 カニコウモリ、 オオカニコウモリ、 コウモリソウ、 モミジガサ ■分布:北海道、本州(関東地方以西)、四国、九州 ■生育環境:山地の適湿の木陰など。 ■花期:8〜10月 |
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↑Fig.3 茎下方の葉。(兵庫県香美町・社寺林 2015.10/30) 葉は長柄ががあり、葉身はやや薄く3角状心形、幅13〜21cm、表面に粗い毛を散生し、裏面に薄くくも毛がある。 開花期には虫の食害を受けてぼろぼろになっている葉が多い。 |
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↑Fig.4 葉腋にムカゴをつくる。(兵庫県香美町・社寺林 2015.10/30) この頃の茎にはすでにくも毛は脱落して見られない。 |
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↑Fig.5 頭花は狭い円錐花序に多数つく。(兵庫県香美町・社寺林 2015.10/30) |
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↑Fig.6 花序軸。(兵庫県香美町・社寺林 2015.10/30) 花序軸や枝には褐色を帯びた薄いくも毛がある。 |
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↑Fig.7 頭花。(兵庫県香美町・社寺林 2015.10/30) 総苞は長さ9〜10mm、総苞片は5個で白色。小花は5〜6個、花冠ははじめ黄色で、まもなく褐色となり、長さ8mm。 時期的な理由か時間的な理由が原因によるものか、黄色の小花は見られず、全て褐色となっていた。 また結実期の花序があったが、シイナばかりで結実したものが見られなかった。 結実率が低いためムカゴをつくるようになったのだろうか。さらに観察を続けたい。 |
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↑Fig.8 開花初期の黄色の小花。(兵庫県香美町・社寺林 2015.9/17) 開花の早い時期に同じ場所で見たものは黄色の小花をつけていた。やはり時期的理由によるものか。 |
生育環境と生態 |
Fig.9 社寺林内に生育するウスゲタマブキ。(兵庫県香美町・社寺林 2015.10/30) 渓流沿いにある高湿度の社寺林内にウスゲタマブキが多数生育していた。 シカの食害の及ばない場所であるため植生豊かで、ハバビロスゲ、ミヤマカンスゲ、ミヤマジュズスゲ、ヌカボシソウ、ヤマジノホトトギス、 シオデ、チゴユリ、ホウチャクソウ、ユキザサ、キクバドコロ、サンインネコノメ、ウワバミソウ、ヤマミズ、ヤマアジサイ、クサアジサイ、 トチバニンジン、ウド、オオバタネツケバナ、ヒロハコンロンソウ、ユリワサビ、サンインスミレサイシン、オオタチツボスミレ、タニタデ、 ミズタビラコ、ミゾホオズキ、モミジカラスウリ、オオカニコウモリ、モミジガサ、オタカラコウ、リョウメンシダ、ジュウモンジシダ、 ナンゴクナライシダ、キヨタキシダ、ヒロハイヌワラビ、ヤマイヌワラビ、ホソバイヌワラビなどが生育していた。 |
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Fig.10 風化の激しい沢の岩場に生育するウスゲタマブキ。(神戸市・谷筋の岩上 2015.10/8) 六甲山系では花崗岩の風化の進んだ急峻な谷筋上部で、ウスゲタマブキの生育が見られる。 崩壊地であるため被植は少なく、岩場ではイワタバコやヤマイタチシダが、土砂の溜まった場所ではハクモウイノデ、ナガバモミジイチゴなどが見られた。 この沢ではさらに遡ると変種であるミヤマコウモリソウも見られた。 |