ハコネシケチシダ | Cornopteris christenseniana (Koidz.) Tagawa | ||
山地・林床のシダ 兵庫県RDB Cランク種 |
イワデンダ科 シケチシダ属 |
Fig.1 (兵庫県香美町・渓流畔 2016.10/20) |
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Fig.2 (兵庫県篠山市・社寺林の林床 2013.5/22) 山地の湿った林床などに生育する夏緑性シダ。 根茎は横走し、鱗片がある。鱗片は楕円状披針形、長さ約7mm、幅約3mm、全縁、汚褐色。 葉柄は長さ約60cm、淡緑色で、わずかに紫紅色を帯びることがあり、全体にやや密に鱗片があり、基部はふくらみ、辺縁に突起がある。 葉身は三角状からほぼ楕円形、鋭尖頭、長さ30〜60cm、幅25〜45cm、3回羽状に深裂する。葉質は薄い草質。 下部の羽片は広披針形、短柄があり、鋭尖頭。小羽片は無柄で、基部は流れて羽軸の狭い翼となる。 裂片は長楕円形、幅2.5〜4mm、辺縁は浅い鈍鋸歯があり、短い細胞が並んだにかわ質。 小脈は単生。各軸の裏面には淡褐色で全縁の鱗片があり、ふつう単細胞性の毛がやや密にある。 胞子嚢群は長楕円形〜線形、裂片の中肋と辺縁の中間生、苞膜はない。染色体数はn=120の6倍体で、減数分裂が不規則となることがある。 イッポンワラビとシケチシダの雑種に由来する説があり、そのためか形態的に変異幅が見られる。 イッポンワラビ(C. crenulatoserrulata)は小羽片は無柄または短柄があり、小脈は単生または分枝し、ソーラスは円形〜楕円形。 シケチシダ(C. decurrentialata)は葉身が2回羽状中裂〜複生する。 近縁種 : シケチシダ、 イッポンワラビ ■分布:本州、四国、九州 ・ 済州島 ■生育環境:山地の湿った林床など。 |
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↑Fig.3 地上部標本。(兵庫県篠山市・社寺林の林床 2016.7/14) 葉身は三角状からほぼ楕円形、鋭尖頭、3回羽状に深裂する。葉質は薄い草質。 |
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↑Fig.4 葉柄基部の鱗片。(兵庫県篠山市・社寺林の林床 2016.7/14) 鱗片は楕円状披針形、長さ約7mm、幅約3mm、全縁、汚褐色で、まばらに付いていた。 |
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↑Fig.5 下方の羽片。(兵庫県篠山市・社寺林の林床 2016.7/14) 下部の羽片は広披針形、短柄があり、鋭尖頭。 |
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↑Fig.6 羽軸と小羽片。(兵庫県篠山市・社寺林の林床 2016.7/14) 小羽片は無柄で、基部は流れて羽軸の狭い翼となる。裂片は長楕円形、辺縁は浅い鈍鋸歯がある。 |
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↑Fig.7 羽軸が中軸に流れ込む箇所には肉質の突起がある。(兵庫県篠山市・社寺林の林床 2016.7/14) |
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↑Fig.8 裂片の小脈は単生する。(兵庫県篠山市・社寺林の林床 2016.7/14) |
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↑Fig.9 ソーラス。(兵庫県篠山市・社寺林の林床 2016.8/24) ソーラスには苞膜がなく、楕円形〜線形、裂片の中肋と辺縁の中間に付く。 |
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↑Fig.10 フィドルヘッド。(兵庫県篠山市・社寺林の林床 2013.4/26) 軸は紅紫色〜紫褐色を強く帯び、葉面部は淡緑色、線形の鱗片がまばらについている。 |
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↑Fig.11 新葉を展開する集団。(兵庫県篠山市・社寺林の林床 2013.4/26) |
生育環境と生態 |
Fig.12 社寺林の林床に群生するハコネシケチシダ。(兵庫県篠山市・社寺林の林床 2016.8/24) ハコネシケチシダは林床に群生するシダだが、近年はシカの食害により減少しており、シカの食害の及ばない社寺林に残っていることがある。 スギが植林された林は間伐もなされてよく管理されており、6月頃に林床の下刈りがなされるが、ハコネシケチシダはすぐに新葉を出して広げる。 同所的にベニシダ、トウゴクシダ、キノクニベニシダ、ヤマヤブソテツ、イノデ、サイゴクイノデ、ナンゴクナライシダ、ホソバナライシダ、 クマワラビ、イワガネゼンマイ、ヒロハイヌワラビ、ヤマイヌワラビ、ホソバイヌワラビ、ミドリヒメワラビ、オオハナワラビ、アカハナワラビなどの シダ類のほか、チャノキ、アオキ、イヌツゲ、コクサギなどの幼木、ミヤマフユイチゴ、ヤブコウジ、ジャノヒゲ、ヤブラン、ホウチャクソウ、 ヤブミョウガ、ミヤマカンスゲ、タマツリスゲ、ナキリスゲ、サイハイラン、ギンラン、シャガ、タチシオデ、オオマムシグサ、ムロウテンナンショウ ツルアリドオシ、ヤエムグラ、スイカズラ、テイカカズラ、セリバオウレン、ニリンソウ、トチバニンジン、ヤブニンジン、ミヤマカタバミ、ハグロソウ、 オカタツナミソウ、ミヤマヨメナなどが生育している。 |
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Fig.13 高原の林縁のササ原に生育するハコネシケチシダ。(兵庫県香美町・高原の林縁 2016.11/17) 高原地帯の落葉広葉樹林とススキ原の林縁部分に、シカの食害をまぬがれた個体が点々と生育していた。 ハコネシケチシダはシカが入り込みにくいチシマザサやイタヤカエデの低木の周辺に残っており、周辺にはトガリバイヌワラビ、ヤマイヌワラビ、 食害を受けたヤマソテツ、ミヤマジュズスゲ、グレーンスゲ、イタドリ、ヤマミゾソバ、ミヤマタニソバ、ヤブニンジン、ハスノハイチゴ、 ニホンカイタチツボスミレ、サンインスミレサイシン、サワオトギリ、フタリシズカ、ヤエムグラ、モミジガサなどが生育していた。 |