ハマベノギク Aster arenarius  (Kitam.) Nemoto
  海岸の植物 キク科 シオン属
Fig.1 (兵庫県豊岡市・海岸の岩場 2016.10/27)

Fig.2 (京都府丹後地方・砂浜 2016.10/27)

日本海側の海岸の砂地や岩場などに生育する越年草または多年草。
茎は基部からよく分枝して、側枝は放射状に広がって地表を這い、先は立ち上がって頭花を付ける。
根生葉はさじ形で、長さ3〜6cm、幅10〜15mm、先は円く、基部はしだいに狭くなって、葉柄は1.5〜3cm、
やや全縁かときに歯牙を散生し、縁には毛があり両面に毛が散生するかほとんど無毛で、厚く、開花時には枯れる。
茎葉は多数あり、さじ形、長さ2〜2.5cm、幅8〜9mm、縁に毛があり、厚い。
頭花は分枝した小枝の先に1個つき、径3.5cm内外。
総苞は長さ7mm、総苞片は狭いさじ形で長さ6〜7mm、鈍頭または鋭頭、厚くて無毛。筒状花は長さ5mm。
痩果は扁平な倒卵形、長さ3.5〜4mm、伏毛がある。舌状花の冠毛は長さ0.5mm。筒状花の冠毛は褐色を帯び、長さ3〜4mm。

近縁種 : ヤマジノギク、 ヤナギノギク

■分布:本州(富山県以西)、九州 の日本海沿岸
■生育環境:海岸の砂地や岩場など。
■花期:7〜10月

Fig.3 根茎。(兵庫県豊岡市・海岸の岩場 2016.10/27)
  根茎は肥厚する。開花時には茎下方の葉は枯れ落ちる。

Fig.4 根生葉。(京都府丹後地方・砂浜 2016.11/30)
  根生葉はさじ形で、先は円く、基部はしだいに狭くなって葉柄となり、やや全縁かときに歯牙を散生し、厚く、開花時には枯れる。
  基本的に越年草であるため、1年目の冬は画像のようなロゼットを形成して越冬する。

Fig.5 葉縁に歯牙を散生した根生葉。(京都府丹後地方・砂浜 2016.11/30)

Fig.6 主茎を持つ大型個体。(京都府丹後地方・砂浜 2016.10/27)
  茎は基部からよく分枝して、側枝は放射状に広がって地表を這い、先は立ち上がって頭花を付ける。
  砂浜で大きく成長した個体は主茎を持ち、翌年も花茎を上げるが、Fig.3のような小型の個体は主茎らしきものが無いことが多い。

Fig.7 主茎の葉。(京都府丹後地方・砂浜 2016.10/27)
  主茎の葉は根生葉に似てさじ形で、円頭、基部は葉柄となり、縁には毛があり両面に毛が散生するかほとんど無毛で、厚い。

Fig.8 側枝はよく分枝する。(京都府丹後地方・砂浜 2016.10/27)

Fig.9 側枝と葉。(京都府丹後地方・砂浜 2016.10/27)
  側枝は無毛。側枝上部の葉はへら形で平滑、全縁で、無柄。

Fig.10 頭花。(兵庫県豊岡市・海岸の岩場 2016.10/27)
  開花は7〜10月。頭花は分枝した小枝の先に1個つき、淡青紫色、径3.5cm内外。

Fig.11 総苞。(京都府丹後地方・砂浜 2016.11/30)
  総苞は長さ7mm、総苞片は狭いさじ形で長さ6〜7mm、鈍頭または鋭頭、厚くて無毛。

Fig.12 開花中の頭花。(京都府丹後地方・砂浜 2016.10/27)

Fig.13 頭花の拡大。(京都府丹後地方・砂浜 2016.10/27)
  筒状花は黄色、長さ5mm、先は5中裂し、裂片はほぼ同長、両性花で捻性がある。舌状花は雌性で捻性がある。

Fig.14 結実した頭花。(京都府丹後地方・砂浜 2016.10/27)

Fig.15 冠毛と痩果。(京都府丹後地方・砂浜 2016.10/27)
  上段は舌状花、下段は筒状花のもの。冠毛はやや堅く、斜開する。舌状花の冠毛は長さ0.5mm内外。筒状花の冠毛は3〜4mm。

Fig.16 舌状花の痩果。(京都府丹後地方・砂浜 2016.10/27)
  痩果は扁平な倒卵形、淡褐色〜褐色、長さ3.5〜4mm、白い伏毛がある。

Fig.17 筒状花の痩果。(京都府丹後地方・砂浜 2016.10/27)
  筒状花の痩果は舌状花の痩果よりも幅広く、両側の稜はやや翼状となる。

Fig.18 筒状花の冠毛。(京都府丹後地方・砂浜 2016.10/27)

生育環境と生態
Fig.19 海岸の岩場に生育するハマベノギク。(兵庫県豊岡市・海岸の岩場 2016.10/27)
兵庫県の日本海側には広い砂丘が少なく、ハマベノギクは海岸の風衡草地や岩上で見かけることが多い。
ここではトベラ、マルバグミ、イヌビワ、イボタノキ、キンギンボクなどからなる低木林と、海岸の間の岩場にワカサハマギクとともに点在している。
同所的にオニヤブソテツ、アズマガヤ、ハマエノコロ、イソアオスゲ、ツルボ、ヤブカンゾウ、オオタチツボスミレ、カワラナデシコ、
アキカラマツ、ネコハギ、メノマンネングサ、テリハノイバラ、ナワシロイチゴ、センニンソウ、ハマサオトメカズラ、ハマボッス、
ツリガネニンジンなどが見られた。

Fig.20 砂丘に生育するハマベノギク。(京都府丹後地方・砂浜 2016.10/27)
砂浜では海岸よりも1段高くなった場所に他の海浜植物とともに生育している。
ここでは画像に見られるオニシバ、コウボウムギ、カワラヨモギのほか、ハイネズ、ハマゴウ、ケカモノハシ、ビロードテンツキ、ハマボウフウ、
ハマハタザオ、アナマスミレ、ウンラン、ハマヒルガオ、ハマニガナ、ネコノシタなどとともに生育していた。


最終更新日:6th.Dec.2016

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