ヒキオコシ Isodon japonicus  (Burm.f.) H.Hara
  里山・林縁・草地の植物 シソ科 ヤマハッカ属
Fig.1 (神戸市・棚田の土手 2015.9/29)

Fig.1 (神戸市・棚田の土手 2015.9/29)

やや乾いた草地や棚田の土手などに生育する多年草。
茎は地下茎から数本直立し4角形で、高さ50〜120cm、密に下向きの細毛がある。
葉は広卵形で長さ6〜15cm、幅3.5〜8cm、縁には鋸歯があり、先はとがり、基部は広いくさび形に狭まって葉柄の翼に流れる。
茎上部は多数分枝し、全体で大きな頂生の円錐花序をつくり、多数の花をつける。
萼はほぼ均等に5裂して密に細毛があり、灰白色を帯び、長さ約2mm、果時には長さ3〜3.5mmとなる。花冠は淡青紫色で上唇には紫点がある。
雄蕊は4本で、うち2本は少し長く、ともに花外に突き出る。長雄蕊・短花柱花と短雄蕊・長花柱花の2型がある。
分果は楕円形、長さ約1.2mmで粒状の腺がある。

【メモ】 苦味成分が苦味健医薬として乾燥して用いられた。
近縁種 : クロバナヒキオコシ、 サンインヒキオコシ

■分布:北海道、本州、四国、九州 ・ 朝鮮半島
■生育環境:里山の草地、棚田の土手、林縁など。
■花期:9〜10月

Fig.3 茎。(神戸市・棚田の土手 2015.9/29)
  茎は4角形で、高さ50〜120cm、密に下向きの細毛がある。

Fig.4 葉。(神戸市・棚田の土手 2015.9/29)
  葉は広卵形で、縁には鋸歯があり、先はとがり、基部は広いくさび形に狭まって葉柄の翼に流れる。

Fig.5 葉の拡大。(神戸市・棚田の土手 2015.9/29)
  両面ともに脈上を中心として曲がった毛が生える。

Fig.6 花序。(神戸市・棚田の土手 2015.9/29)
  茎上部は多数分枝し、全体で大きな頂生の円錐花序をつくり、多数の花をつける。

Fig.7 花序中軸から分枝した花序枝は2出集散状に展開する。(神戸市・棚田の土手 2015.9/29)

Fig.8 開花中の花。(長崎県北松浦郡・水田の土手 2009.10/4)
  萼はほぼ均等に5裂して密に細毛があり、灰白色を帯び、長さ約2mm、果時には長さ3〜3.5mmとなる。
  雄蕊は4本で、うち2本は少し長く、ともに花外に突き出る。
  花には個体によって長雄蕊・短花柱花と短雄蕊・長花柱花の2型があり、画像のものは長雄蕊・短花柱花。
  また雄性先熟で、画像左の花は雄性期。画像右の花は雌性期で、花柱が少し伸びて上向き気味になっている。

Fig.9 短雄蕊・長花柱花。(神戸市・棚田の土手 2015.9/29)
  アリが蜜を漁りに来ていた。

Fig.10 白花品。(神戸市・棚田の土手 2015.9/29)
  シロバナヒキオコシ(f. albidus)とされるもので、ヒキオコシに混じって出現する。花冠は白色で、紫斑はない。

Fig.11 果実期。(神戸市・棚田の土手 2015.11/10)
  萼は果時には長さ3〜3.5mmとなり、熟した分果が少しはみ出す。分果には粒状の腺がある。

生育環境と生態
Fig.12 棚田の土手に生育するヒキオコシ。(神戸市・棚田の土手 2015.9/29)
休耕された棚田の土手に大きく成長したヒキオコシが点在していた。耕作者の高齢化により、このような棚田が増えている。
ここでは稀少種の発見により、有志による草刈り管理が行われており、多くの草原性草本が残っている。
ススキを主体とするが、一部ではクズが進出している箇所もあって、草刈りの際にはてを焼く。
ここではワラビ、ヒメワラビ、ミゾシダ、ゲジゲジシダ、ゼンマイ、シシガシラ、サヤヌカグサ、ナルコビエ、トボシガラ、カモジグサ、
アオスゲ、ヒカゲスゲ、ヒメドコロ、ヤマノイモ、ミヤマナルコユリ、セトウチホトトギス、ササユリ、ヒメヤブラン、ドクダミ、タチツボスミレ、
ツルマメ、ナツフジ、クサイチゴ、ナワシロイチゴ、ウツギ低木、ヘクソカズラ、ツルニンジン、アカネ、アキノタムラソウ、ヨシノアザミ、ヨモギ、
セイタカアワダチソウ、ミツバツチグリ、オヘビイチゴ、ノイバラ、ワレモコウ、ノブドウ、オトギリソウ、コシオガマ、キツネノマゴ、クルマバナ、
ヤマハッカ、ツリガネニンジン、ノアザミなどとともに生育している。 ヒヨドリバナ、サワヒヨドリ



最終更新日:19th.Dec.2016

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