ホクチアザミ | Saussurea gracilis Maxim. | ||
草原の植物 | キク科 トウヒレン属 |
Fig.1 (兵庫県但馬地方・高原の草地 2016.9/17) 山地の日当たり良い乾いた草原に生育する多年草。茎は細く高さ10〜30cm。 中部以下の葉には長柄があり、葉身は長3角形で長さ6〜11cm、裏面には綿毛があって白色。 頭花は散房状につく。総苞は筒状、長さ13〜16mm、幅8〜14mm、紫色を帯び、多少くも毛がある。 総苞外片は短く卵形、先は尖る。 キクアザミ(S. ussuriensis)は葉が卵形で、堅く、羽状に浅〜中裂し、葉裏には短毛がまばらに生える。 ネコヤマヒゴタイ(S. modesta)は山地の湿地に生え、下部の葉は披針形〜線状披針形。中国地方〜関東地方。 ミヤコアザミ(S. maximowiczii)は葉身が長楕円形で、羽状に深裂、側裂片は4〜6対。本州〜九州。 ヒメヒゴタイ(S. pulchella)は越年草で、葉は羽状深裂〜全縁で両面に短毛と腺点があり、つぼみも美しく目立つ。 セイタカトウヒレン(S. tanakae)は茎に著しい翼がつき、開花時に根生葉はなく、総苞は黒紫色で絹毛がある。 キクアザミとの間に推定種間雑種のホクチキクアザミ(S. x subgracilis)がある。 近縁種 : キクアザミ、 ネコヤマヒゴタイ、 ミヤコアザミ、 ヒメヒゴタイ、 セイタカトウヒレン ■分布:本州(東海地方以西)、四国、九州 ・ 朝鮮半島 ■生育環境:山地の日当たり良い乾いた草原など。 ■花期:8〜10月 |
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↑Fig.2 下部の葉。(兵庫県但馬地方・高原の草地 2016.9/17) 中部以下の葉には長柄があり、葉身は長3角形で長さ6〜11cm、やや柔らかく、葉縁には粗い鋸歯がある。 |
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↑Fig.3 茎上部。(兵庫県但馬地方・高原の草地 2016.9/17) 茎葉は上のものほど葉柄が短く、上部では葉身は狭小となり、無柄。茎は無毛の稜があり、間に伏毛がある。 |
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↑Fig.4 葉表の拡大。(兵庫県但馬地方・高原の草地 2016.9/17) くも毛が部分的にまばらに生えている。 |
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↑Fig.5 葉裏の拡大。(兵庫県但馬地方・高原の草地 2016.9/17) 中央脈は裏面に膨出し、葉裏はくも毛に覆われて白い。 ホクチアザミの名はこの裏面のくも毛を集めて「火口」としたことによるもの。 |
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↑Fig.6 開花したホクチアザミ。(兵庫県但馬地方・高原の草地 2016.9/17) |
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↑Fig.7 花序。(兵庫県但馬地方・高原の草地 2016.9/17) 8〜10月に開花し、頭花は散房状につくが、花柄は短い。 |
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↑Fig.8 頭花。(兵庫県但馬地方・高原の草地 2016.9/17) 頭花は全て両性の筒状花からなり、外周部から開花していく。小花の間には冠毛が見える。 |
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↑Fig.9 総苞。(兵庫県但馬地方・高原の草地 2016.9/17) 総苞は筒状、長さ13〜16mm、幅8〜14mm、紫色を帯び、多少くも毛がある。総苞外片は短く卵形、先は尖る。 |
生育環境と生態 |
Fig.10 尾根筋の草地に生育するホクチアザミ。(兵庫県但馬地方・高原の草地 2016.9/17) 草刈りの行われている尾根筋のネザサが混じるススキ草地でホクチアザミが数個体生育していた。 草原環境の遷移により、減少傾向にあり、兵庫県では絶滅危惧種に指定されていないが、確実に見られる場所は限られる。 ススキが卓越し、同所的に刈り込まれたヤマツツジ、ヤマヤナギ、ケアクシバ、オトギリソウ、スミレ、カワラボウフウ、アリノトウグサ、 ウメバチソウ、コナスビ、ツリガネニンジン、オトコヨモギ、アキノキリンソウなどが見られた。 晩秋に痩果を観察しようと再訪したところ、すでに数週間前に草刈りがされており、根生葉しか確認できなかった。 |