ホウライシダ Adiantum capillus-veneris  L.
  市街地・里山・着生シダ ホウライシダ科 ホウライシダ属
Fig.1 (西宮市・疎水の壁面 2011.2/2)

Fig.2 (兵庫県芦屋市・住宅地の石垣 2012.10/30)

低地〜低山の湿った岩上、石垣などに着生する常緑性シダ。
根茎は短くはい、上面から近接する葉を生じる。
葉は30cm内外で斜上し、黄緑色、薄い草質。葉柄は葉身とおおむね同長、光沢のある紫褐色でもろい針金状。
葉身は長卵形または広披針形、下半部では2回羽状となる。
羽片はゆがんだ扇形で、基部は広いくさび形、先は様々な程度に切れ込んだ裂片となる。
胞子嚢群(ソーラス)は裂片の先につき、縁が反り返ってできた楕円形または三日月状の長楕円形の苞膜につつまれる。

【メモ】 本種は江戸時代から観葉植物として栽培され、それによる逸出と、高い繁殖力で分布を北に広げつつある植物である。
     兵庫県下では南部を中心として、市街地の溝や湿った石垣から山中の砂防ダムの壁面にまで自生状に群生しているのが見られ、
     すでにすっかり定着した感がある。
似たものに現在園芸用として一般に流通するコバホウライシダ(カラクサホウライシダ)A. raddianum)があるが、苞膜は腎円状となり、横に広がらない。
ハコネシダA. monochlamys)は羽片がほとんど切れ込まず、ふつう1つの羽片に1個の胞子嚢群をつける。
近縁種 : コバホウライシダ(カラクサホウライシダ)、 ハコネシダ

■分布:本州(ほとんど逸出定着)、四国、九州、沖縄 ・ 世界の温帯〜熱帯
■生育環境:湿った岩上や石垣、水路のコンクリート壁面など。

Fig.3 地上部標本。(西宮市・疎水の壁面 2011.2/2)
  葉は黄緑色で薄い草質。葉柄は光沢のある紫褐色でもろい針金状。

Fig.4 羽片。(西宮市・疎水の壁面 2011.2/2)
  羽片はゆがんだ扇形または平行四辺形で、基部は広いくさび形、紫褐色で針金状の柄がある。

Fig.5 羽片の拡大。(西宮市・疎水の壁面 2011.2/2)
  羽片の先は様々な程度で切れ込む。

Fig.6 羽片の裏面。(西宮市・疎水の壁面 2011.2/2)
  胞子嚢群は羽片の裂片の先端に1〜2個つき、楕円形または三日月状の長楕円形。

生育環境と生態
Fig.7 疎水の壁面に着生するホウライシダ。(西宮市・疎水の壁面 2011.2/2)
ホウライシダは市街地の流水のある溝の壁面や湿った石垣にもよく見られ、いずれの場所でもコンクリートで固められている場所である。
本来はしめった石灰岩の岩上に生育しているものだろう。
ここではジャゴケの仲間が壁面を被う水路に、多くの個体が生育している。

Fig.8 護岸の石垣に群生するホウライシダ。(西宮市・小河川 2013.1/29)
小河川の古い護岸の石垣にホウライシダの群生が見られた。


最終更新日:6th.Mar.2014

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