フタリシズカ | Chloranthus serratus (thunb.) Roem. et Schult. | ||
山地・林床の植物 | センリョウ科 チャラン属 |
Fig.1 (兵庫県神戸市・疎林の林床 2010.5/31) |
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Fig.2 (兵庫県篠山市・落葉広葉樹林の林床 2011.5/18) 丘陵〜山地の林縁、明るい林床に生育する多年草。 短い根茎から数本の茎が直立し、高さ30〜60cm、緑色で無毛。 葉は対生し、下部の3〜4対は鱗片状で小さく、広卵形で膜質である。 上部の2ときに3対の葉は大きく、大きな葉の節間は0.5cm〜2cmある。 葉柄は長さ0.5〜1.5cm、葉身は楕円形または卵状楕円形で先はとがり、基部は鋭形またはやや鈍形で、長さ5〜17cm、 幅2〜8cm、縁に先がとがる多数の鋸歯があり、薄くて両面ともに無毛。 花は頂生または腋生する穂状花序にまばらにつく。花序は2〜6cmで、普通1〜2回分枝するが、ときに単一のこともある。 苞は3角状広卵形でとがり、長さ0.5〜1mm。花弁や萼はなく、3個の合着した雄蕊の白色の花糸が内側に曲がって雌蕊を包み込む。 雌蕊は1個、長さ約1mm。果実は淡緑色で球形または倒広卵形、長さ約3mm。 開花期が終わった夏〜秋にかけては、下垂した短い花序に閉鎖花をつける。 近縁種 : ヒトリシズカ、 キビヒトリシズカ ■分布:北海道、本州、四国、九州 ■生育環境:丘陵〜山地の林縁、明るい林床など。 ■花期:5月 |
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↑Fig.3 茎上部に対生する大きな葉があつまる。(兵庫県神戸市・疎林の林床 2010.5/31) 茎の下方には目立たない鱗片葉をつけ、上部に互生する大きな葉がやや詰まってつく。 |
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↑Fig.4 葉。(兵庫県神戸市・疎林の林床 2010.5/31) 葉は有柄、葉身は楕円形または卵状楕円形で先はとがり、基部は鋭形またはやや鈍形、縁に先がとがる多数の鋸歯があり、両面無毛。 |
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↑Fig.5 花序。(兵庫県神戸市・疎林の林床 2010.5/31) 穂状花序。ふつう1〜2回分枝するが、ときに単生する。 |
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↑Fig.6 花。(兵庫県神戸市・疎林の林床 2010.5/31) 花には萼も花弁もない。白いものは3個の花糸が合着して内側に巻いたもので、内側に葯があって、雌蕊も外から見えない。 葯は中央の太い花糸には2個つき、両側の花糸には1個ずつつく。 |
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↑Fig.7 1本の花序のみを持つ集団。(西宮市・林床 2013.5/27) ときに花序が1本のみの集団がある。西宮市ではこのタイプのみが見られる。 |
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↑Fig.8 訪花したフタオビヒメハナカミキリ。(兵庫県神戸市・疎林の林床 2010.5/31) フタオビヒメハナカミキリは初夏の山地のガマズミなどの白い花の花上でよく目にするハナカミキリである。 画像にはひとつ上の花にもなにか小さな昆虫が入り込んでいるのが見える。我々にはあまりパッとしない花だが、昆虫達には人気らしい。 |
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↑Fig.9 結実した開花花序と閉鎖花をつけた花序。(兵庫県神戸市・疎林の林床 2011.7/11) フタリシズカは初夏に開花した後、葉腋から分枝した小さな葉をつけた茎頂から、下垂する閉鎖花を持つ短い花序を下垂する。 |
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↑Fig.10 果実。(兵庫県篠山市・落葉広葉樹林下 2011.7/8) 果実は淡緑色で球形または倒広卵形。 |
生育環境と生態 |
Fig.11 疎林の林床に生育するフタリシズカ。(兵庫県神戸市・疎林の林床 2010.5/31) やや湿ったヤマヤナギの疎林の林床のミヤコザサがまばらな場所にフタリシズカがかたまって生育していた。 同所的にミズヒキ、ヒメアギスミレ、ホソバテンナンショウ、ムラサキケマン、ハクモウイノデなどが見られた。 |
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Fig.12 落葉広葉樹林の林床に生育するフタリシズカ。(兵庫県篠山市・落葉広葉樹林の林床 2011.5/18) クリ、ケヤキ、カエデ、ホオノキなどからなる落葉広葉樹林の林床にフタリシズカの集団が点在していた。 林床にはヒトリシズカ、カテンソウ、イチリンソウ、クサイチゴ、ヤマシャクヤクsp.、オオマルバコンロンソウ、トキワイカリソウ、ハナウド、シシウド、 キランソウ、オカタツナミソウ、ヨシノアザミ、フデリンドウ、アマナ、シオデ、サルトリイバラ、ヤブラン、チゴユリ、オモト、エビネ、オクマワラビ、 シシガシラ、コタニワタリ、イノデ、ヤマヤブソテツ、オオキヨズミシダなどが生育する。非常に多様性に富んだ、自然度の高い雑木林だった。 |
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Fig.13 植林地の林床に群生するフタリシズカ。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2014.5/20) シカの食害のない地区では、適湿なよく管理された植林地の林床でときに群生していることがある。 林床にはチャノキ、アオキ、ミヤマシキミなどが疎らに生育し、フタリシズカはシャガとともにパッチ状の群落をつくっていた。 フタリシズカ群落中にはミドリヒメワラビ、ハリガネワラビ、フモトシダ、サイゴクイノデ、イノデモドキ、イノデ、ヤマヤブソテツ、ヤマイヌワラビ、 ナキリスゲ、ヤマジノホトトギス、ヤブラン、ツルニガクサ、ミカエリソウなどがまばらに生育している。 |