カラスビシャク Pinellia ternata  (Thunb.) Breit.
  里山・草地の植物 サトイモ科 ハンゲ属
Fig.1 (兵庫県丹波市・林縁 2009.5/10)

農耕地周辺の草地、河川の土手などに比較的普通な多年草。史前帰化植物とされる。
球茎は径約1cmで、葉は1〜2個、葉柄にむかごをつける。
葉は3小葉からなり、小葉はふつう長楕円形または狭卵形で、鋭頭、長さ3〜12cm、短い柄がある。
花茎は高さ20〜40cm、葉の上に突き出る。仏縁苞は緑色または紫色を帯び、長さ5〜7cm。
舷部は狭卵形でやや円頭、内面に細毛があり、外面は無毛。
雌花群は花軸の片側に密につく。雄花群は花軸が仏縁苞よりも離れた部分につく。
付属体は長さ6〜10cm、ほぼ直立し、無毛。液果は緑色で小型。
仏炎苞の内側が紫色のものは品種ムラサキハンゲ(f. atropurpurea)とされる(Fig.12参照)。

近縁種 : オオハンゲ
■分布:北海道、本州、四国、九州、沖縄 ・ 朝鮮半島、中国
■生育環境:農耕地周辺の草地、河川の土手など。
■花期:5〜8月

Fig.2 基部と球茎。(兵庫県丹波市・草地 2010.5/8)
  基部の根茎は節間が詰まって肥大して栄養分をためた球茎となっている。球茎は径1cm前後。
  球茎からは1〜2個の葉と花茎があがる。画像のものはその他に数個の芽を出しているが、これは親株の周りにできた小球から出ているもの。
  葉柄の基部よりが屈曲しているが、ここにはムカゴができる。

Fig.3 カラスビシャクの葉。(西宮市・林縁草地 2010.4/24)
  葉はふつう3小葉からなる。小葉には短い柄があり、長楕円形または狭卵形。
  湿った林床に生えるオオハンゲは葉が3深裂し、柄のある小葉とはならない点で区別する。

Fig.4 葉柄にできつつあるムカゴ。(兵庫県丹波市・草地 2010.5/14)
  ムカゴは早い時期には葉柄に形成され、後には小葉の基部にもできる。

Fig.5 小葉基部にできたムカゴ。(兵庫県篠山市・社寺林縁 2013.6/18)

Fig.6 花茎。(西宮市・草地 2010.5/13)
  花茎は直立し、花は葉よりも高い位置につく。

Fig.7 花。(西宮市・草地 2010.5/13)
  花序は仏炎苞に包まれる。仏炎苞は緑色が多いが、紫褐色のものも見かける。
  付属体の仏炎苞内にある部分は紫褐色、上部は仏炎苞の舷部から出ると緑色となり糸状に伸びる。

Fig.8 仏炎苞の内部。(西宮市・草地 2010.5/13)
  花軸は下部の一方が仏炎苞と合着し、上部は仏炎苞から離れる。
  花軸の下部には仏炎苞と合着していない面に雌花が並び(雌花部)、花軸の上部は2個の雄蕊からなる雄花が多数並ぶ(雄花部)。
  付属体は本体と柄の境界部分が明瞭でなく、花軸がそのまま付属体へと連続する。

Fig.9 雄花群。(西宮市・草地 2010.5/13)
  雄花群は花軸上部の仏炎苞から離れた部分に、花軸を取り巻いてつく。葯は白色で、白色の花粉が放出している。

Fig.10 雌花群。(西宮市・草地 2010.5/13)
  雌花群は花軸下部の仏炎苞と合着している反対側の面につく。雌花は子房と柱頭からなる。
  臭いをかぎつけたのか、小型のハネカクシの仲間が飛来し、早速苞の内側に入り込んでいった。

Fig.11 出芽した集団。(西宮市・畑地の土手 2010.6/28)
  ムカゴや小球から発芽するものは、はじめのうち単葉を出す。

Fig.12 ムラサキハンゲ。(京都府福知山市・墓地 2015.4/24)
  仏炎苞の内側が紫色となる品種(f. atropurpurea)。

生育環境と生態
Fig.13 果樹畑の木陰に生育するカラスビシャク。(西宮市・果樹畑 2010.5/13)
  乾いた耕地の多い西宮市内では、果樹の木陰は適湿となりカラスビシャクにとって都合の良い生育環境となっているようだ。
  ヒメオドリコソウ、ホトケノザ、オランダミミナグサ、ミミナグサ、ヨモギなどとともに畑地雑草群落をつくっている。

Fig.14 撹乱された裸地に生育するカラスビシャク。(兵庫県丹波市・裸地の駐車場 2010.5/8)
  かつて草地であったと思われる駐車場脇の裸地部分にいくつかの塊となって生育している。
  畑地周辺の草地が焼かれた跡などにもカラスビシャクが真っ先に一斉に萌芽している光景をよく眼にする。


最終更新日:20th.June.2015

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