コチョウショウジョウバカマ
   (シロバナショウジョウバカマ)
Helonias breviscapa  (Maxim.) N.Tanaka
  山地・渓谷の植物 ユリ科ショウジョウバカマ属
Fig.1 (西宮市・渓流畔の林床 2008.4/3)

Fig.2 (西宮市・棚田の土手 2013.4/5)

従来はシロバナショウジョウバカマとして、ツクシショウジョウバカマと分けられていたが、分類学的に再検討され、
両種がまとめられてコチョウショウジョウバカマと新たに記載された。
山地の渓谷の林床や、水に濡れた岩壁に生育する多年草。
花色に変異の多い近縁種のショウジョウバカマH. orientalis)の白花品に似るが、やや小型で繊細な印象を受ける。
根生葉はショウジョウバカマよりも質は薄く、幅はやや狭く、葉縁が細かい波状となる。
花被片の基部付近はショウジョウバカマのように膨らまない。
近縁種 : ショウジョウバカマ

■分布:本州(関東以西)、四国、九州
■生育環境:渓谷の林床や濡れた岩壁など。
■花期:3〜4月

Fig.3 コチョウショウジョウバカマの開花。(西宮市・渓谷 2008.4/3)
  花被片は6個。線状倒披針形で基部はあまりすぼまらず、花柄との境は膨らまない。
  葯や柱等はうっすらと淡紅紫色を帯びる。葯は濃紫色となるものも見られる。
  開花期はショウジョウバカマよりも2週間ほど早い。

Fig.4 根生葉。(西宮市・渓谷 2008.4/3)
  葉縁は細かい波状となる。

Fig.5 葉が紅葉したもの。(西宮市・渓谷 2008.4/3)
  コチョウショウジョウバカマはロゼットで越冬する。
  葉上に落ち葉も溜まらず、岩壁でも湧水の供給のないものなどは、寒さにあたって紅葉する。

Fig.6 果実形成期。(西宮市・渓谷 2008.5/13)
  果実はショウジョウバカマほど大きく膨らまない。

Fig.7 刮ハの弾けた後。(西宮市・渓谷 2008.6/12)
  種子を観察しようと訪れてみたが、すでに刮ハが割れて散布された後だった。
  開花後、約2ヶ月で種子が熟したことになる。

Fig.8 親株の周辺で見られた幼苗。(西宮市・渓谷 2008.4/8)

Fig.9 冬期の草体。(西宮市・林床の細流脇 2009.2/15)
  冬期はロゼットで常緑越冬する。左上のものは、ロゼットの中心に花芽が形成されている。

生育環境と生態
Fig.10 湧水で濡れた岩壁に生育するコチョウショウジョウバカマ。(西宮市・渓谷 2008.4/3)
コチョウショウジョウバカマは、このような岩壁で見られることが最も多い。
周辺の岩壁にはミツデウラボシ、オサシダなどが着生し、蘚苔類が密に覆っていた。

Fig.11 棚田の土手の石垣に生育するコチョウショウジョウバカマ。(西宮市・棚田 2013.4/5)
市内の比較的標高の高い棚田の北向き土手の石垣の間に生育していた。
同所的にノカンゾウ、ヒメヤブラン、ツルボ、イヌシダ、ゼンマイ、アリマイトスゲが生育している。


最終更新日:6th.May.2013

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