コガネネコノメソウ Chrysosplenium pilosum  Maxim.
   var. sphaerospermum  (Maxim.) Hara.
  山地・渓流の植物 ユキノシタ科 ネコノメソウ属
Fig.1 (兵庫県篠山市・渓流畔 2009.3/19)
山地の渓流畔などの湿った日陰〜半日陰に生育する小型の多年草。
根生葉は開花時には枯れることが多いが、黄変しながら残っていることもある。
走出枝はよく発達し、ふつう白色の軟毛を密生する。
葉は扇形〜円形で、長さ3〜15mm、幅3〜17mm、基部は広いくさび形または切形、縁には5〜10個の円い鋸歯がある。葉柄は長さ2〜10mmで、有毛または無毛。
花茎は高さ4〜10cm、暗紫色を帯び、白毛を散生する。茎葉はふつう1対で小型。
花は径2〜4.5mm、中央のもの以外は無柄。萼裂片は開花時には鮮黄色または黄緑色で直立し、卵円形または広卵形、円頭、長さ1.5〜3mmで、花後緑色となる。
雄蕊は8個で直立し、萼裂片よりも短い。列開直前の葯は鮮黄色。子房中位。花柱は長さ約0.8mmで萼裂片より短く、直立する。
刮ハは斜開し、2個の心皮は同長。種子は卵円形で、長さ0.6〜0.7mm、十数個の隆条に0.2mm程度の乳頭状突起が並ぶ。

この仲間には非常に似たものが多く、主に花の細部を調べることによって区別する。
以下のものはコガネネコノメソウに似て、萼片が黄色のタイプのもの。
トウノウネコノメC. pseudopilosum)…雄蕊は萼裂片よりも少し長く、萼裂片は直立し、先は切形、外側は無毛。分布:岐阜、愛知。
ヤマシロネコノメC. pseudopilosum var. divaricatistylosum)…トウノウネコノメの変種で、萼裂片の外側に軟毛が目立つ。分布:京都府固有。
オオコガネネコノメソウC. pilosum var.fulvum)…コガネネコノメソウより大型で、全体に毛が多く、葉の鋸歯は9〜17個。分布:本州、四国、九州。
ツクシネコノメソウC. rhabdospermum)…萼裂片は淡緑色で直立、円頭。雄蕊は萼裂片と同長か長い。分布:四国(高知県)、九州。
キバナハナネコノメC. album var.flavum)…シロバナネコノメソウの変種で萼が黄色のもの。萼裂片は長卵形で鈍頭。分布:岐阜、愛知、静岡、山梨。
近縁種 : オオコガネネコノメソウ、 トウノウネコノメ、 ヤマシロネコノメ、 ツクシネコノメ

■分布:本州(関東地方以西)、四国、九州 ・ 朝鮮半島、中国東北部、アムール、ウスリー
■生育環境:山地の渓流畔などの湿った場所。
■花期:4〜5月

Fig.2 花茎、走出枝、根生葉。(兵庫県篠山市・渓流畔 2009.3/19)
  花茎は暗紫色を帯び軟毛はまばら。走出枝は軟毛を密生するので白味を帯びて見える。
  開花初期のものには、画像のように根生葉がはっきりと認められるものが少なくない。

Fig.3 花茎は頂部が2叉分枝してから2出集散花序になる。(兵庫県篠山市・渓流畔 2009.3/19)
  花は集散花序の中央のものから開いていく。萼裂片の外側にはごくまばらに軟毛が見られた。

Fig.4 花。(兵庫県篠山市・渓流畔 2009.3/19)
  鮮黄色で径2〜4.5mm。萼裂片は直立し、円頭。雄蕊8個は直立し、萼裂片よりも短く、直立する。
  花柱は萼裂片より短く、直立し、先は鈍頭。
 画像では葯に大きなものと小さなものとが見えるが、小さなものはすでに葯が開いて花粉を散布したもの。

Fig.5 春先の草体。(兵庫県篠山市・渓流畔 2009.3/12)
  ロゼットを形成した根生葉の中央から、先ず数本の毛深い走出枝が伸びる。

Fig.6 続いて毛がまばらな花茎が上がるが、すでに花芽が見える。(兵庫県篠山市・渓流畔 2009.3/12)

Fig.7 花茎頂部につぼみを付けたもの。(兵庫県篠山市・渓流畔 2009.3/12)
  花茎には1対の小さな茎葉がついており、葉柄は基部に向かうほど毛が多くなっている。

Fig.8 萼裂片が緑色のもの。(兵庫県丹波市・渓流畔 2009.5/5)
  時期も遅いため花後に緑化したものと思ったが、開ききっていない葯も見られたことから花時にも萼裂片が黄化しない個体だった。
  他の花も同様だったので、遺伝的に固定されたものかどうか翌年確認に出かけたが、大きな氾濫があったようで、
  自生地は土砂と倒木に埋まって確認できなかった。

生育環境と生態
Fig.9 渓流の河原のやや腐植質の溜まった場所に生育するコガネネコノメソウ。(兵庫県篠山市・渓流畔 2009.3/19)
渓流の岩上にも見られるがまだ開花が見られず、土壌の多い場所のものが開花が早かった。
同じ河原ではヤマネコノメソウ、ネコノメソウ、ミヤマハコベ、サンインクワガタ、アケボノソウ、ダイコンソウ、オオバタネツケバナが多い。
さらに日陰の岩上ではマルバコンロンソウとともにニッコウネコノメ、タチネコノメソウが見られた。

Fig.10 苔むした渓畔岩上に生育するコガネネコノメソウ。(兵庫県篠山市・渓流畔 2009.4/3)
マット状に広がったぬれたトヤマシノブゴケの間に生育している。

Fig.11 里山の渓流畔に生育するコガネネコノメソウ。(兵庫県篠山市・渓流畔 2011.4/15)
山間里山の棚田の間を流れる渓流畔の所々で、コガネネコノメソウがかたまって生育していた。
渓流畔にはセキショウ、ヤブヘビイチゴ、コチャルメルソウ、ミヤマカタバミ、キンキカサスゲなどが生育している。

最終更新日:24th.Feb.2014

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