コケシノブ Hymenophyllum wrightii  Bosch
  山地・着生シダ コケシノブ科 コケシノブ属
Fig.1 (兵庫県篠山市・岩壁 2011.2/26)
低山〜山地の湿った岩上、樹幹などに着生する小型の常緑性シダ。マット状に群生することが多い。
根茎は長く横走し、不規則に分枝し、先端には褐色で多細胞の毛をつけるが、早落性で、古い部分は暗褐色〜黒色で針金状。
葉柄は短く、長さ0.7〜2.5cm、基部に褐色の毛をつけることがあるが、他は無毛で、最上部を除いて翼はない。
葉身は2〜3回羽状に分岐し、卵状長楕円形〜3角状卵形、鋭頭〜円頭、長さ3〜5cm、幅1.2〜2.5cm、ふつう無毛だが、
2〜3細胞性の半透明で顕微鏡的な毛がまばらにつくこともある。
裂片は軸に対して鋭角に30〜45度の角度でつき、やや長く伸び、黒褐色の軸が多少とも顕著である。
葉は暗緑色、細胞膜は薄い。胞子嚢群(ソーラス)は裂片に頂生する。
苞膜は2弁状で基部ちかくまで裂け、3角状卵形、胞子嚢床は棍棒状で苞膜より短い。
近縁種 : ホソバコケシノブコウヤコケシノブ、 キヨスミコケシノブ、オオコケシノブ

■分布:北海道、本州、四国、九州 ・ 朝鮮南部、アムール、千島、樺太、カナダ(クイーン・シャーロット諸島)
■生育環境:低山から山地の湿った岩上、樹幹など。

Fig.2 コケシノブの群体。(兵庫県篠山市・岩壁 2011.2/26)
  根茎は不規則に分岐して絡まりあい、マット状の群落をつくる。

Fig.3 全草標本。(兵庫県篠山市・岩壁 2011.2/26)
  草体はよく似たホソバコケシノブよりもかなり小さく、葉身は長さ長さ3〜5cm。
  実際の自生状況を見ると、ホソバコケシノブとは明らかに印象が異なる。

Fig.4 根茎と葉柄基部。(兵庫県篠山市・岩壁 2011.2/26)
  根茎は長く横走し、先端には褐色で多細胞の毛をつけるが、早落性。古い部分は暗褐色〜黒色で針金状。
  根茎のところどころから不定根を生じ、不定根からは根毛を生じる。
  葉柄は短く、長さ0.7〜2.5cm、基部に褐色の毛をつけることがあるが、他は無毛。

Fig.5 コケシノブの葉。(兵庫県篠山市・岩壁 2011.2/26)
  葉柄は短く、ほとんど翼はない。
  葉身は2〜3回羽状に分岐し、卵状長楕円形〜3角状卵形、鋭頭〜円頭、長さ3〜5cm、幅1.2〜2.5cm、ふつう無毛。
  胞子嚢群(ソーラス)は裂片の先につく。

Fig.6 裂片。(兵庫県篠山市・岩壁 2011.2/26)
  裂片は軸に対して鋭角に30〜45度の角度でつき、やや長く伸び、黒褐色の軸が多少とも顕著である。

Fig.7 胞子嚢群。(兵庫県篠山市・岩壁 2011.2/26)
  苞膜は2弁状で基部ちかくまで裂け、3角状卵形、ほぼ全縁。胞子嚢床は棍棒状で苞膜より短い。

生育環境と生態
Fig.8 山中の北向き斜面の岩壁に群生するコケシノブ。(兵庫県篠山市・岩壁 2011.2/26)
尾根が沢の合流点から立ち上がる部分がチャート基岩の岩塊となっており、その北向き岩壁の下部近くに群生している。
岩塊には着生するシダ類が多く、日当たりよい場所ではヌリトラノオとヒトツバが、日陰の湿った場所にはカミガモシダ、コウヤコケシノブが生育する。
岩塊上部ではヒカゲツツジの群落が発達していた。

Fig.9 岩上に生育するコケシノブ。(兵庫県養父市・岩場 2014.6/25)
尾根上にある岩場の北側のやや湿った壁面に小群生が見られた。
壁面にはツルアジサイが這い登り、ジンジソウ、ヒメスギラン、クジュウスゲなどが生育していた。


最終更新日:12th.Nov.2014

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