コウヤコケシノブ | Hymenophyllum barbatum (v. d. B.) Baker | ||
里山・着生シダ | コケシノブ科 コケシノブ属 |
Fig.1 (西宮市・渓谷の岩上 2009.12/1) |
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Fig.2 (兵庫県丹波市・社寺の石垣 2011.2/8) 丘陵〜山地の湿度の高い岩上や樹幹などに着生する小型の常緑性シダ。 根茎は暗褐色の硬い糸状で、長く横にはい、ほとんど無毛、ひげ根を生じる。 葉はややまばらに根茎から出て、柄があり、長さ3〜10cm、薄い膜質で暗緑色、褐色の糸状鱗片が裏面脈上に残る。 葉柄は糸状で葉身よりも短く、上部にだけ狭い翼がある。 葉身は長楕円形または披針形、先端部はしばしば長く伸び、2〜3回羽状複葉、中軸には狭い翼があり、羽片は卵形、 小羽片は倒卵形、最終裂片は線状長楕円形で鈍頭、縁には不規則な鋭い鋸歯がある。 胞子嚢群(ソーラス)は葉身上部の裂片の先端に生じ、苞膜は2枚貝のように弁状に深く裂け、鋭鋸歯がある。 胞子嚢群の中軸は短く、苞膜の外から見えない。 近縁種 : コケシノブ、 ホソバコケシノブ、 コケシノブ、 キヨスミコケシノブ、ヒメコケシノブ、アオホラゴケ、ハイホラゴケ、 ヒメハイホラゴケ、 コハイホラゴケ ■分布:本州、四国、九州、沖縄 ・ 東アジア ■生育環境:丘陵から山地の湿度の高い岩上や樹幹など。 |
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↑Fig.3 全草標本。(西宮市・樹林下の岩上 2011.2/2) 根茎は糸状でよく分枝し、入り組んでマット状の群生をつくる。 | ||
↑Fig.4 葉身。(西宮市・樹林下の岩上 2011.2/2) 葉身は長楕円形または披針形、2〜3回羽状複葉、中軸には翼がある。 |
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↑Fig.5 羽片と裂片。(西宮市・樹林下の岩上 2011.2/2) 羽片は卵形で、さらに切れ込み、最終裂片の先は鈍頭となり、縁には鋸歯がある。 近似種に葉縁に鋸歯のあるものはなく、よい区別点となる。 |
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↑Fig.6 胞子嚢群(ソーラス)。(西宮市・樹林下の岩上 2011.2/2) 胞子嚢群は裂片の先につく。 |
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↑Fig.7 裏から見た胞子嚢群と鱗片。(西宮市・樹林下の岩上 2011.2/2) 胞子嚢群の苞膜は2弁状に深裂し、その口部には鋭鋸歯がある。 裏面脈上には褐色で糸状の鱗片が残っている。 |
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↑Fig.8 葉身上部の裂片先端に胞子嚢群を形成した集団。(兵庫県丹波市・渓流畔の岩上 2011.2/8) 胞子嚢群は葉身の中部に形成する集団と、葉身先端に形成する集団とがある。 葉身先端に胞子嚢群を形成する集団の中には、裂片の縁に鋸歯のごくまばらなものがあり、キヨスミコケシノブやヒメコケシノブと区別に迷うものがある。 |
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↑Fig.9 乾燥時の葉と根茎。(西宮市・渓谷の岩上 2009.12/1) 葉は乾燥すると葉縁が外曲して縮み、乾燥に耐える。この状態でも水分の供給があれば、数時間で葉を全開する。 根茎は暗褐色の硬い糸状、葉のほかに、枯れた葉の葉柄がまばらに残り、ひげ根を生じる。 |
生育環境と生態 |
Fig.10 渓流畔の日陰の岩上に生育するコウヤコケシノブ。(西宮市・渓谷の岩上 2009.12/1) 渓谷の湧水の見られる岩上に生育していた。自生地の谷では湧水のある岩壁や滝周辺部に多くの群落が見られた。 コウヤコケシノブが見られる場所ではウチワゴケ、キジノオシダ、ヤブソテツ、イノデ類などのシダ類が多く、 低標高にも関わらずコチョウ(シロバナ)ショウジョウバカマも見られる。 |
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Fig.11 谷間の樹林下の岩上に生育するコウヤコケシノブ。(西宮市・樹林下の岩上 2011.2/2) 比較的乾いた日陰地に生育しているためか、葉は乾燥して縮んで暗緑色の塊状となっている。 画像中の白味を帯びたコケはオオシラガゴケで、他に地上茎をはわせるツルアリドオシも見える。 |