クマワラビ Dryopteris lacera  (Thunb.) O. Ktze.
  山地・林床・林縁のシダ オシダ科 オシダ属
Fig.1 (神戸市・林床 2013.6/25)

Fig.2 (西宮市・渓流畔の林縁 2013.6/10)

丘陵〜山地の向陽地〜日陰のやや湿った林床や林縁に生育する常緑性シダ。
根茎は太く、短く、直立し、塊状、葉を叢生し、鱗片をつける。葉柄は長さ25cm以下で、葉身の半分以下、鱗片を密につける。
葉柄の鱗片は褐色〜赤褐色、卵状長楕円形〜線状披針形、大きいものは長さ2cmに達し、膜質、中軸上方に向かうにつれ、小さく、幅狭く、色が濃くなる。
葉身は2回羽状複生、楕円形〜長楕円形、長さ30〜60cm、幅20〜30cm、下部の羽片はわずかに短くなる。葉脈は表面でくぼみ、溝をつくる。
羽片は部分的な2形をなし、ソーラスをつけない羽片は下部に3〜10対あり、長楕円状披針形、鋭尖頭、短い柄がある。
裂片は披針形〜長楕円状披針形、幅5〜8mm、鋭頭〜鋭尖頭。下部の羽片では羽軸から遊離して小羽片となり、基部両側は耳状にふくらみ、辺縁には小鋸歯がある。
ソーラスをつける羽片は葉身先端部のものに限られ、やや縮んで、上部のものほど小さくなり、一面にソーラスをつけ、胞子散布後に枯れる。
苞膜は円腎形、全縁。染色体数はn=41の2倍体。

オクマワラビD. uniformis)に似るが、ソーラスをつけた羽片が縮れることがなく、胞子散布後にその羽片が枯れることはない。
ミヤマクマワラビD. polylepis)はクマワラビよりもむしろオシダに似て、裂片は幅1.5〜3mmとほそく、葉柄基部の鱗片は黒褐色〜黒色で、夏緑性。
クマワラビを片親とする推定自然雑種に以下のものがある。
ヒサツオオクジャクD. × hisatsuana) ツクシオオクジャクとの雑種。九州。
ミチノククマワラビD. × wakui) タニヘゴとの雑種。
スルガクマワラビD. × wakui) ミヤマクマワラビとの雑種。
フジクマワラビD. × fujipedis) オシダとの雑種。
アイノコクマワラビD. × mituii) オクマワラビとの雑種。兵庫県での記録は多数ある。
近縁種 : オクマワラビ

■分布:北海道、本州、四国、九州 ・ 朝鮮半島
■生育環境:丘陵〜山地の向陽地〜日陰のやや湿った林床や林縁など。

Fig.3 地上部標本。(西宮市・渓流畔の林縁 2013.6/10)
  葉柄は葉身の半分以下で、鱗片を密につける。葉質はやや厚い草質。
  葉身は2回羽状複生、楕円形〜長楕円形、下部の羽片はわずかに短くなる。

Fig.4 葉柄基部の鱗片。(西宮市・渓流畔の林縁 2013.6/10)
  褐色〜赤褐色で、卵状長楕円形〜線状披針形、膜質の鱗片を密生する。

Fig.5 中軸の鱗片と最下羽片。(西宮市・渓流畔の林縁 2013.6/10)
  中軸の鱗片は葉柄のものよりも幅が狭く、色も濃くなり、上方にむかうにつれて、その傾向は強まる。
  裂片は披針形〜長楕円状披針形、鋭頭〜鋭尖頭。下部の羽片では裂片が羽軸から遊離して小羽片となり、基部両側は耳状にふくらむ。
  葉脈は表面でくぼみ、溝をつくる。

Fig.6 クマワラビとオクマワラビの裂片。(西宮市・渓流畔の林縁 2013.6/10)
  左がクマワラビで、裂片の先は尖り、葉脈が明瞭にくぼんでいるのが特徴。

Fig.7 ソーラスのついた葉身上部。(西宮市・渓流畔の林縁 2013.6/10)
  ソーラスは葉身上部の羽片に限ってつき、その羽片は小さくなったり、縮んだりしていることが多い。

Fig.8 上部羽片裏面。(西宮市・渓流畔の林縁 2013.6/10)
  ソーラスは中間生、苞膜は全縁。

Fig.9 展開間もない新葉。(兵庫県篠山市・社寺林の林床 2013.4/25)
  展開間もない葉でもソーラスがつく上部の羽片には、すでに縮みが見られ、濃緑色となっている。

生育環境と生態
Fig.10 斜面の林床に生育するクマワラビ。(神戸市・林床 2013.6/25)
硬質の流紋岩質凝灰岩の転石が堆積した斜面に、ヤブムラサキ、キブシ、クロモジ、シロダモなどの低木が生え、その林床に点在していた。
同所的にアリマイトスゲが優占し、ベニシダ、トウゲシバ、コウヤザサ、コチヂミザサ、ミヤマウズラ、イタドリ、ナガバノタチツボスミレなどが生育。


最終更新日:27th.June.2013

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