クリハラン | Neocheiropteris ensata (Thunb.) Ching | ||
低山・林床・岩上のシダ | ウラボシ科 クリハラン属 |
Fig.1 (兵庫県加西市・渓流畔の石垣 2015.12/4) 山林中の林床から湿った岩上に生育する常緑性シダ。 根茎は長く横走し、径2〜5mm、鱗片をつける。 鱗片は卵形〜卵状披針形で鋭尖頭、膜質、淡褐色、縁に不規則な突起があり、長さ2〜6mm。 葉柄は長さ10〜30cm、基部に鱗片がある。葉身は単葉、広披針形、長さ(15〜)25〜40cm、幅4〜7cm、 ふつう中央が最も幅広く、鋭尖頭、基部はくさび形、ほぼ全縁で紙質、両面に圧着する小型の鱗片がつく。 中肋は両面とも隆起し、主側脈は両面ともに明瞭、20〜30対が7〜15mmの間隔で並ぶ。葉脈は複雑な網状。 ソーラスは中肋の両側に(1〜)2〜4列にやや不規則に並び、円形〜楕円形、径3〜5mm、若い時には楯状で小型の鱗片がある。 ヤノネシダ(Leptochilus buergeriana)は葉身が小さく20cm以下、長三角形〜狭披針形。ソーラスの径は約2mm。 ヌカボシクリハラン(N. ningpoensis)は葉身基部が広いくさび形で、中肋は下面に隆起する。 近縁種 : ヤノネシダ、 ヌカボシクリハラン ■分布:本州(関東地方以西)、四国、九州、沖縄 ・ 台湾、済州島、中国、インドシナ ■生育環境:低山の林床、湿った岩上など。 |
||
↑Fig.2 全草標本。(三重県・渓流畔の石垣 2015.11/16) 根茎は横走する。葉柄は長さ10〜30cm。葉身は単葉、広披針形、ふつう中央が最も幅広く、鋭尖頭、基部はくさび形。 |
||
↑Fig.3 根茎。(三重県・渓流畔の石垣 2015.11/16) 根茎は径2〜5mm。鱗片は卵形〜卵状披針形で鋭尖頭、膜質、淡褐色、縁に不規則な突起があり、長さ2〜6mm。 |
||
↑Fig.4 葉柄基部。(三重県・渓流畔の石垣 2015.11/16) 葉柄は暗紫褐色を帯び、基部近くには卵形〜卵状披針形で淡褐色の鱗片が圧着して付いている。 |
||
↑Fig.5 葉身中央付近。(三重県・渓流畔の石垣 2015.11/16) 全縁で葉質は紙質。中肋は隆起し、主側脈は両面ともに明瞭、20〜30対が7〜15mmの間隔で並ぶ。葉脈は複雑な網状。 |
||
↑Fig.6 裏面。(三重県・渓流畔の石垣 2015.11/16) ソーラスは中肋の両側に(1〜)2〜4列にやや不規則に並び、円形〜楕円形。 |
||
↑Fig.7 ソーラス。(三重県・渓流畔の石垣 2015.11/16) ソーラスは径3〜5mm。 |
||
↑Fig.8 ソーラスの鱗片。(三重県・渓流畔の石垣 2015.11/16) ソーラスは若いうちは径約0.4mmの楯状鱗片が散在し、鱗片には網状脈がある。 |
生育環境と生態 |
Fig.9 渓流畔の護岸に群生するクリハラン。(兵庫県加西市・渓流畔の石垣 2015.12/4) 水枯れのない渓流の古い護岸の石垣にヤマヤブソテツ、ベニシダ、トウゴクシダ、リョウメンシダ、ジュウモンジシダ、クマワラビ、 イノデ、ノキシノブ、ササノハスゲなどとともに生育しており、周辺の林床にもナガバジャノヒゲやフユイチゴなどとともに見られた。 |
||
Fig.10 細流脇の苔むした石垣に着生したクリハラン。(三重県・渓流畔の石垣 2015.11/16) 石垣はフトリュウビゴケ、トヤマシノブゴケどの蘚類によってびっしりと覆われており、その下をクリハランの根茎が這っている。 石垣には他にウチワゴケ、コウヤコケシノブなどの小型のシダが着生していた。 |