ヤノネシダ Leptochilus subhasatat  (Bak.) Tagawa
  里山・山地・着生シダ ウラボシ科 ヤノネシダ属
Fig.1 (兵庫県丹波市・古い石垣 2013.1/21)
山麓の林床から岩上、まれに低い樹幹などに着生する常緑性シダ。
根茎は長く横走し、針金状で径2〜3mm、鱗片をやや密につける。
鱗片は開出し、披針形で鋭尖頭、長さ2〜4mm、膜質、褐色から暗褐色で格子状、縁に不規則な突起がある。
葉柄はほとんどないものから、10cm以上になるものまである。
葉身も多型で、ソーラスの付かないほぼ三角形のものから、披針形の胞子葉まで様々で、長さ10〜20cm、幅1.5〜5cm、
無毛で平滑、基部両側に耳状突起が出ることがあり、全縁または波状縁、先端に向けてしだいに狭くなり、鋭尖頭。
中肋は両面とも隆起し、主側脈は見えず、葉脈は複雑な網状。
ソーラスは狭い葉について下面全体に散在し、円形〜やや長楕円形、径2mm前後、若い時は楯状の小鱗片に覆われる。

メモ : ヤノネシダはNeocheiropteris(クリハラン属)に含まれていたが、最近のDNA分析によってLeptochilus(ヤノネシダ属)に入れられた。
     暖地性のシダだが、水分条件によるものか、兵庫県では内陸部に多く見られるシダである。
クリハランNeocheiropteris ensata)は葉が大きく20cm以上、主側脈は明瞭。ソーラスは大きく3〜5mm。
ヌカボシクリハランN. buergerianum)は葉身基部が広いくさび形で、中肋は下面に隆起する。
近縁種 : クリハラン、 ヌカボシクリハラン

■分布:本州(関東地方南部以西)、四国、九州 ・ 中国
■生育環境:山麓の林床、岩上、樹幹など。

Fig.2 全草標本。(兵庫県丹波市・古い石垣 2013.1/21)
  根茎は横走する。葉の形は様々で変異に富む。

Fig.3 根茎。(兵庫県丹波市・古い石垣 2013.1/21)
  根茎は褐色から暗褐色の鱗片でやや密に覆われる。

Fig.4 葉身。(兵庫県丹波市・古い石垣 2013.1/21)
  無毛で平滑、基部両側に耳状突起が出ることがあり、全縁または波状縁、先端に向けてしだいに狭くなり、鋭尖頭。
  中肋は両面ともに隆起し、表面には主側脈が見えず、ソーラスのある場所に小さな黄白点ができている。

Fig.5 裏面。(兵庫県丹波市・古い石垣 2013.1/21)
  ソーラスは狭い葉について下面全体に散在する。

Fig.6 ソーラス。(兵庫県丹波市・古い石垣 2013.1/21)
  ソーラスはほぼ円形、包膜はない。楯状の小鱗片はわずかに残っている。

Fig.7 根茎を伸ばすヤノネシダ。(兵庫県丹波市・林床 2013.1/24)
  林床から大木の根へと這い上がり、生育領域を広げようとしていた。

Fig.8 シカの食害により矮小化した集団。(兵庫県丹波市・渓流畔の林床 2014.1/28)

生育環境と生態
Fig.9 苔むした古い石垣に生育するヤノネシダ。(兵庫県丹波市・古い石垣 2013.1/21)
空中湿度の高い渓流沿いのヒメシノブゴケやフトリュウビゴケに覆われた古い石垣に着生している。

Fig.10 斜面に群生するヤノネシダ。(兵庫県丹波市・社寺境内 2013.2/12)
斜面はフトリュウビゴケ、トヤマシノブゴケ、タマゴケなどの蘚類によってびっしりと覆われており、その下をヤノネシダの根茎が這っている。
斜面上には薄い表土しかないようで、アセビやヒサカキ、イヌツゲの幼木が点在する程度で、ミヤマフユイチゴ、ヒガンバナ、ショウジョウバカマ、
ツルリンドウ、シシガシラ、生育の悪いベニシダなどがまばらに生え、ヤノネシダが優占種となっている状況である。


最終更新日:5th.Aug.2014

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